マイスリー。
マイスリー。
わたしが初めてもらった睡眠薬。
厳密には、睡眠導入剤。
もらったと書いたが、きちんと病院で処方されたものだ。
初めて飲んだときのことを、今も忘れることができない。
「あぁ、わたしもうダメかも。」
シンプルにそう思った。
睡眠薬を飲まないと眠れないなんて、もうダメかもしれない って。
何がダメなのかは、よくわからない。
ただ、なんとなく、自分が欠陥品になってしまった気がしたのだ。
悩みに押しつぶされそうで、考えごとが止まらなくて、眠れない。
そんな日が続く度に、心と体が悲鳴をあげていく。
眠たいはずなのに、眠れない。
人間眠れない日が続くと、下り坂を転がり落ちるようにネガティブな思考に傾いていくらしい。
無論、わたしとて例外ではなかった。
元来取り柄であるはずのポジティブさを、1ミリも発揮できなかった。
たまたま別件で訪れた内科で何気なしに相談したら、あっさりと睡眠薬を処方された。
ドラマや映画でしか観たことがなかった、睡眠薬。
いとも簡単に手に入ることに、拍子抜けしてしまった。
しかし、
"睡眠薬 = こわい薬"
漠然とそう思っていたわたしは、処方されてもなかなか飲む気になれなかった。
その間も、眠れぬ夜が過ぎていく。
ある夜、とうとう決意を固め、薬とにらめっこすること1分。
コップに入った水とともに、一思いに飲み干した。
その後、すぐにベッドで横になり、目を瞑る。
目が覚めた時には、朝だった。
これといった副作用もなく、ただただぐっすりと眠れた。
それまで、目を瞑っても、待てど暮らせど眠れなかったのが、まるで嘘であったかのように。
それ以降、しばらく寝る前に服薬する日々が続いたが、何もこわいことなんてなかった。
驚くほどによく眠れるようになった。
ただ、それだけ。
今はもう、薬は飲んでいない。
飲まなくても眠れるようになったから。
睡眠薬を過剰にこわがっていたあの頃のわたしに、こう言ってあげたい。
「早く楽になりなよ!」
ってね。
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