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アフガニスタンと戦争犯罪

「…もてはやされている北部同盟の故マスード将軍はハザラという一民族の居住区に、大砲や機関銃を雨あられと撃ち込んで犠牲者を出した…」

 僕も尊敬する中村哲氏が言ったとされる文章ですが(あまりに稚拙な出典記事なのでリンクは載せません。その文で検索すれば簡単に見つかります)、非常にミスリードです。マスード将軍が一般市民への殺戮を命令したように聞こえます
 一般市民の殺害等の戦争犯罪では、いわゆる「二次被害」、つまり意図しない一般市民の犠牲があります。いずれにせよ、それを命令した「上官」の責任が最も重く問われなければなりません。
 その場合、その上官が直接その殺戮を命令したのか、それとも下部の者が命令を忖度して、もしくは完全な悪意の下それを犯したのか。
 上官が直接命令していなくても、その殺戮を止める立場にいたなら、同様に罪が問われなければなりませんが、当時の北部同盟(今のタリバンもそうです)のような”ルーズ”な下部組織で成り立つ集団がおかす戦争犯罪では、その判断が難しい。
 当時、僕は、この北部同盟を武装解除する責任者だったのですが、その武装解除と引き換えに「上官」たちに”恩恵”を与える(悪魔のような)作業でしたので、新設されたアフガン国家独立人権委員会と協力して、数ある「上官」たちの過去の悪行を記録する作業部をつくりました。いつか、国際戦犯法廷が開かれる日が来たら、コイツらを絶対に終身刑にするという決意で(その日はついぞ訪れませんでしたが)。
 その際、焦点だったのが「直接的な命令」の有無です。
 その作業で、故マスード将軍の名前が挙がることは(彼は既に暗殺された後でしたが)、話題になることさえ、”全く”ありませんでした
 それと裏腹に、特にパシュトゥーン人の子供を含めた市民に直接手を下した戦争犯罪者の筆頭は、北部同盟の最大派閥の一つ、ウズベク系リーダーのドスタム将軍でした。
 ドスタム(敢えて呼び捨てにします)は、その後、アフガン政界の重鎮となり、2014年の大統領選挙で副大統領候補になります。大統領候補と副大統領候補が一緒になって選挙戦をたたかうアメリカ方式ですね。
 その時の大統領候補は、故中村哲氏を称賛したガニ氏です。

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