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自由市場体制に干渉すべきか? ゴールド122

第二次世界大戦終結前の1944年、ニューハンプシャー州ブレトンウッズにおいて戦後の新しい国際経済体制の計画が立てられた。

しかし、ブレトンウッズ体制 -外国為替市場における通貨価値の固定- は各国政府が経済政策をとるための大きな足かせとなってしまった。

金を持つのは、政府が信用できないから

政府支出が増大すると国内需要は刺激され、それによって物価が上昇し、輸入が増える。そうなると、人々は一つの通貨を見捨て、経済及び財政を保守的に運営している国の通貨へと向かっていく。あるいは、人々はもっと安全な金へと向かっていく。

1933年、ハーバート・フーヴァーは次期大統領ローズヴェルトに「われわれが金を持つのは、政府が信用できないからだ」という言葉を投げかけたが、それが実現する運命にあった。


ニクソン新大統領

1968年以降、インフレ圧力が勢いを増した。合衆国では失業率が大幅に上昇し、失業手当は1970年に年率7%以上で増大した。労働組合はインフレよりも多くの賃金を求め、経営者は増大する人件費をまかなうために物価を上昇させなければならなかった。

これらのインフレ圧力により、ドル問題と減少する金保有高をめぐる緊張がさらに高まった。そして、1968年の大統領選で勝利したニクソン新大統領は、この窮地から脱する方法を二つしか見いだせなかった。


第一の選択肢

第一の選択肢は、税金と金利を大幅に引き上げることだった。そうすれば、インフレの心配はなくなりドルは救われるかもしれない。しかし、国民は受け入れがたい苦痛を味わうこととなる。

実際、1931年に伝統的なこの方法を取ったイギリスはの国民は苦痛にもがき苦しんだ。


第二の選択肢

もう一つの選択肢は所得政策という管理体制を政府が運営 -自由市場体制への干渉- することだった。

政府が賃金を管理することで、企業の利益を保証し、労働者の購買力を低下させないことができる。この管理体制によりインフレが抑制できれば、経済を収縮させず失業率も押し上げることはない。そして、インフレが収縮すればドルと金保有高の危機も去るかもしれない。

だが、ニクソンはこの選択肢に積極的ではなかった。、彼は第二次世界大戦中に物価管理局で働いた経験から、賃金と物価を政治と経済の両面から管理することの難しさを身をもって知っていたからだ。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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