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05 写ルンです

今日は妹とミュージカルを観に行く。渋谷のハチ公で待ち合わせようと言った兄の僕が遅刻している。ごめん、妹よ。

山手線の一番後ろに乗ると、ハチ公がある出口にすぐ出れる。今日も歩いて一番後ろまで来た。電車を待っていたら、背後を左から右へ駆ける誰かの足音がする。少年だった。手には写ルンですカメラを持っていた。

ホームの端の方へ行ったと思ったら、写ルンですを構えて、反対側に停まっている山手線の頭を撮ろうとしている。隣にはそのお母さんらしき女性も立っている。

若い撮り鉄もいたもんだなあと思っていると、その少年は構えるのをやめて、写ルンですをお母さんに見せた。「ここを押すの?」指しているのはシャッターボタンだ。「そう」とひとことお母さん。

そうか、若い人には、写ルンですのシャッターボタンの場所がわからないのかと思った。僕にとって昔懐かしいものが、少年にとっては使い方がわからぬほどに新しい。

そういえば、僕の住む街に古いフィルムカメラだけを取り扱ったお店が出来た。僕はそれをレトロ趣向の人のためと思っていたけれど、もしかしたら違うのかもしれない。

解像度の高い綺麗な写真が撮れるカメラと同じ並びに、質感のあるあたたかい写真が撮れるカメラがあるのかもしれない。そう考えると、古いとか新しいとかいう考え方がナンセンスに思えてくる。

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