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「ピサロ」 ①_初日延期までのあれこれ

氷魚くんのインスタで、3月PARCO劇場での「ピサロ」へ出演することが決まったと発表があったのが、昨年の9月26日。

2019年9月。「偽装不倫」がクライマックスを迎えるその時までのカウントダウンが始まる中、12月に氷魚くんがファンミーティングを開くことが発表された。初めて氷魚くんに会える!え?何?クリスマスプレゼントの手渡しーーー!と興奮を抑えきれぬまま迎えた「偽装不倫」の最終回。ハッピーエンドだったのに毎週水曜22時を待つ楽しみがなくなったことは思いの外ダメージが大きく、しばらくの間昼食は社食の豚汁うどんを1本ずつ啜る日が続いていた。その後ファンミーティングの抽選は申し込み分全部落選してしまい、会える想定であれこれ膨らませていた妄想は全て泡と消え、息も絶え絶え過ごしていたのは9月の下旬。そんな中でのピサロ出演発表だった。

PARCO劇場の柿落としであること、35年前に渡辺謙さんが演じた役であること、きっと氷魚くんにとってプレッシャーの大きい仕事だろうということ。落ち着けばそんな背景を考えられるけれど、当時はスクリーンを介さず同じ空間で氷魚くんの表現を体感できるそのことだけで震える思いだった。ファンミーティングのチケットが全滅だった私はきっとピサロのチケットも同じような状況かと過度な期待を抱かぬようどんどん熱を帯びる気持ちに冷や水を浴びせながらチケットが発売になる10月2日を迎えた。発売開始は就業中の時間、朝から「なんか今日お腹痛いんですよね…」と離席することへの伏線を張りながら高まる緊張が表に漏れぬよう必死にその時を待った。クレジットカードと携帯を片手にお腹痛そうに席を立つ。

取れたーーーー!

信じられなかった、震えが止まらなかった、大袈裟でなく泣けてきた。半年先のことだけど必ずやってくるその時が約束されたんだ、私は氷魚くんに会えるんだ。

そこからの半年、チケットを譲ってもらい参加することが出来たファンミーティング(プレゼント手渡しの時の3秒、あんなにシミュレートしたのに結局何にも言えなかった、というか記憶が曖昧になってしまうほど目の前の氷魚くんは輝いていた)、映画hisの試写会、舞台挨拶、トークイベントと、沢山会いに行く機会に恵まれあんなに焦がれていたものが近くにあるような手が届くようなおこがましくもそんな気持ちになりつつあった。そしてピサロの公演が近づくにつれ雑誌への記事掲載やTVの露出が増え、そうだこのチケットが取れた時震えたなぁと思い出しながらその日を指折り待っていた。日に日に感染症の情勢が大きなニュースになる中それでもそんなのまだまだ対岸の火事程度の思いで迎えた3月。

氷魚くんはSNSでの発信がマメじゃないけれど、他の出演者の方がたくさんあげてくれる情報で日に日に膨らむ期待。若マル大鶴佐助さんの3月5日のツイッター。3月13日の初日に向け劇場入りし、楽屋での共演者を撮った動画をあげてくれていた。その中で氷魚くんはなんだか自信ありげに「皆さん来てくれますか?待ってるよ」と言っていた。その姿と一言に泣いた。佐助さんが切り取ってくれた楽屋の氷魚くんは、寝癖そのままの頭、ペンを挟んだ台本、お昼ご飯のゴミもそのままに子どものように窓の外を眺めていた。呼ばれて反応し振り返り、完全OFFモードのまま私たちに待ってるよと言った。ちょうどこの動画がアップされる前、キラキラに光りまくった俳優宮沢氷魚としての長いインタビュー記事(と劇場での写真)が掲載された雑誌が発売になり、そのファビュラスっぷりと動画のそこらの兄ちゃん感に頭がひどく混乱したこと昨日の事のように覚えている。

徐々に様々なエンターテイメントの中止や延期が現実のこととして耳に入るようになった。やめて、中止だなんてないない、氷魚くん待ってるって言ってくれてたもの、いけなくなる訳なんてないよと言い聞かせながらも、ピサロのことを考えると心臓の鼓動が早くなる日が続いた。

3月11日、舞台の様子とインタビューがワイドショーで放送され、そこにはアタワルパ仕様に髪をツーブロックに整えた氷魚くんが写っていた。仕事中にTwitterで流れてきたその画像を見てしまい、もう完全にノックアウトだった。私の知っている「クセのあるふわふわの、襟足割と長めの色素の薄い髪」の氷魚くんではなかった。こんなに美しい姿になって本番の幕が上がらないわけないよと見ている人に思わせる説得力あるインカ王がそこにはいたんだ。

そしてその知らせが届いたのは輝くインカ王を目の当たりにした翌日の3月12日15:30過ぎだった。




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