火事とおにぎり
8年ぶりに会った友人。1ヶ月だけ同じ病室で過ごした女性。
もともと足に障害があり、障害者スポーツに精を出していた。わたしと会う前にスキー事故に遭い、わたしとはその手術やリハビリで入院中に出会ったらしい。
年末に自宅が火事になり、すぐには住めないこと。火傷で入院していること。それらを知って、昨日お見舞いに行った。
色々な状況が重なって、行き場を無くして入院していた彼女。
彼女は「家に帰りたいけどなぁ」と涙をぬぐった。修復せねば住めない家に無理やり暮らすか、収入がないまま他に賃貸を借りるか。
本当に明るい人で、1ヶ月の入院が毎日楽しかったのは彼女のおかげだろうと思う。
そんな人が今は、病院食が合わず20キロまで痩せて「あのとき死んでおいたほうがよかったのかな」と目を潤ませた。
「また来る」と言って別れた。
帰りの車でじわじわと悔しくなった。わたしは一体彼女に何がしてやれるんだ。
わたしは、家族がいて住む場所があって、人生の何をうだうだしているんだ。
やりたいことから逃げるのはやめよう。
そう思ったとき初めて、一番楽しかったことから逃げていたのかもしれないと思い至った。
うだうだするのやめよう。就きたい仕事がなかったらもう、作るだけだ。
そう決めて寝たら、何度も火事の夢を見た。寝苦しい夜だった。
朝、ぼやぼやとした目でスマホを眺めると、なかなか良い仕事の求人が出ている。
応募する、と決めて子ども二人を起こした。
朝ごはんはおにぎりにする。
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