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伊勢市クリエイターズ・ワーケーション滞在記 玉川奈みほ

行って参りました、伊勢市へ!
浪曲師の師匠・玉川奈々福と、弟子の私・玉川奈みほ、曲師(浪曲三味線)の沢村まみさんとの六泊七日の三人旅です。
コロナの影響で延期に延期を重ねた上で、それでも実施してくれた伊勢市さんには、心より感謝申し上げます。

伺ったのは6/15~6/21と梅雨の真っただ中でしたが、運よく晴れ間にも恵まれ、レンタサイクルの素晴らしさも体験できました。
私たちが借りに行ったのは、JR伊勢市駅すぐそばの「手荷物預かり所」。メインの宿泊先だったコンフォートホテルからも目と鼻の先、超便利。
電動アシスト自転車を借りたのですが、坂道を上る快適さったらないですね。初めて乗る電動アシストのあまりの心地よさ&楽しさに師匠が喜んで、河崎エリアの虎丸さんで美味しい夕飯を食べた後、その勢いのまま内宮まで行ってしまいました。途中の細い道も坂道も爆走して行くものですから、私やまみさんは細心の注意を払ってついていくのになかなか苦労しました。思ったより内宮まで距離もありましたし(笑)。

この旅の間の基本的な一日の過ごし方は、午前中に色々なところを見て回り、午後は集中してお稽古、夜は美味しいものを食べに出かけるという、贅沢で、そしてとても濃密な時間でした。

宿はコンフォートホテルさんと丸二ホテルさんにお世話になりました。
コンフォートホテルには連泊させていただいたのですが、宿泊者が利用できるビュッフェスタイルの軽めの朝食があり、また、午後から夜にかけてはこちらの場所が、無料のコーヒーやレモン水をいただけるカフェスペースとなっていて、ゆったりした場所で台本をや本を読めてありがたかったです。伊勢関連の本も色々置いてあって、気になる本もたくさん、もっと読む時間が欲しかったなあ。

伊勢神宮の外宮、内宮はもちろん、別宮や様々な場所をお伺いしてたっぷり堪能した様子は、師匠・玉川奈々福と沢村まみさんの滞在記にそれぞれ素敵な写真と共に書かれていますので、ぜひそちらをご覧いただけるとよいと思います!
私の滞在記では、その中から特に興味深く感じたところをいくつか。

旧御師丸岡宗太夫邸。御師(おんし)の子孫であり、幼い頃はこの御師丸岡宗太夫邸に実際住んでいたという館長の丸岡正之さんのお話がとても興味深かったです。
御師とは神職でありながら、今でいう様々なビジネスモデルが詰め込まれた仕事だったという衝撃。
そして山田町が自治都市であったということ、これも私には大変な驚きでした。日本の中に、しかも明治時代初めまで自治都市が実際にあったことを全く知りませんでした。
自治都市、という言葉の響きにとても心が躍ります。まず、税金がない(笑)、他とは異なるルールで治められていた土地。
御師制度が廃止された、明治時代の激動というものは、非常に大きな変革だったのだと改めて感じました。

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滞在3日目、山田奉行所記念館へ。玄関を入ってすぐに背丈より大きな太鼓があり、思わずお願いして叩かせていただきました。建物内に響き渡る力強い気持ちの良い音。このような太鼓で奉行所内でも合図をしていたのでしょうか?
再現されたお白洲を向こうに見ながら、部屋の中、奉行が座っていたであろう場所に師匠と共に座りました。白石が敷き詰められているお白洲自体は実寸ではないそうですが、図面から復元された部屋の奥行と廊下、私が座った場所からお白洲までは思っていた以上に距離がありました。
お白洲と部屋との威圧感を感じさせるような高さの違い(罪人は自然と奉行を見上げる形になる)や、声の響き方も計算された建物の作り。昔見たテレビの時代劇では、お奉行様自身が罪人のすぐそばまで来て説教するくだりもありましたが、実際はどうだったのか。
お奉行様自身がわざわざ大きな声を出して、お指図をすることは本当にあったのでしょうか。偉い方はわざわざ偉そうにする必要はないわけですから、お奉行様によっては側にいた御用人や与力などが口づたえに伝えていたかもしれません。その時代に想いを馳せる時間でした。

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またこの山田奉行所の職務として、お裁きよりも、遷宮の仕事や海上保安庁のような役目の方が重要だったというのには驚きました。

そうそう、名奉行と名高い、のちの大岡越前守忠相(おおおかえちぜんのかみただすけ)もこの伊勢奉行の一人です。伊勢の十八代奉行で、この時は大岡能登守(おおおかのとのかみ)。山田奉行所の話と共に教えていただいた本、「伊勢奉行八人衆」(著・佐藤衆一、発行所・PHP研究所)にも登場し、浪曲「阿漕が浦」にまつわるお話も書かれていました。「阿漕が浦」は若き日の八代将軍吉宗と伊勢奉行、大岡能登守忠相の物語。史実とは違う部分も多々あると思いますが、山田奉行所記念館の建物の中で、お奉行様が見たようにお白洲を見た次の日に、おかげ横丁・おかげ座神話の館で「阿漕が浦」の話ができたことはとても幸せでした。

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一つだけ心残りがありまして……記念館のお白洲の上に座ってみたかった。
罪人が筵(むしろ)もなく、石の上に直に座ることで感じる感触、足の痛み。
奉行を見上げる目線。ぜひ感じてみたかった。
その場では言い出せなかったのが、本当にもったいなかった……。

7日目の最終日には、阿漕駅に降り立ち、阿漕が浦の海を眺めることもできました。この日は小雨が降っていたので、あまり長居はできなかったのですが、晴れていれば、阿漕が浦の物語に出てくるような、浜辺での捕物ごっこしたら更に楽しかったかもしれません。

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6/29に私とまみさんとで主催している「カラやぶりの会」という浪曲の勉強会がありまして、その中でこの伊勢市クリエイターズ・ワーケーションの報告を、たっぷり30分、ご来場のお客様に聴いていただきました。
ワーケーション中に撮影した写真からピックアップして拡大印刷し、お客様に出来事や感じたこと、美味しかったもの、私とまみさんの言葉(時に師匠のフォローもあり!)でお伝えしたのですが、しっかり時間を取ってお話したものの、あまりに濃ゆい日々だったのでその一端しかお伝えできませんでした。それでもお客様には楽しんでいただけたようで、なによりでした。報告する私たちもとっても楽しかった!!
熊野古道で出会ってしまったヒル事件(タクシーの運転手さんのお気遣いの素晴らしさ!)ですとか、どのお店に入っても食事が、白米が美味しかったこととか、外宮・内宮の雨に濡れそぼる新緑の美しさとか、話が尽きなくて、伊勢の魅力はまた別の機会に、どこかの会でお話できたらと思います。

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伊勢市の皆様、ありがとうございました!


玉川 奈みほ(Tamagawa Namiho) 浪曲師

https://rokyoku.or.jp/profile/tamagawanamiho/

【滞在期間】2022年6月15日〜6月21日

※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)