見出し画像

クライアントの圧倒的なファンになることで、言葉が生まれる

筆力はんぱない制作者であるところのベイジ枌谷さんが最近制作された、四川料理屋の飄香(ピャオシャン)のWebサイトを少し見渡して紹介してみたい。tweetに『お店が好き過ぎて、4万字もコンテンツを書き起こしてしまいました。』とあるが、雑誌1冊読むぐらいの文字量と写真があって心底びっくりする。

「飄香の魅力」コンテンツは9ページあるけれど、1本1本がnoteの有料記事かなっていうくらいのボリュームと編集。井桁シェフのプロフィールは5600字あって、小学生時代から修行の過程を緻密に解きほぐしている。

香辛料は1つ1つに写真と解説を載せ、食材は「肉・野菜・魚介類・乾物」の4つの見出しに対して解説が来る(この粒度の見出しで一つ一つ魅力を語るのはすごく大変な編集だと思う)。

器の解説も一つ一つ歴史から紐解いており、途中で「このように飄香では」という「中間まとめ」が効くくらい情報量が多い。レイアウトは【見出し2種+本文+画像1枚か2枚】

店舗ひとつずつのコンセプト紹介も手厚い。コンセプトページは写真が大きめで、文章は濃縮している感じ。

長い文章だけではなく、各ページへ誘導するリード文も綺麗に揃っている。

***

こうしたテキストを「誰が書くか」というのは、制作者にとって非常に切実な問題で、受託制作では『クライアント支給』と割り切ってしまうことも多いし、予算があれば専門職のコピーライターが立つこともあるだろう。実際、ディレクター/プランナー自身に書く力がなければそもそも言葉を生み出すことができないので、筆力を磨くことはめちゃくちゃ大事だし有益だ。

その上で、『好きすぎて書き起こしてしまう』ほどの熱意のある関係性とエネルギーがあってこそ、力のある言葉を生み出せる。仕事として携わる前から好きだったブランドやお店を手がけることもあるだろうが、そうでなければまず圧倒的に好きになる時間を取って、自分自身が圧倒的なファンになればいい。これは立ち位置に関係なく、リーダーはもちろん、末端の一スタッフであろうと、意味のある関わり方だ。

自分もこれまで、良い仕事ができたプロジェクトは例外なくクライアントの「圧倒的ファン」になってきたと思う。大学ならキャンパス内で長い時間を過ごし、教員や学生と話す。BtoCの企業なら店舗に行って一顧客としてお金を払いサービスを受ける。「人と会い、話す」ことは特に重要なプロセスだ。たまにすごくドライな担当者と組むこともあるけれど、ときにクライアントの担当者以上にクライアントを知り、語れるようになることを目指す。

そうして見えてくる「ここは絶対に誇れる」ポイントを素直に言葉にしていったら、同じようにファンになり得る未来の顧客(ターゲット)にはきっと届くと思う。逆に、最後まで「信じ切れない」プロジェクトでは、どうしても言葉が上滑りしてしまう。「自分ごと」になればこそ、語るべき言葉を自ら選び、構造化できる。


プロジェクトが始まるときは、まず「圧倒的なファンになる」ための時間を取り、行動しよう。そして言葉を生み出そう。

🍻