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読んでもオモロイ演芸台本❾ オーケイ『責任者は誰だ』

先日の「関西ライターズリビングルームオンライン」にて、主催&進行の吉村智樹さんから「どういう時にプロになれたと思いましたか?」と聞かれ、「ギャラをいただいた時です」とお答えしたと思うのですが、後でじっくり考えると「自分の名前が演芸場の看板に出た時」とお答えするべきでした。

吉村さん、お客様方、すみませぬ。

あれは記念すべき劇場デビューの作品でした。演芸の浪花座という劇場で新作大会があるということで、松竹芸能から大阪シナリオ学校へ生徒の台本採用枠があるとの通達があり、そこへ向けて書いた台本が採用になったのでした。

シナリオ学校の講師は漫才作家の大御所、大池晶先生。

個別添削で第三稿まで書き上げて、大池先生のオッケーが出れば、松竹芸能に渡してもらえるという流れ。

私からすれば、ついにほんまもんの演芸プロダクションと接触できるまたとない機会。ほんまもんですよ、ほんまもん!しかも客として通っていた浪花座で自分の台本がかかるかもしれへんてちょっと奥さん、そらもうがんばるしかないよねつて書いたやつ。

第1稿。まだ演者さんが決まってなくて、「想定演者AB」で書いています。

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大池先生の添削を受けつつ、オニの書き込み。

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第2稿。この時、演者はオーケイさんに決定しています。

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第3稿。晴れて、ほんまもんの演芸プロダクション松竹芸能へ台本が渡ります。

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そして同年、7月1日〜10日。演芸の浪花座で悲願の台本デビューを果たすのでした。



日記を読み返すと、公演前のある日にこんな記述がありました。

6月28日(水)浪花座の新作大会のチラシできる。朝日の夕刊にも掲載。浪花座に看板を見に行く。めちゃくちゃ嬉しい。Kくんも浪花座に看板見に行ってたらしい。

Kくん(本人に当記事掲載の了承を得ていないのでイニシャル表記)というのはシナリオ学校の同期で、歳は私より8つほど下だったけど、とても話しが合った。長身で金髪、見た目バリいかついんだけどとても優しい性格だった。めちゃくちゃ演芸が大好きなのが言葉からも溢れていた。

わーい!!Kくんも看板見に行ったんやな!!嬉しいやんな〜!!

うちらいよいよプロになれたんちゃうんかな!!

と、その日はシナリオ学校の講義日だったから、帰りにビールを飲んで讃え合ったと記しています。

うちらがソッコー見に行った看板はこちら。

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チラシもね。

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はるかかなた師匠の台本を書いたのがKくんです。


ずっと憧れて続けた「作:○○」の表記。

初夏の昼下がりの道頓堀で、自分の名前を見た時の感動は決して忘れることができません。(いや、吉村さんに聞かれた時、忘れとったがな!!)


そして後日、このネタで「ABCお笑い新人グランプリ」に出演されたオーケイさんが優秀新人賞をとられたのでありました。わおー!!

いやこれほんま、履歴書に書いていいよねいいよねったらいいよね。

さらに、この時の浪花座で、ある漫才のお師匠さんがオーケイさんの舞台をご覧になっていたことで、私の作家人生が大きく動き出すことになるのですが……!それはまた別の機会に記したいと思います。(そのお師匠さんが誰かのヒントはチラシを見てね!)


というわけで、今回の「こんなネタを書いてきた」は件の台本、『責任者は誰だ』を公開いたします。20年前のデビュー作、拙い部分も多いかと思います。また例によってネタの後半からは有料ですが、途中まででもぜひご覧くださいませ!!



●初演 松竹芸能 新作大会 2000.7.1〜10   演芸の浪花座

●2001.1   ABCお笑い新人グランプリ 優秀新人賞受賞作品

●演:オーケイ


K 「注意書きって、わかり切ったもんが多いと思えへん?」

O 「と言うと?」

K 「例えばジェットコースターの乗り場の注意書き。『酒気帯びの方、心臓病の方、妊娠中の方、6歳児以下の幼児は乗れません』」

O「ウンウン。そんな人間、ジェットコースター乗ってる場合ちゃうからね」

K「ほんまやで」

O 「酒気帯びで心臓病で妊娠中の6歳児なんか……」

K 「違うて。全部ひっつけたらあかん」

O 「先に児童相談所へ行かんとね」

K 「違う、言うてんねん」

O「そやけど最近、物についてる注意書きがますます細かくなってるなあ」

K 「ここ数年PL法、つまり製造物責任法っていうのが厳しくなったからや」

O 「それどういうこと」

K「お客さんが商品で事故にあった場合、 製造元が責任取らないかんちゅう法律よ」

O「製造元が責任取らされるの」

K「そや。実際、タバコを吸うたせいで体に害があったって言うて、JTを訴 えて裁判起こした人がおるねんて」

O「それやったら俺もJT訴えたいわ」

K「えっ、お前も被害あったんかいな」

O「あったどころやないわ。えらい目おぉたんやぞ」

K「ほう、どんな」

O「昨日、タバコ買ぉたおかげで電車賃なくなったんや」

K「そんなもんが裁判になるか」

O「『ビンボー人は吸うな』と一言書いてくれてたら」

K「書くか。そんなんとちごて、体悪ぅしたとかやないとあかんねや」

O 「体、悪うしたがな」

K 「どこをやねんな」

O 「歩いて帰って太もも筋肉痛になったがな」

K 「知らんちゅうねん」

O 「酒メーカーも訴えたいねん」

K 「どないしてんな」

O「毎晩飲み続けたせいで、肝臓がつい に……」

K 「悪なったんか」

O 「強なったんや」

K 「ええやないかい」

O 「ええことあるか。なんぼでも飲めるねんで、酒代で破産寸前や」

K 「そこまで飲むな」

O 「薬メーカーも訴えたいねん」

K 「薬でどないかなったんかいな」

O 「この前、風邪薬飲んで運転してたんや」

K 「危ないな。風邪薬言うたら、だいたい睡眠作用があるねんで」

O 「そや。つい居眠りしてアッと気がついた時にはもう……」

K 「えっ、事故ってたんか!?」

O 「風邪、治ってたんや」

K 「それでええやろ、ドアホ!」

O「ええことあるか。治ったから夜遊び出かけてもて破産寸前や」

K「知るか。まあそやから製造元も訴えられへんように、細かいことまで注意書きしまくってるわけよ」

O「あぁ、それでやわ。この前、道歩いててバナナの皮踏んで滑ってんやんか」

K「マンガみたいなやっちゃな」

O「倒れた瞬間、電信柱に頭をゴツーン」

K「ははは」

O「フラフラッとなった拍子に、犬のウンコを踏んだんや」

K「最悪やな」

O「事の起こりはこいつや思うて、バナナの皮をよう見たら『スリップ注意』」

K「バナナメーカーやりよるな」

O「ほな、電信柱や思うて見たら、『激突注意』」

K「関電もやりよるな」

O「しゃあないから、ウンコメーカーに怒ったろと思ってね」

K「待てい!ウンコメーカーってどこやねん」

O「犬」

K「そらまあそやけど」

O「よう見たら、ウンコに小さく『ハエ以外は乗らないで』」

K「ウソつけえ」

O「でもな、これから先、俺らも結婚するかもしれへんやん」

K「嫁さんもらうわな」

O「そこに注意書きが付いてたらどうする?」

K「嫁さんに」

O「メーカーからの注意書きがね」

K「メーカーて」

O「相手の親」

K「なるほど」

O 「訴えたくても訴えられへんようになってるわけや」


●以下、コント入る

   K:離婚したい夫  O:妻の父親


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