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「かもしれない」は希望を意味している

Maybe(たぶん、かもしれない )という表現を、どう感じるだろうか。

確実さを好む人と、不確実を好む人がいる。私は、不確実性が好きだ。リスクのあることが好きだ。なぜなら、「かもしれない」ことこそが、創造的で、挑戦的で、わくわくするから。


"Getting to Maybe(「かもしれない」をめざして)" という原題の、大好きな本がある。社会変革の起こし方という切り口で、社会起業家のインタビューに「複雑系」の考え方を絡めた内容だ。邦題よりも原題の方が、シャープでかっこいいし、内容を示していると思う。

黒+黄緑の帯に綿毛を合わせた表紙もかっこいいし、扉の詩も素敵だし、章タイトルもよい。各章のタイトルが、あらすじになっている。

1. 暮れ初めの灯り (The First Light of Evening)
2. 「かもしれない」をめざして (Getting to Maybe)
3. 静思の時 (Stand Still)
4. 強力な他者 (The Powerful Strangers)
5. 世界があなたを見つける (Let It Find You)
6. 冷たい天国 (Cold Heaven)
7. 歴史と希望が韻を踏む時 (When Hope and History Rhyme)
8. ドアは開く(The Door Opens)

ちょっと概念的で難しい本ではあるので、改めてじっくり精読したい。ライブエイド、グラミン銀行、ルーツオブエンパシーなど、著名な運動含む多数のケーススタディを通じて、社会の「複雑さ」との向き合い方、問いのありよう、相互関係の力を変化のために利用する方法などが解き明かされる。


お気に入りの一節がある。

確実性を求めるのではなく、探求すること。逆説を受け入れ、複数の視点を許容すること。

これは好き嫌いではなくマインドセット。実際、こう考えなければ、世の中うまくいかないことばかりだ。たくさんのことが、不確実で、複雑で、可能性に満ちているのだから。


私の本業であるプロジェクトマネジメントは、不確実なことに向き合う仕事である。

プロジェクトという言葉の定義=有期性(終わりがある)と独自性(ひとつひとつがユニーク)からして、複雑さは避けられない。そして大概のプロジェクトに、いろんな障害があって、たくさんの人の思惑があって、うまくいったり、いかなかったりする。

あたらしい挑戦にはリスクがある。だから、その不確実性と上手に向き合い、コントロールできるものはコントロールする、PMの方法論があるわけだ。

変えられるものと変えられないものを区別すること。変えられるものを適切に変えていくこと。仲間が変えやすいように自分が動くこと。変えられないものは、受容したり、回避したりしながら、とにかく「行動できること」を積み重ねていく。


この、少し古い本を引っ張り出してきたのは、ちょっとまえのMicaさんのnoteを読んだのがきっかけ。「かもしれない」は、ただのエゴなんかじゃなくて、変化の出発点であり、希望になり得ると思った。それはたったひとりとのかかわり合いのなかでもそう。過ぎたことは変えられないけど、つぎの「かもしれない」に向き合う姿勢は変えられる。

痛みに寄り添うことはできなくても、孤独を癒すことなら少しはできるかもしれない。なんて、ただのエゴかな。


「かもしれない」は、希望を意味している。

ならば、日常のちいさな「かもしれない」にも、ひとつひとつ、真摯に向き合っていきたいと思う。

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