お説教

昼からなんとなく頭痛があった。我が家では具合が悪い人がいるときは小さな声で話すのが約束事になっている。頭が痛いと言うわたしのそばで双子が大声を出し、やめてねと言ってもふざけて大声を出したので、夫は双子を叱った。そして、叱った理由をお風呂で説明していた。あれは「お説教」だ。

夫は、子どもたちへのお説教がちょっと長い。3分以上平気で話す。だから途中子どもたちがおもちゃで遊び始めてしまうけど、それを注意しながらずっと話す。なんていうか、あんまり子どもを子どもと思ってないのかもしれないな、と思った。もしくは、子どもにわかってもらうためにどうするか工夫することより、伝えることに必死な人なのかもしれない。なんていうか、ときどきとても生真面目になるのだ。

お風呂に入りながら夫の説教を聞く子どもたちの様子を、わたしは脱衣所からうかがっていた。頭が痛いので立ったまま過ごす元気がなく、洗濯機の前にしゃがんで、その会話を聞く。

夫は

おかあちゃん、あたまいたいって言ってたね。近くで大きな声を出したらどうなる?

と問う。ふたごは

あたまがいたいの、なおらなかったらにゅういんしちゃうかも

としょんぼり。(いきなり入院になるのか、重症だな)

そうだね、おかあちゃんが入院したらどうなる?

と夫が更に問う。(ていうか「そうだね」なのね)

おかねがなくなってこのおうちにすめなくなる

長女はお金の心配をし始めた。(普段から「とうちゃんかあちゃんが働いて得たお金でこのお家を借りて住んでるよ」と説明してるけど、かあちゃんの頭痛が家の心配になるのか…それはどうなんや…)

そして食いしん坊な次女が

おかしかってもらえない…

としょんぼり。なんとも言えず次女らしい。今日の保育園での面談では「ごはんをもくもくと食べておかわりしてます」と言われた次女にふさわしい返しだ。脱衣所でしゃがんだまま声をおさえて笑う。

夫としては「おかあちゃんと一緒にいられなくなる」と言ってほしかったようで、更に誘導するも

長女)おかあちゃん病気だとはたらけない

次女)おかしかってもらえない…

とやっぱりお菓子に結びつく。そもそもお菓子をそんなに買ったこともないのに、なぜそんなにお菓子の心配をするのか。きみたちの最近のおやつはコープの煮干しか実家からもらった魚肉ソーセージじゃないか。

最終的に夫が

「いやよ」「やめて」って言われたときには、やめようね

と話し、双子が「はい!」と急に元気に返事して説教は終わった。そして即座に「もうお風呂あがっていい?」と尋ね、すぐに風呂場のドアを開けてほかほかの裸んぼうで目の前に現れた。うちの子は乳児の頃から、風呂上がりの姿がなんとも面白くてかわいいのだ。どでん、としてて。

わ!かーちゃんずっといたの?!

と驚く次女に

「おかし買ってもらえない…」って言ってるとこから聞いてたよ、おかしのこと心配だったの?と言うと、えへへえ、と裸でおどけていた。

ふたりの髪をふき、パンツをはこうね〜、と言う頃には少し頭痛が軽くなっていた。わたしのいない場所での3人の会話が聞けて、ちょっとオトクな頭痛だった。

こうやって夫が子どもたちに話したことを「お説教」と書くのをもし夫が見たら、馬鹿にしていると思うかもしれない。でも、今のうちに弁明しておきたい。なんというか夫が子どもたちに一言ずつ真摯に話す様子や、理解しているか何度も確かめる生真面目さが、「お説教」という言葉とすごく親和性が高いのだ。この夫の性質は、夫の両親がともに教師であることも影響しているのかもしれない。叱り方がこんこんとしていて、誘導する感じが先生っぽい。本人に伝えたら、なんて言うだろう。否定するかな。

そういえばわたしは子どもの正しい叱り方を知らない。いや、正しい叱り方なんてないのか。そもそも、「正しい」「正しくない」という考え方と馴染めないな。そして、さらにそもそもをたどると「叱る」ということも掴みきれない。子どもの頃のわたしだって、何度も叱られたり怒られたりしたのに。

何度やっても自分が適度に叱ることができているか不安だ。子どもの理解に合わせることができてなかったな、子どもがまだ生まれてわずか4年だということを忘れていたなと時間を巻き戻したくなることもある。

けれど子どもは叱られても怒られても3分後には涙目のままゲラゲラ笑ったりして、そういう忘れっぽさ、切り替えの速さにどれだけわたしの心が助けられただろうと思う。だからせめて、命にかかわらないときには、わたしが叱ることでなるべく心を傷つけたくないなあと思う。

本気でお説教されながら、真面目にお菓子が買ってもらえるかの心配をしだすような子ども。食いしん坊って、深刻になりにくくって、ありがたいな。

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