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【EVENT】日本の巨大ロボット群像 巨大ロボットという特異点を紐解く(前編)

 2024年2月10日から同年4月7日まで、神奈川県横須賀市にある横須賀美術館にて「日本の巨大ロボット群像」と題された展示会が開催される。
本年度の4月20日からの香川、7月6日からの京都における同展示企画に先駆けての公開となるこの企画では、日本が展開する巨大ロボットを軸にしたアニメーション作品を中心に取り上げていく。
本記事では2月9日に開催された同イベントの内覧会で観覧した様子を記載していく事にする。


閑静な美術館の静かな盛り上がりとスターの登場

 横須賀美術館は横須賀中央駅からバスで30分程、最寄りの駅である馬堀海岸駅からもバスで15分程は掛かる観音岬に佇んでいる。
美術館の目の前には雄大な横須賀港が広がっており、エントランスはもとより併設されているレストランでは横須賀港を眺めながら食事を楽しむ来場者も見られる程だ。
閑静な環境にありながら、2月9日の当日は業界の関係者が続々と会場に押し寄せていた。


 当日は関係者の挨拶として、宮武一貴氏が登壇。
同氏は日本におけるメカニックデザイナーにおいて草創期を開拓していった立場であり、1972年に公開されたアニメーション作品「マジンガーZ」の内部図解を手掛ける等「巨大ロボットにおける内部のリアリティ」を確立する先駆者であった。
同氏は「飽きやすい人間でありながら、ここまで変わらず続ける事が出来た。スタジオぬえの今後のご活躍にご期待下さい!」とロボット物の企画に対し非常に前向きな内容を述べた。

鏑矢たる「宇宙の戦士」とリアルなウォーカーマシン

 会場に入って最初に目に飛び込んでくるのは、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインの手による「宇宙の戦士」に登場するアイテム「パワードスーツ」の巨大なイメージイラストと実物大のパネルである。
同作品は1977年にハヤカワ文庫版の、宮武一貴氏が描いた装甲服然としたパワードスーツのデザインが日本のSF作品に大きく影響を与えたとされている。
そんな実物大パネルには裏面から登る事が出来、ヘルメットのバイザー部分から実際の目線の高さで外を見る事が出来る。
実際に2m前後というパワードスーツの高さは非常に強いリアリティを感じる事が出来、隣に居たらこれくらいのサイズ感なのかと実感出来る程であった。

 エントランスエリアには1982年のアニメーション作品「戦闘メカ ザブングル」に登場するウォーカーマシンという作業用ロボットを、横から見た実物大パネルが展示されていた。
これもまた実際に身体を近くに寄せてみると、どういった姿勢でレバーを握り、どのようなサイズ感の物が動くのかという実感を得る事が出来た。
今回の展示は、作品の解説だけでなく「実感を伴った展示」にも力を入れている事がよく分かる内容である。


巨大ロボット作品の金字塔である鉄人28号の歩み

 1958年に生まれた漫画作品「鉄人28号」は、1952年の「鉄腕アトム」と同じくロボットを作品の主軸に据えた作品だ。
それでいて作品の主役となる鉄人28号は、主人公がリモートコントロールで操縦し、操縦者次第で正義にも悪にもなり得てしまうという「意思持たぬロボット」という存在を巡る攻防は当時大きな話題を読んだ。


 本展示会では舞台版の鉄人28号のアイテム、1980年に鉄人28号を特集したアニメーション特集雑誌「アニメージュ」、復刻版の漫画版鉄人28号にホビーである超合金鉄人28号など、マニアであれば垂涎の代物が数多く展示されている。

 そして本展示会では、1960年に公開されたテレビドラマ版を皮切りに、変わり続ける鉄人28号のデザインにも焦点が当てられている。
身長2メートル程のテレビドラマ版における鉄人28号は、次のメディア作品である太陽の使者 鉄人28号ではスマートなスーツ然とした姿となり、その後の鉄人28号FXではヒーロー物のようなマッシヴな体型となり、深夜アニメとなった後の作品では原点回帰したデザインとなっている。
時代と共に移り変わる鉄人28号のデザインをなぞっていけば、その時代時代における「ロボット」に求められる物が見えてくるのかもしれない。

また、同展示室の一角には「機動警察パトレイバー」に登場するメカ「98式AV イングラム」の精巧な雛形模型や、稲城長沼駅前に展示されている「装甲騎兵ボトムズ」に登場する「ATM-09-ST スコープドッグ」の展示映像が放映されるなど、この部屋だけでも非常に内容の密度が濃いものであった。


中編へ続く)
https://note.com/irvisions/n/na408f9a06d29

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