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【ラブデスター】愚かモブ列伝

今、ネットの一部で注目を集めている漫画『ラブデスター』。
ベンゼン眼鏡ペラペラ之助」「無から生える妹」「ノーベル賞をとる新選組」などのパワーワードじみたネタバレで注目を集めた作品である。詳しい内容については読んでもらったほうが早いのでぜひジャンププラスから読んでもらいたい。名作であることは保証しよう。

この漫画の主人公は若殿ミクニらを中心とする月代生徒会メンバーなわけだが、彼らと並んで無視できないのが俗に愚かモブと呼ばれる一般生徒たち。
いきなり月に送られ、命がけの恋愛をさせられる中学生という立場から「こうなっても仕方ない」という気持ちと「そこまではならんだろ」という気持ちが読者の中でせめぎ合う、どうしようもなく愚かな言動と行動を繰り返す名脇役‥‥いや、事実上の主役と言っても過言ではない。
極限状況において本当に恐ろしいのは個ではなく群というのはよく聞く話であるが、それにしたって状況を悪い方向にしか持っていかないその愚かさは舞台装置としても完璧である。
挙げ句作者は「モブの中に紛れていた」という名目で今まで影も形も無かった濃い新キャラクターを唐突に出現させるという荒業を駆使し、物語の新鮮味を保ち続ける。最初の数話で生存者リストを公開してしまう凡百のデスゲームでは絶対にできない悪魔的発想と言うしかない。

唐突に湧く濃い新キャラの一例。前話まで影も形もないのが特徴。

ここではそんな影の主役、誰もがいつの間にか「愚か」の冠をつけて呼ばざるを得ない愚かモブたちを1話から振り返ってみたいと思う。
当然のことながら本編のネタバレを含むので注意していただきたい。

試験開始編

開幕から試験官ファウストさじ加減11人爆死するという過酷なスタートを切った月代生。焦った彼らの中からまず現れたのはレミングス女子だった。

レミングス女子。それは皇城ジウを愛し告白成立を目論む女子の総称。
しかし所詮は愚かモブでしかない彼女らはジウの都合を一切無視して一方的な告白に走ってはジウにトラウマを負わせる自動追尾式爆弾である。
全編を通して現れる彼女らにジウの精神はどんどん傷つけられていくことになる。
一方的な片思いでは成立しないというルールを忘れたのか」「なんでまず気持ちを確かめてから実際の告白に移れないのか」「どういう勝算があったら自分に惚れていると思えるのか」などというツッコミは無駄である。この漫画はラブデスターで彼女らは愚かなのだ。

そして5話から現れるのが、楢咲りょうこ坂本タツマをいじめるいじめっこ集団。

いや、お前らやっていることただの殺人だからな?告白失敗したら死ぬんだぞ?

もしこの行為の結果死人が出たとしたら、それを煽った彼女らは悪評が広まって生還が絶望的になるのだが、彼女らはそんなことは一切考えない!
なぜなら愚かだからだ。この漫画の愚か者全般に共通することだが、自分が周囲に好かれていなければ生還は不可能という前提を理解していない。

しかし結果は成立。彼女らは結局煽るだけ煽って恥をかいて終わってしまった。その後の彼女らの行方は描写されていないが、展開的に死亡したようだ。因果応報である。

残り人数121人。

肝試し編

ファウストがラブイベントと称して変なイベントを開催。姫夜カオル姐切ななせ神居クロオといった新たなメインキャラが登場し、物語が本格的に動き出す肝試し編愚かモブたちもさっそく愚かっぷりを発揮していく。

厳密にはモブではないが肝試し編に登場した愚か者として、まず自称エリートの砂川くん

後の敬王モブを彷彿とさせるエリート意識の塊だったが、想い人が目の前でレミングス女子と化して爆死し、そのまま時間切れまで取り残されるという悲惨な目にあう。彼の死に際だけで掌編が書けそうな境遇だが、モテなかった理由のすべてが本編中に出てしまっているので残念だが当然という感じ。

だが、そんな彼の存在が霞むほどの男が存在する。そう、言わずと知れたあの男である。

太った男子(公式名称)である。強制的にペアを組まされただけなのに勘違いして告白を迫る愚かっぷりや、その衝撃的すぎた死に様からこの漫画を語る上で欠かせないキャラである。名前が無いのもモブらしさがあって良い。
逆に笹原が「太った男子と組んだ女子」と名前で呼ばれない有様である。

結局はクロオの暗躍のせいで計22人が死亡する結末になったわけだが

ここぞとばかりに生徒会を攻め立てる愚かモブ。散々人任せにした挙げ句、自分は助けてもらったのにこの態度である。愚かここに極まれり。傷心のミクニとは裏腹に、こいつらはいずれ死ぬので読者はニッコリである。

残り99人。

BMP編

肝試し編が終わり、愚かモブが本格的に活動し始めるのがこの通称BMP編だろう。運命の相手を示してくれるフィーリング測定器を手に入れたBMPこと猛田の巧みな煽動によって、生徒たちはどんどん生徒会に反感を持ち始める。

そしてついに猛田は暴動を起こして生徒会を乗っ取ることに成功する。

もはや目がやばい。極限状況で加熱した愚かモブの頭脳は既にオーバーヒート。猛田の「生徒会を捕まえたものを優先して測定する」という言葉に踊らされまくる。

いやゾンビ映画かよ。とんだ死霊の盆踊りである。もはや彼らには自我が残っているのかも怪しい。ミクニが猛田に言った「測定器に取り憑かれている」という言葉は彼らにも当てはまっている。

挙句の果てにちょっと暗い場所にいるだけでターゲットを誤認する有様である。BMP編のラブデスターはいかに愚かモブを操れるかが焦点となっていて、愚かモブファンにとっては欠かせないエピソードと言える。

最終的には猛田の思惑が露見したことと、占堂らみ自殺騒ぎによって彼らは目を覚ますことになる。

流石にいささか都合のいい連中ではあるが、ミクニは彼らを快く許して生徒会は元の鞘に収まった。これで丸く収まれば‥‥いいなあ。

残り95人。

バレンタイン編

女子が男子にチョコを送り、渡せないか受け取れなかったものは死亡するというルールで開催された第2のラブイベント、バレンタイン。女子の人数が少ないので絶対に爆死者が出るという過酷な前提で始まったが、意外なことに愚かモブたちは今回おとなしい。

理由としては、愚かモブ同士が比較的すんなりとチョコの贈呈を済ませてくれたことと、メインキャラのチョコ贈呈が話の焦点となっていることだろう。

まあ、愚かさを見せないというわけではないのだが。
そしてイベント限定ユニークモブも出現。

世はまさに大肉食時代!ラブデスター怪人ビッチ三連星に飼いならされたたち。「チョコがほしければ命令に従え」という過酷なルートをうっかり歩んでしまった悲惨な彼らは雪が降る中パンイチで頑張り続けるハメに。

いや、頑張りすぎだろ。念の為言っておくと外はマイナス30度である。
一応彼らは魅了剤(チャーム)というアイテムの影響下でビッチ三連星にメロメロになっているが故にどんな命令にでも従ってしまうのだが、もっとやばい薬物が混ざっているとしか思えない。メインキャラがさっき凍傷で死にかけてたのでなおさらである。

その後、彼らはクロオに煽動される形で殺人と告白に手を染めてしまい全滅。薬で操られていたことを考えると今までより同情度は高かった。生還していればその頑丈さで日本に金メダルを齎しただろうに。

なお、ボランティア部は愚かモブとは別のなにかなのでここでは取り扱わない。

残り79人。

敬王見合い編

突如としてもう一つ存在した実験校にメインメンバーが飛ばされるという異常事態から始まる見合い編。ここから新たに登場するのが敬王モブたちである。彼らは総じて高いプライドとエリート意識を併せ持ち、月代生をバカにするためミクニらに従いづらく、女子はとりあえずスペックの高いジウを狙ってレミングス女子化する面倒な存在である。

しかし見合い編では月代メインメンバー 対 敬王余り物組というタイマンバトルと試験官レイディ攻略の2つが軸になるため、愚かモブの出番はかなり少ない。愚かモブに対しては無敵と言っていい犬童チハヤによる管理も大きいだろう。

しかし敬王生徒会長綾鷹めいかへの信用が揺らぐとすぐに愚かさを覗かせる愚かモブたち。上のコマのように比較的まともな意見を言ってくれる善良モブも存在しているのだが

彼らは月代との合流前に光の在庫処分と呼ばれる一斉告白で同時に帰還。善良なモブはここですべて離脱し、後はろ過されなかった愚かモブだけが月代に合流することになる。
こうして他校から大量のモブを補充し、月代に戻ってきたわけだがその頃月代は

同士討ちで壊滅していた。

そうはならんやろ」「なっとるやろがい!」の極地とも言えるまさかの展開。先生、モブの扱いがダイナミックすぎる。こうして大量にいた月代モブは殆どが死に絶え、絞りカスのような敬王モブが圧倒的多数派になってしまったのだった。

残り58人(犬童除く)

キスデスター編

期間内に異性と1回でもキスをしないと爆死するというラブイベント、キスデスター。ミクニも言及したとおり、ちゃんと全員が善意を持って立ち回れば死人は出ず済ませられるイベントになっている。が、この漫画はラブデスターなのでそんな簡単に終わるわけがなかった。

発端になったのは今回のラブデスター怪人、通称痰壺アイドル。彼らは事もあろうに「多くの女子とキスできたやつが綾鷹にアタックできる」というまったく必要性の無いゲームを勝手にはじめてしまう。

結果、女子は「相手は言えないがもうキスはしたくない」と主張するものばかりとなり、男子たちは相手が居なくて暴走を始めるという地獄絵図に。なぜこんなことになったか?それがラブデスター怪人の恐ろしいところだとしか言いようがない。

そして痰壺アイドルは死に、残ったのは混沌を極めた状況愚かモブ。アイドル狙いだった女子たちは目標を見失ってレミングス女子にクラスチェンジ。それにしてもこの女子たち自意識と自己評価が高すぎる。

敬王生もゾンビと化すことがあるらしい。以前誰かが評していた言葉だが、ジウとの間に障害物があっても延々直線的に歩き続けていそうである。

一方で相手を失って暴走していく男子たちも徐々に過激さを増していく。女子版ジウとも言える綾鷹を標的に徘徊する男子モブたち。

やはりゾンビなのでは無いだろうか。挙げ句煽動に乗せられ、ミクニを女子独占の主犯だと勘違いして捕まえてしまう。

個人的にこの1ページ、敬王愚かモブのすべてが詰まっていて好きだ。

その後、美円と烏魔の成立によって毒気を抜かれた(原作表記)ことで大人しくなった愚かモブたちだが、クロオの誘導によりレミングス女子と化したモブ女子たちはジウのもとへ。

本当に自意識が高すぎる。その後彼女らは次々とジウにアタックしては爆死。その数13人加減しろ莫迦!
前の数人が爆死した時点で自分も無理だと悟れよ」「そもそもほとんど初対面みたいなものなのに惚れてくれるわけないだろ」というツッコミを置き去りにして彼女らはピリオドの向こうへ旅立っていく。だってラブデスターだから!

死に様総選挙より。愚かは死んでも治らない。

その後、大量の女子が死んだことで彼女らにお情けキスされていた男子が未クリアとなり時間切れで爆死。最後に残ったモブはわずか7人だった。

当然ここまで来て彼らに面白みがないわけは無く、彼らは読者からネームレスセブンと呼ばれて期待されることになるのだが、それは別の話である。

以上がラブデスターにおける愚かモブの軌跡である。最終章に残った7人であるネームレスセブンはモブから一段上の立ち位置なのでまた別の機会に語るとしよう。
真実の愛とは程遠い衝動に突き動かされ、結果として命を散らした愚かモブたち。自分ではなく他者の為に輝けるかどうかが、メインキャラと愚かモブの分かれ目だったのかもしれんな‥‥。(ファウスト風のガバ解説締め)

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