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MuDA家族「究極踊り」伊勢の旅/秋山はるか編

京都を拠点とするシャーマンアートコレクティブ「MuDA」のマネージャー、美術家(主に陶芸)の秋山はるかと言います。クリエイターズワーケーションにはMuDAとして採択されました。パートナーであるMuDA代表のQUICKと、幼子2人を連れて伊勢に11日間滞在。 家族が4人になってから1週間以上自宅を離れるのはこの伊勢の旅が初めて。相方のQUICKがMuDAの日々のダンスアクティビティー「究極踊り」伊勢記について記すので、私はSNSで記した滞在記を基に、主に子供達との伊勢での日常と非日常をここに記します。


1日目

ゆるりと子供達のペースに合わせて京都を出発。途中、踊りの衣装購入のために立ち寄った古着屋で、衣装は買わずに小さな仮面ライダー4人を買うことに。上半身と下半身がバラバラになる人形で、違う体同士組み合わせられた4人のヒーロー達は、様々な身体フォルムで約3時間の車中を彩ってくれた。伊勢に到着した頃にはすっかり暗くなっていた。今回お世話になる宿「おく文旅館」に到着。部屋の襖、障子と子供達の相性が最悪なので、ほぼ全部外す、隠す。近くの定食屋さんで伊勢うどんを食べて、みんなで宿の家族風呂に入ってそのまま就寝。

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2日目

まずは海に行こうということで二見浦近辺へ。「究極踊り」の撮影を行う為、人気のないところを探す。「蘇民の森、松下の社」と言うのがGoogleMapに出てきたのでそこへ。子供たちは車中で昼寝を開始(我が家では「ブーブーねんね」と呼ばれている)。父さんは踊る為に下車し、社の前で準備運動をしていると、丸刈りだからだろうか、神社の関係者に間違えられて、数人に色々と尋ねられていた。私たちが訪れる少し前に「桃符頒布始祭」と言うお祭りがあったようで、お祭りの日から「蘇民将来子孫家門」と書いた桃符=木札を、来年1年のお守りとして配り始めるのだそう(宿に帰ると、入り口にお札が貼られていた)。1年の悪疫退散、厄除開運、家内安全の守護札だ。娘が先に目覚めたので彼女とよちよち社近辺を散策。御神木の大楠を見て二人で「おおっ!」と楠に向かって叫ぶ。しばらくして父さんが帰ってきたので移動。浜辺へ。息子も目覚めてみんなで海を見に。風が強烈すぎたので私も子供達もめちゃくちゃになり、早々に父さんをおいて車に戻る。父さんも強烈な潮風のなか踊り終えて、その日は終了。社の大楠と海風が印象の日だった。

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3日目

起床後間も無く、隠していた部屋の障子を子供たちが破く。部屋の全ての扉を外した(結局翌日も別部屋の障子も破く、保険で直せるとのこと、すいませんでした)。3歳の息子はおむつが取れかけているのだが、1歳の娘はまだまだ。布おむつなので洗濯物が山のように出る。朝からコインランドリーに。途中の商店街に突如現れる謎のロボットに息子が虜になってしまい、徒歩3分のコインランドリーに30分以上掛かって到着。午後からは豊北港西堤防波堤灯台付近へ。渋い工場が並ぶ田園地帯で下車。農道の真ん中にアスファルトを突き抜けて生えている雑草を、ハードル跳びするドヤ顔の息子と道の石や草を口で愛でる娘。父さんは究極踊り。夜はお風呂屋さん、みたすの湯でほっこりして帰る。

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4日目

天の岩戸へ。岩戸に到着した頃、いつもの様に子供達が車に揺られて寝てしまった。父さんは踊りに岩戸の奥に。 私は車で伊勢道を南下。道中のススキ畑に感動。伊雑宮にお詣りし、岩戸に戻る道中、鸚鵡岩にも登る。声が不思議に反響する。頂上からの眺めは最高だった。冬至の太陽が優しく沈む。 夕暮れ前に岩戸の参道入り口に戻る。寝起きで歩きたくない子供達を両脇に抱えて岩戸まで登る。2人合わせて約20キロ。腰に電気が走る。岩戸の中に入ろうとする娘、それを制する息子。もう少し奥まで行きたかったのだけど息子のお腹が痛くなったので断念。降りようとした時に、山の上から「はるちゃーん」と呼ぶ声が。父さんがどうやら踊り終えて私を呼んでいる。息子は父さんにも会いたいけどトイレにも行きたい狭間で揺れている。娘は清流に突っ込んでいく。私がどうしたらいいかと迷っていると他の観光の方が私の代わりに「あいちゃんはここにいますよー!」と見えない父さんに向かって大声を出してくれた。でも私は「はるちゃん」。 父さんと合流し、息子も無事に用を足し天岩戸の回は終了。岩戸神社の木々は荘厳だけど優しく、私も子供たちも、皆を受け入れてくれていたように感じた。

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5日目

毎晩子供達が眠ってから細々とMuDAの絵本編集作業をしている為、朝はスッと起きれず。8時、宿の女将さんに「朝ごはんですよー!」と起こされてドキッとする朝。朝食を食べ、コインランドリーで洗濯。洗濯物ができるまで近辺を車で探索。この日は隠岡遺跡へ。弥生人の竪穴住居跡を見る。息子は忍者のつもりでうろうろ。 午後は父さんの踊りの前にスーパー銭湯みたすの湯へ。1日2回利用。身体を温めてから踊る。今日は二見浦の先にある池の浦近辺にて。父さんはドロドロ。私と子供達は海辺を探してウロウロ。なかなか浜に降りられる所が見つからず、高い丘にばかり登ってしまう。丘に転がっていた地層の塊みたいな石を採取した。 踊りの後、夫婦岩へ。太平洋を眺めながら実家の高知を思う。太平洋はどこまでも続いている。だけれど必ず果てがある。誰かが住んでいる場所がある。島、陸、低い雲が広がる海。風が強くて波がトゲトゲしていた。

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5時を過ぎるとあっという間に夜。忍者大好きな息子に喜んでほしくて、伊勢忍者キングダムの夜間拝観へ。提灯のライトアップ。観光客は私達だけで、千と千尋の神隠し序盤を思い出す。息子は館内の係の女の人に「忍者ですか?」と尋ねて「そうです」と言ってもらえて最高に嬉しそうだった。夕食を食べ再び銭湯、宿に戻る。

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6日目

午前中、洗濯の合間に外宮付近にある「麻福」というお店の朝市に。無農薬、有機野菜が売られていた。息子とみかん詰め放題300円をゲット。その後車で二見にあるヤギファームへ。人が居ない。ヤギと犬とポニーがクイに繋がれている。恐る恐るヤギに近寄る息子だったが、ヤギからウンコがポロポロ落ちてくるのを見て打ち解ける。その後伊勢神宮へ。滞在6日目にしてようやく外宮、内宮とお詣り。外宮の巨大な木々に圧倒される。娘は「あー」と言いながら木を両手で愛でる。息子は外宮の渦を巻く澱みが気に入ったよう。夕方は同じくクリエイターズワーケーションに参加している、友人の音楽家、Ryo Fujimoto君とその知人の方々と交流。夜は餃子屋さんへ。熱々の餃子に突っ込んでいく子供達から目が離せない。

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7日目

冬至。冬至の太陽は神宮の本殿から上がるそう。私は日の出から随分経って起床。朝食後、子供達と鷲ヶ浜海岸へ。貝殻だらけの浜。牡蠣の殻を遠くに放ろうとして指を切ってしまう。人の頭くらいのちょうどいい流木をゲット。木を抱いて浜辺で子守唄を歌う。その後、伊勢志摩スカイラインへ。私はリサーチ+ナビ係。途中曲がり角を間違える。どうしても右を左、左を右と言ってしまう。父さんが踊ってる間に展望台で日が落ちるまで遊ぶ。冬至の太陽さようなら。明日からまた日が少しずつ長くなる。明日は湧水を汲みにいく。

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8日目

今日もゆっくり1日がスタート。午前中、父さんの準備の間公園に。午後から踊りと湧水を汲む為、鷲ヶ峰へ。山道(伊勢南勢線)を行く。父さんは踊りポイントを見つけて途中下車。私と子供達はずんずん奥まで進む。ガードレール無しの細道をくねくね進む。湧水を発見。給水場の地面のぬかるみに娘が足を取られてこける、ドロドロ、泣く。お水は冷たくて柔らかくて美味しい。空気も澄んでいる、美味しい。伊勢の自然は豊かで美しいと、この水が証明している。父さんの踊りが終わって夕食、お風呂を済ませ宿に帰る。子供達が寝静まってから明日の準備と夜の作業。夜中にパフォーマンスで使用予定のレーザー光線のテスト。ワクワク。

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9日目

当初この日帰宅予定だったが、滞在を延長することに。せっかくなので宿を替え、8泊9日お世話になった「おく文旅館」をチェックアウト。毎朝の朝食は1日の活力になった。ありがとう。丁寧に巻かれた出汁巻き卵が甘くて印象的だった。

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チェックアウト後、みたすの湯で身体を温めて、鷲ヶ峰を再訪。父さんは崖下の川辺で踊る。私と子供達は付近のお土産屋さんで買ったオカラドーナツを食べながら川遊び。鯉がたくさん寄ってくる。鯉は長生きすると100年くらい生きるそうだが、この鯉達はどうか。夜、新しい宿に移動。海まで徒歩30秒、二見浦にある老舗旅館「浜千代館」へ。広くて綺麗で最高の旅館。嬉しさと共に不安が。再び障子を破くのではないか、子供達が無茶苦茶にしてしまわないか。

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10日目

最終日。伊勢に滞在してから初めての雨。午前中は曇りだったので浜辺に行く。全てが淡い世界。湿度のグラデーション。雨が本格的に降り出す。踊りもお休み。甘味を求めて移動する。赤福ぜんざい、へんば餅。若松屋で蒲鉾を買ってお土産に。ひりょうず(伊勢名物のがんもどき)が美味しかった。最終日にしてようやくのんびりと過ごす。

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11日目

出発の日、日の出に合わせて早起きし、娘と浜辺へ。薄い雲と静かな海と。淡い世界。家族で伊勢に滞在できて良かった。海を見ながらしみじみ。10時のチェックアウト時、コーディネートして頂いた伊勢市役所の立花さんが見送りに来て下さる。最後、色紙にサインをということで書いた。まさかの自分の名前を間違える。秋山を私山と書いてしまった。帰りに熊野へ立ち寄る。山道、山道、山道、そして京都へ。 山、川、海、そこに物以上の存在があると再び確認する旅となった。

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家族での滞在を受け入れて頂いた伊勢市の懐の広さに感謝。創造的な事と日常は決してバラバラではなく、日々の下世話なことの延長に非日常な創造事が存在すると思っている。私の毎日は子育てでほぼ埋め尽くされているのだけれど、進化の塊である子供達を通して眺める世界は、どの瞬間も新たな発見で溢れている。伊勢での日常、非日常もまた私の血となり肉となり、ワクワクする何かに昇華されるだろう。
伊勢旅での父さんの「究極踊り」はこちらに ↓↓↓↓



MuDA
シャーマンアートコレクティブ「MuDA」。ダンサー、振付家、美術家、整体師、身心術研究家の QUICK(福井貴彦)を中心に、2010年、京都で発足。活動内容は、究極事、究極踊り、究極身心術、モノ作り、の研究、実践、伝播活動。2018年「ムーダ整体」開業。2019年「ムーダ屋」開業。
過去作に「究極踊り」(日本/2020-)、「想起すること、察知すること」(京都/2019)、「立ち上がり続けること」(京都、スウェーデン/2018-2019)、「ゴミが空から降ってくる」(京都/2018)、「SEMEGIAI Random」(台湾、ジャカルタ、ジョグジャカルタ、北海道、京都/2015-2018)、「MuDA 鉄」(瀬戸内国際芸術祭・犬島/2016)等。

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秋山はるか
1986年、高知県生まれ、京都府在住。陶芸家、パフォーマー、制作者。京都市立芸術大学修士課程美術研究科工芸専攻卒業。幼少期より陶芸を始める。「時間の重なり」をテーマに作品制作を続け、多くの展覧会を実施。京都を中心に関西、四国、北海道、中国、韓国等、各地で作品を発表する。2004年頃から、陶芸制作と並行してパフォーマンス活動を開始。「e-dance」「トリコ・A」等の舞台作品に出演。
2010年、「MuDA」発足を機に制作者業務に従事。美術、宣伝美術、WEB制作、マネージャーを担当。1男1女の母。

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【滞在期間】2020年12月15日〜12月25日

※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)

パートナーであるQUICKさんの滞在記もあわせてお読みください。