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東京から瀬戸内海の島へ。移住して1週間で起きた5つのコト。

引っ越し当日は、大雨だった。

しかも夕方着だったから、辺りは真っ暗。移住という引っ越しだから高揚感はあったけれど、スタートは100歩譲っても気持ちのいいものではなかった。

翌朝、移住後1日目とでも言うべきか。眩しい日差しと鳥のさえずりという、ベタベタに長閑な空気感のなかで、僕らは目覚めることになる。

それから1週間、驚くほどに濃密な時間を過ごした。

そしてそれが、おそらく今後の島ライフを形づくるものなんだろうと確信を持っている。いろいろありすぎて、写真に残していないことも多いが簡単にまとめていきたいと思う。


1.移住1日目、近所の兄貴分宅でご近所飲みに誘われる

僕らが目を覚まし、身支度をして真っ先に行ったことは「ご近所への挨拶まわり」だ。これまで東京の都心部で生活していた僕は過去に3度ほど都内で引っ越しをしたが、挨拶まわりをしようなんて一度も考えなかった。

ただ今回は今までとはわけが違う。

僕らが移住した広島県尾道市にある向島は、文字通り瀬戸内海に浮かぶ島だ。その向島のなかの立花というエリアに僕らは住んでいるわけだけど、「田舎暮らしはご近所付き合いが重要だ!」という先入観が、僕らを挨拶まわりへと動かした。そして何より、念願の島ライフだ。大事に大事にしていきたいのだから、できればご近所さんとも仲良くなりたかった。

そして挨拶まわり。最初の1軒目ですべてが決まった。

古民家ながら開放的な佇まいの家が、自宅から見てすぐ斜めの方向にある。その雰囲気ゆえに挨拶まわりがしやすいと思い、開きっぱなしのドアから声をかけた。

ウォーターアクティビティのツアーガイドをするその方は、ちょうど昼寝中だった。それでも何ら機嫌を損ねることなく、すぐにこう言った。

「よく来たね〜立花は移住者も多いから過ごしやすいと思うよ。そうだ、今日ちょうど仲のいい近所の友達たちとウチで飲むから遊びに来なよ。18時〜19時くらいからゆるゆるやってるから、いいタイミングでさ」

そして19時。相変わらずオープンなお兄さん宅にあがると、2軒目・3軒目と挨拶まわりをした際、インターホンを押しても反応がなかった方もその場にいた。


海岸沿いに住むご夫婦、別の地区に住んでいる大工さん、3分くらい歩いたところに住む女の子、そしてツアーガイドのお兄さん。

みんな個性的でとにかく人がよかった。それぞれ手に職を持っているタイプで、この立花で何かやろうとしたら、みんなの力を合わせればできないことはないのかもしれない。僕らは立花のなかでは比較的若い世代になるようで、なおさら歓迎された。もっとこの地を盛り上げたいという気持ちはみんな一緒だった。

こうして一気に近所の方と仲良くなることができた。ラッキーだと思うし、運ではなくこれがこの立花というエリアを象徴する出来事なんだとも思う。オープンでフラットで、小さなことは気にしないようだ。


2.移住1日目、一人旅をしていた女子を案内する

同日の昼間、instagramで向島に移住したというストーリーズをアップしたら、新潟の友人からこんなDMが届いた。

なんというタイミングだろう。しかも友人が来てるならまだしもその友達ということで、もちろん自分は会ったこともない。けれども自分が大好きなこの地をもっと多くの人に体感してほしいから、迷いなく車を走らせた。

この日は素晴らしい天気で、夕暮れ前の気持ちのいいタイミングにその子はやってきた。目の前の海辺で軽くチルアウトをした後、オススメの店などを案内してから、尾道本土の名所まで送り届けた。気になってた場所は全て回れたようで喜んでくれたようだ。

これからも尾道や向島に興味のある方は積極的にご案内して、もっとこの地の魅力を伝えられたらと思う。


3.移住3日目、猫を飼う

奥さんが朝ランニングがてら海辺を走っていると、猫をあやしているおばさまに会ったらしい。仕事や趣味の関係で家を空けがちな僕なので、移住してまだまだ慣れてない地で一人は寂しいと以前から猫を飼いたいと奥さんは話していた。そんなことをおばさまに話すと、「ちょうどうちに訪ねてきた猫ちゃんいるから引き取ってよ!」となったようで、僕が家に帰ると子猫がいた。

僕らは10月23日にこの地へ引っ越してきたのだけれど、この猫も同じ日にそのおばさまのもとに来たらしい。これはご縁だということで、名前はその日付にちなんで「トニーさん(10・2・3)」にした。

移住して間もなくして、ひょんなきっかけで家族が増えた。

4.トニーさん、家から逃げる

僕らはそれぞれ実家で犬は飼っていたのだけれど、猫を飼うのは初めてだった。よくわからないまま猫情報を調べながら飼っていたのだけれど、家の窓から外を見つめながらトニーさんが鳴くもんだから「外の空気でも吸いたいのかな」と思い、抱えて外に出てみた。

すると急に暴れ出し、爪も伸びた状態で立ててきたので痛くて手を放してしまった。そこからは一瞬で、ヒューンっと山の方へと逃げてしまった。

不覚だった。

その後もご飯を食べに家には戻ってくるのだけれど、捕まえようとする全力で逃げるので今も外飼い状態だ。できれば家で飼いたいのだけれど・・・今のところいい策は見つかっていない。

5.ご近所さん宅で昼食に招かれる

挨拶まわりを機に、最も親しくなったのがご近所のフランス人と日本人のご夫婦。家庭菜園をされているご夫婦で、駐車場から自宅までの途中にお家があることもあり、庭で見かけては挨拶を交わしている。

そしてさすがフランス人の旦那さんだ。ご夫婦で外でご飯を食べるのが好きなようで、晴れた気持ちのいい日には庭先のスペースでランチをしている。ちょうどこの日も僕らが駐車場から歩いていると庭でランチをしていた。

「こんにちは!めちゃくちゃ気持ち良さそうですね」

いつも通りに挨拶をするとハッと思いついたのか、こう誘ってくれた。

「明日、庭で採れたバジルでジェノベーゼのパスタ作るんだけど、一緒にどう?」

実は数日前も、自宅の庭を綺麗にしていた時に奥さんから声をかけてくれ、植物について色々教わったのだがその最後にランチに誘ってくれていた。その日は僕らは用事があったのであいにくご一緒できなかったのだが、また誘ってくれたというわけだ。

近所にあるパン屋さんのフランスパン。ここのフランスパンは本場に近い味がするそうだ。そしてジェノベーゼのパスタと、旦那さんオリジナルのパンナコッタ。海の見える庭で心地のいいランチを過ごした。これから開こうとしているお店の話、この地域の祭りの話、ハーブや野菜の育て方、たくさんのことを話した。

いただいてばかりでは申し訳ないので、ローズマリーのキャロットケーキと、虫に効くひば油スプレーを差し上げた。ケーキは気に入ってもらえただろうか。

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細かな出来事や、新たに始めたばかりのことなど挙げれば他にもあるのだけれど、僕が移住後1週間で感じたホットトピックスはこの5つ。どれも30年以上東京で暮らしていた時には一度も起きなかったことだ。

思えば僕らがこの立花という地に惚れたのは、去年の9月、単純に旅行していた時にたまたま寄ったのがきっかけだ。

・瀬戸内海を一望できるロケーション

・穏やかな気候

・声をかけてくれた現地の方のあたたかさ

どれもとにかく新鮮で「ここに住みたい」とすぐさま思って移住計画を練った。そして色々な縁が重なって、約一年後のいま、ここに住んでいる。


この3つの惹かれたポイントを、移住後1週間で改めて”日常”として感じることができて、これ以上に嬉しいことはない。

理想の暮らしは思いのほか既に用意されていたし、自分たちでこれからどんどん作り出すことができそうだ。

10年先、20年先、未来の住民のために木を植えます。