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現役通関士が説明する個人輸入のいろは~新米通関士・咲良のものがたり~

プロローグ

~新人通関士・佐木咲良~

光の差し込むオフィスの片隅で、佐木咲良(さき さくら)は深く息をついた。彼女はグローバルリンク・エクスプレスに入社してから一年が経過し、通関士としての日々は、挑戦と成長の連続だった。輸入申告書を丁寧に整理しながら、咲良はその日の仕事に一区切りをつけた。忙しいながらも、学びと成果が詰まった毎日に、心からの充実感を感じていた。

しかし、今日は一味違った。金貨の輸入を巡る、一件の問題が彼女を大いに悩ませた。申告方法の誤りから生じた誤解は、お客様と税関の板挟みになり、解決までの道のりは険しかった。咲良は目を閉じて今日を振り返りながら、同時に入社初期の苦労の連続も思い出していた。

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入社して間もない頃のこと、私は毎日、輸入者からの問い合わせに対して、うまく答えることができなかった。電話口での焦りと、同僚や先輩へのSOSが日常だった。特に忘れられないのは、輸入者である里中という男性とのやり取りだ。

あの日も、いつものように緊張しながら税関からの問い合わせを受け、海外から配送された荷物に添付してある連絡先の輸入者と思われる男性に電話を掛けた。男性は里中と名乗り、私はすぐに、税関からの質問内容を伝えようとした。すると里中は激高し

「お前だれ? 輸入? 俺、通販で買っただけなんだけど? 通関? 何のこと? 詐欺かなにかか?」

と矢継ぎ早にまくし立ててきた。初めてお客様に叱責され、私は言葉が出ず状況をうまく説明できなかった。その時は結局自分では何もできず、隣の香先輩に助けてもらったんだけど・・同時に、海外通販を利用していることを知らずに商品を購入している人がいるという現実に、私は大きな驚きを感じた。

後日、私はその経験を東野達也先輩に相談した。まだ心がざわついていた私は、達也先輩に尋ねた。

「達也先輩、こういうのって多いんですか? 自分で買ったのに海外から商品が来るって知らない人…」

達也先輩はいつも通り落ち着いていて、

「そうだね、騙されているわけじゃないけど、海外からの発送を目立たないようにしているサイトもあるんだよ。何も知らない輸入者は、いきなり連絡が来るから、びっくりするよね。」

と答えてくれた。
達也先輩は続けて、注意点を教えてくれた。

「注意点としては、最近は日本語で買う通販サイトでも発送国が海外になっている事があるのでそこにまず注意だね。海外から商品が届くのはまあ、いいんだけど個人輸入になると簡単なようで、一気に色んなハードルが上がって、時には大変なトラブルにも巻きこまれるからね。咲良も色んな知識が身についたら自分でも色んな商品を個人輸入してみるといいよ。」

その言葉を胸に、私は仕事に対する理解を深めていった。入社初日から今日まで、多くを学び、経験してきた。そして、自信を持って達也先輩に伝えた。

「先輩、久しぶりに私が覚えた知識、聞いてもらってもいいですか? 成長をみてくださいよ。」

つづく



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