新卒的日常。

2024/04/24

薄明かりに意識が近づく。

ああ今日は月曜日か。そういえばアラームの音を聞かなくなった。

軽くも重くもない身を起こしてシャワーを浴びる。濡れた髪にタオルを巻き付けてシャツに手を通す。パキッとしていたシャツは少しよれていて、ボタンを押し込む指が自然に作用する。鏡に映る自分をみて、視界の端に映るプロテインを眺める。

ひものほどけた革靴を履き、ドアを開ける。階段の音が小気味よくメロディを奏でている。どうやら今日が始まったみたいだ。


「おはようございます!」
元気な挨拶から始まる朝は気持ちがいい。何だってできる気がする。

「おはよう」

「おはよう。今日もよろしくね」

「おはよう。若いねえ」

「おはよう。今日もばりばり頼むよ」

整理されたデスクは今の心情を映しているようだった。
供給過多の情報を頭に入れ、こぼれ落ちそうなノートに蓋をする。たまに見る時計は自分の予想より前を歩いている。

もうこんな時間か。

タッパーに入った白米をサランラップごと抜き出す。5食入りと書かれた「卵ふりかけ」を庭園のようにふりかける。

定刻。「お疲れ様でした!!」

「お疲れ様でした」

「お疲れ〜」

「お疲れ様です」

「おお、お疲れー」

薄暗くなった道を歩く足は弾んでいた。立ち並ぶビル群がビー玉のようで、デジカメのような世界が煌々としている。

時計回りに鍵を回す。闇夜に灯りを灯す。重複した言葉がそのまま日常を表しているようだった。

帰宅に合わせて出迎えてくれた白い粒たちをお皿に乗せる。手際よく冷蔵庫から鶏胸肉を取り出し、冷凍庫からブロッコリーと小松菜を持ち上げる。火をかけ、イヤホンをつけながらスーツを脱ぐ。

当たり前のように夜の中を駆け巡る。狭いバスタブに身を寄せて、Kindleを両手で支える。

役目をまっとうした心と体は安息を求めて気を緩めている。

そしてふと思う。

「これでいいのか」

そう、昨日も思った。

「なにをしているんだ」

言い訳ばかり探していることに気づく。



薄明かりに意識が近付いている…

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