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ミリオンドール74話「大切なお知らせ」ライナーノーツ


2016年5月7日に配信されたミリオンドール74話の解説とライナーノーツです。

ミリオンドール74話「大切なお知らせ」
http://ganma.jp/mdoll(無料で読めます)

74話のストーリーのポイント

CNBT後、りなは戻って来ず、イトリオは残されたゆりのとももなとマネージャーで事務所で話し合いをすることになる。

このところのミリオンドールは鬱展開続きで読んでいて辛いというお声や、ミリオンドールはそういうのじゃないと思ってたのにという声も当然あるのかなというストーリーになりました。
私が連載当初から温めていたこの74話のエピソードは、本来だったらラーフェス編の前に展開する予定でした。
編集部の意向もあり、もう少し幸せなイトリオを長く見せてもいいのではないか、イトリオを愛してくださる読者の皆様の声を鑑みて、ラーフェス編、CNBT編、と本来予定になかった展開で長く描かせていただきました。
結果的にラーフェス編は大変愛されるシリーズになり、こんなにイトリオを愛してくださる皆様がいることに私も感謝しています。

その上で、私が本当に描きたかったイトリオの試練のシーズンです。
マリ子は短いスパンで波乱万丈に浮き沈みするタイプの展開で進めてきましたが、イトリオには大きく緩やかだけど深い波がやってきます。
事務所をやめたり母親ともめたりしたマリ子はリアルで、順調にメジャーの道へ進んでいるイトリオは漫画らしいサクセスストーリーだと見る読者さんもあったかもしれませんが、私にとっては二組ともリアルなアイドルのつもりでした。
実在のアイドルを見ているかのような光と影を、変に虚飾することなく女性の感性で描きたかったのです。

次項からは、いくつかストーリー上の仕掛けについて解説していきます。

SNS COMPLEX編の伏線回収

かずととカナタ、ゆきさんと、ラインの会話でしか会えないりぃさんのエピソードは、ここでこの展開をするための重要なキーワードでした。

SNS COMPLEX編を急にミリオンドールにさし挟んだ時、読者の方からの急になんだ?と困惑された声を懐かしく感じます。
私が今思い出せる範囲で、SNS COMPLEXにまつわる仕込んでいた伏線は以下のとおりだと思います。

・twitterにラインのIDを公開していたカナタ
・IDを書いているとメンバーと繋がれるという噂
・カナタのラインにいるりぃさんの存在
・一話目からスマホの画面をやたら気にするりな
・りなのスマホ2台持ち
・噂を知ったカナタがかずとに預けていたスマホを一旦回収する
・りぃさんとカナタ接触

該当するシーンはどこなのか、遡って探してくださるとより楽しんでいただけるかもしれません。

マネージャーの顔の理由

ミリオンドール上で顔がはっきり描かれなかったキャラはイトリオのマネージャーとすう子姉です。すう子姉はすう子に謝罪をしているシーンだけ顔が描かれ、その後顔に描かれていた文字が「リア充」から「姉」に変わったことはお気づきいただけたでしょうか。今回はイトリオのマネージャーの顔がはっきりと描かれるラストになりましたが、今までなぜ描かなかったのかについて少し触れさせていただきたいと思います。

ミリオンドール上で顔がはっきり描かれなかったキャラはイトリオのマネージャーとすう子姉です。すう子姉はすう子に謝罪をしているシーンだけ顔が描かれ、その後顔に描かれていた文字が「リア充」から「姉」に変わったことはお気づきいただけたでしょうか。
作者としての意識的な仕掛けとしては、主観キャラにとってどうでも良い存在、もしくは理解ができない存在は文字の書かれたはっきりしない顔で描き、主観キャラと心が通じたり、はじめて人間味を感じることができた瞬間にそのキャラの表情が見えるという演出にしておりました。そういった意図を組んだうえで今回も読んでいただけるとまた違った楽しみ方になるかもしれません。
マネージャーのラストのこのシーンも、連載開始時からずっと描きたかったワンシーンでした。福大大濠の設定も楽しんでいただければ幸いです。

作画上のポイント

吐息のブラシ

以前ねこまたぎくらぶさんで配布されていたカケアミブラシをいつか使いたいと思いつつ、このシーンで使わせていただきました。ももなの髪にかかるように白い吐息がかぶっているこのシーンです。

タクシーに乗り込むシーン

今回ディレクションしていく中で、アシスタントさんの描いた素材の位置感覚やパースを合わせられるように指示することの難しさを実感したのですが、このシーンの各素材がぴったりハマったことで大変気持ちよさを感じました。

3D担当スタッフと仕上げ担当スタッフはいつもいい仕事をしてくださるので、私が息をあわせられるようにディレクションしていくことが課題だなあと感じました。

いただいたサポートはすべて原稿製作・設備保守・資材投資・スタッフへの外注費として作品をつくるために使用させて頂きます。