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創作について5

「おわったんじゃないんかーい」

という声が聞こえてきそうだ(少なくとも自分でツッコミを入れてる)。前回の記事で、(おわり)って書いたからね。すいません。

ただ「創作って、締め切りと開き直りが大切」という文章(われながら秀逸な要約)を書いてきたこの文脈の流れで、どうしても紹介しておきたい人がいたので、今回はそれだけさせてください。(あと、全4回という数字がすこし収まり悪く感じていたというのは秘密)

坂口恭平さんという人。

ご存知でしょうか。いつかしっかりこの方についての文章を書きたいと思っているので、この場で彼という人物を詳しく書くことはしない。

ここで坂口さんを紹介するのは、彼は僕が知る中でダントツの、自ら「締め切り」を設けひたすらに創作を続ける人だと思うからだ。

彼はいま、出版されるあてのない著書のために毎日8,000字(原稿用紙20枚分)の文章を書き、家族に朝ごはんをつくり(最近料理本を出した)、散歩をし、絵を4枚描き、セーターを編み...という生活を送っている。毎日。それに加えて、音楽もつくって歌うし(最近22曲入りのアルバムをリリースした)、近々ガラス細工も始めることになり、彫金も始めることになり、近々カゴを作ってみたいと言っている。とにもかくにも、創作の人である。

坂口さんは、それら黙々と淡々と進める創作活動について、「日課」あるいは「ルーティン」という言葉を使う。「締め切り」よりも柔らかい感じがする。

これまで僕が書いてきた「創作について」シリーズの冒頭、「認められるためにつくるのか、ただつくりたいからつくるのか」という問いかけがあった。坂口さんの場合は、圧倒的に後者なんだと思う。ただ、彼の綴る言葉は「ヘタの壁を越えられない大人たち」にハッとする気づきを与えてくれたり、ポンと背中を押してくれたりする力を持っている。少なくとも僕は、音楽活動をしていた頃から彼の言葉に何度も励まされてきた。

“ただひたすら作る。理解されなくても売れなくてもただただ作る作る作り続ける。誰かに届けようと必死になるよりも、作る作品の量を増やす。24時間365日作るだけ考える。逃げずに悩む。人が右を見たらまずは左を即座に向く。デビューしても続けないと意味がない。作り続ける下半身を丹田を鍛える。”

これは坂口さんによる約2年前のtweet。今でも彼のtwitterには、こんな言葉たちがトントンと投下されてゆく。ものすごい勢いで。

また彼は最近、「ルーティン学校」というおもしろい試みを始めた。応募のあった先着30名の人たちの「日課」を坂口さんが決めて、毎月成果を見せてもらうというもの。以下は申し込み時のWebサイトに載った紹介文。

“あなたにあった日課を見つけます。そしてそれを毎日やってもらって1ヶ月ごとに成果を見せてもらいます。3ヶ月さぼったら大学ですが、そうじゃなかったら1年間、つきあいます!独立して何かやっていきたいひと、鬱になって困ってるひと、日課があなたを救いますよ!” (注: 原文ママ、おそらく「大学」→「退学」)

とても興味深かったのが、この30名の定員に漏れた人達から「ルーティン学校に入ったつもりで日課やってみよう」というつぶやきが多くあったこと。やっぱり少なくない人が何かをしたくて、そのために締め切りをつくり、誰かに発信することが大切と感じているんだなぁと、勝手に親密な気持ちが湧きました。

“日課を続ける際に、褒めてくれる人がいるとモチベーションアップ半端ないので、その褒める人に僕がなる、というのがルーティン学校なわけです。” 

これも坂口さんのtweetより。...うーん、この仕組みはとてもいいのでは?「認められる」ということから距離をおいて創り始めることが出来たとしても、やっぱり褒めてもらえると飛び上がるくらい嬉しいですもんね。自分はそう。

このルーティン学校、ひとまず3ヶ月間、最初の30名で様子を見て、いけそうなら追加の募集もあるとのこと。もし何かのきっかけになるかもしれないと思う方がいれば、また次回以降の申し込みを検討するのもおもしろいかもしれません。そうでなくても、創作に興味のある方が坂口さんのtwitterを眺めるのはきっとおもしろいはず。

最後にもう一度、坂口恭平さんのtweetを引用し、「創作について」の文章を終わりにしたいと思います。

“【日課作りのコツ】調子が悪くても続けられる日課を作る。それが一番なので、調子がいいときにだけできるものではなく、調子が悪くなった時のことも考慮するといいですよ。僕みたいに調子が悪くても一日20枚書くというハードコースもいいけど、まずはライトな日課からはじめよう。”

明日からまた何書こうかな。

(おわり)

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