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【徹底比較】 SHOWROOM vs Mirrativから考えるコミュニティ論

「昨日の夜、アプリでライブ配信してる子に1万円課金したったww」

会社の人に雑談で言ったら、「お前なにしとんねんww」と笑われてしまった。

僕はライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」で推しのアーティストがいる。その子がギターを持って弾き語りをするSHOWROOMの部屋に、毎日毎日せっせと入室する生活。その子の曲を聴いているときは、生きていることを実感するほどだ。

とある夜には、オリジナルメロディと歌声と歌詞に魅了され、感情移入させられ、気付いたらボロボロと涙を流していた。泣いたのなんていつぶりだろうか。数年間、心に溜まっていたものが浄化された感覚になった(決してメンヘラではありません。)心を動かしてくれたお礼として、SHOWROOM上で最も高価なギフトである「東京タワー」(1 万円)を送った。これが冒頭の会話だ。その当時も、今振り返っても、高価な買い物だったとは全く思わない。歌の力で、自分の重りを取り除くキッカケを与えてくれたのだから。

中国トレンドマーケターのこうみくさんが良きツイートをしていたので紹介しておく。

冒頭の同僚に、「それって普通に1万円相当のプレゼントを買って直接渡した方がいいんじゃないか?」と指摘され、確かに...と思ったが、よく考えてみると、心を動かしてくれたその瞬間に、感謝を形にしたいのだ、と気付いた。タイムラグがあると、自分の熱意も薄れてしまう。最も高ぶった瞬間に、その興奮を全身で体感しているうちに、高ぶりに相当するギフトを送りたい。toricagoさんの「価値の均衡理論」にのっとれば、タイムラグがあると、受け取ったと実感している価値が薄らいでいき、ギブしようと思う価値(気持ち)も減ってしまう。

SHOWROOMが運営している、渋谷にあるライブスタジオにも足を運び、直接弾き語りを聴いてきた。一緒にポーズをして、チェキもとった。こんなのは高校生の頃にももいろクローバーのガチヲタをやっていた時ぶりだ。

※本人の許可を得て画像を載せてます。くらげという名前ですが石ころです

毎日足しげく弾き語りアーティストのずつうさんのSHOWROOM部屋に通っていると、同じく毎日いる他のファンの存在に気付く。コメント欄で絡んだりして、自然とお互いを認知していく。そうやって、ずつうさんの周りに、コミュニティーが出来上がっていくのだ。ライブ会場でも、ファン同士が交流し、仲良くなっていく。なんとも素敵な世界。こんなのは、高校生の時にももいろクローバーの現場でトップヲタの方々に挨拶(媚び)をして回っていた時ぶりだ。

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「実はですね・・・今日・・・誕生日なんです!」

小学校6年生の女子がそうコメントをし、「マジかよ!!」と盛り上がる中学生と高校生と大人の集団。いつも配信に来てくれる子が誕生日だったと知った僕は、「待って待って、バースデーソング流す」と言いながら、その場で音楽アプリのSpotifyを開き、AKB48の「涙サプライズ」を流した。僕が操作するスマホ画面、音楽アプリ内で文字を一文字ずつ打ち込み、曲を探す過程は全て視聴者に共有されている。

この秘密の隠れ家を知らない人からすると、なんとも異質な空間に見えるに違いない。

これは全て、バーチャルライブ配信アプリ「ミラティブ」での出来事だ。

※コメントは全てリスナー同士の会話です。(僕は声で喋っています)

学校でもない、会社でもない、第3のコミュニティーがここにも広がっていた。このミラティブ上のコミュニティと、冒頭のSHOWROOMのコミュニティは、同じライブ配信プラットフォームでありながら、似て非なるものである。図示するとこんな感じだ。

SHOWROOMでは、配信者と、配信者のファン達によるコミュニティが出来上がる。Mirrativでは、全員が全員のファンであるコミュニティが育っていく。どうゆうことか?

僕が小学生の誕生日を祝った配信を終えると、今度はすぐにその小学生が配信を開始して、僕は視聴者としてその部屋に入るのだ。僕の配信に来ていた他のメンバーも同様に、その子の部屋に入る。小学生女子は僕のファンであると同時に、僕も小学生女子のファンでもあるのだ。このように、ミラティブでは相互型のコミュニティが広がっていく。ここで注意しないといけないのは、SHOWROOMにだって、ファン同士の横の交流はある。ただ、あくまで僕もファンAさんも、配信者のファンなのであって、お互いのファンであるわけじゃない。配信者がいなければ、成り立たない交流なのだ。

なぜミラティブではクモの巣型に相互に繋がるコミュニティが成り立つのか?一番大きい要因は、ミラティブというプラットフォームの性質上、多くの人が見る専ではなく、配信も行う点だ。これはミラティブが乗り越えるライブ配信の3つの壁で書いた通りだ。SHOWROOMのように全体の一部の人しか配信を行わない場所では、当然リスナーの中で配信してる人も少ない。

さらに、ミラティブには、このクモの巣型のコミュニティ作りを促す仕掛けがいたるところに隠されている。例えば僕が配信中に、フォローしてくれている人の誰かが同時に配信している場合、その人のリンクを僕の配信動画に付けることが可能だ。その結果、僕のリスナーは途中でリンク先の部屋に飛び、その人のファンにもなってしまう。友達の友達は友達というか感じで、この輪が広がっていき、ミラティブではクモの巣型のコミュニティが出来上がっていく。

SHOWROOMでアイドルがほかのアイドルの部屋のリンクを貼ってしまったら、せっかく自分の部屋にいてくれるファンがほかに流れてしまう。これはミラティブでも同じなのだが、友達と友達が繋がってくれたほうが、共通の話題も多くなり、コミュニティに貢献する。学校のクラスのみんなと仲良くなれてもっと楽しくなるというイメージだ。結果的に自分に良い意味で跳ね返ってくる。

また、SHOWROOMのようなピラミッド型のコミュニティでは、リスナーは基本的にはコメントをするかプレゼントを贈るというアクションしか取れないため、ライブが始まってからライブが終わるまで、観客席にずっといる状態だ。もちろん、たまに高価なギフトを送ったり、センスのあるコメントをすることで注目が集まることもある。アイドル現場でいうと、光る棒を振りながらヲタ芸を披露したり、推しの名前を叫んだり、高く飛び跳ねたりするような行為だ。ももクロの現場では高く飛び跳ねる行為をマサイ族になぞらえて、「マサイ」とファン達は呼んでいたが、SHOWROOM の中でも、「スター」を送ると自身のアバターが飛び跳ね、マサイのように見える。これらはあくまで観客席の中で目立つという話だ。それに対して、クモの巣型コミュニティMirrativでは、観客席からいきなりステージに上がることができる。それが「コラボ通話」という機能だ。簡単に言うとアプリ上で電話が可能で、その会話内容を他のリスナーもリアルタイムで聞けるのだ。僕のファンの一人を、他のファンにも紹介して、同等の立場で会話ができる。これも、友達の友達は友達というコミュニティを育てていく上で重要な機能だ。(この機能はインスタライブにもある)

また、ライブ配信が終わった直後には、来てくれた人たちに感謝のDMを送れる画面に誘導される。

そこからDMのやり取りが続くこともあり、さらに仲良くなる。SHOWROOMにも「ファンルーム」という、みんなで演者とチャットする掲示板のような場所があるものの、ミラティブのDMほど前面には出てこない。また、やり取りは1:1ではなく、告知などに使われる印象も強い。もちろん、SHOWROOMも従来のテレビやブログなどと比べると、演者とファンはよりリアルタイムでインタラクティブに関わっていくので非常に距離が近く感じるが、個別にDMを送り合うなんてことはないだろう。アイドル現場において、アイドルとファンがプライベートで「繋がる」ことがタブーであるように、ここでも一定の線引きが存在するように感じる。

ミラティブでは全員が全員のファンと述べてきたが、全員が全員と友達という表現の方がしっくりくるかもしれない。SHOWROOMは努力した人が報われる世界を目指しており、夢を目指す人がSHOWROOMを通じて大きく羽ばたいてくれるような場所だ。そのようなプラットフォームでは、リスナーは「ファン」であると言える。対するミラティブは、友達の家に遊びに行くような感覚と形容されることがあるので、そもそものプロダクトのコンセプトが異なる。

SHOWROOM のようなピラミッド型コミュニティはライブ配信以外の分野にも数多く存在する。YouTubeがその代表例だろう。僕がレペゼン地球の信者である限り、彼らが生息するYouTubeにアクセスし続ける。ここで勘違いしてはいけないのだが、僕は別にYouTubeが大好きなんじゃなくて、レペゼン地球が大好きなのだ。このことはプラットフォーム側にとっては諸刃の剣である。宗教にも近い熱量を持ったファンがプラットフォームにいると、YouTuberが毎日投稿をしたり、ライブ配信者が配信をすれば、ファンは毎日毎日来てくれる。粘着力が高いのだ。ただ、ひとたび演者が生息するプラットフォームを変えた瞬間、ファンはそっちに移ってしまう。実は上記の弾き語りアーティストずつうさんを初めて知ったのも、SHOWROOMではなくラジオ配信アプリのSpoonだった(Spoonアカウント名@zu2)。途中で彼女はSHOWROOMに移り、僕も移った。ずつうさんがSHOWROOM にいた頃は一回もスプーンを開かなくなった。今はずつうさんはスプーンに舞い戻り、僕も舞い戻ったので、今は逆にSHOWROOMは一切開かなくなった。

ミラティブは、ファンベースではなく、友達ベースのコミュニテイに近い。信仰を向ける先の神が存在しないため、圧倒的な熱量というのは存在しないかもしれない。それは高校のクラスでも同じだろう。文化祭や運動会などを除いて、ものすごい熱量というのがあるわけではなく、毎日緩い感じで繋がるコミュニティがある。学校のクラスのように、教室にいけば友達がたくさんいる。熱量は劣るものの、緩いコミュニティがいったん出来上がると、そこに行けば、みんながいるという状態が出来上がる。配信をしたら、いつものみんなが来てくれる。配信を見に行くときも同じだ。みんなが日々、自然と集う場所になっている。

僕はインスタという媒体は好みじゃないが、インスタを開けば友達らがそこにいるから、惰性でインスタを開く。それと同じで、一旦クモの巣型のコミュニティが出来上がれば、そのプラットフォームは非常に強い。唯一無二の場所になるからだ。今のミラティブで僕が属する「クラス」は、TikTokにもYouTubeにもLINEにもFacebookにも存在しない。いったんミラティブで出来上がったコミュニティが、違うプラットフォームにまるごとお引越しするということは考えにくい。一方、ファンベースのコミュニティでは、演者自身も、たとえ生息地を変えてもコアなファンはちゃんと付いてきてくれることを知っている。レペゼン地球やラファエルがYouTubeでBANされようが、僕たちはどこまでもついていくのだ。

ピラミッド型(ファンベース)コミュニティと、クモの巣型コミュニティについて語ってきた。どちらが良い悪いではなく、相性の問題である。ミスコン出場者やアイドルなどはせっかく可愛い容姿が武器になるのだから、ミラティブでアバターの「エモモ」を通して配信をして、学校の教室のような交流をするよりも、最初からSHOWROOMのステージに立って、顔出し配信をした方がいいだろう。
同じ配信アプリと言えども、目指す方向性やビジョンが違うだけで、ここまで異なる形のコミュニティが形成されるようだ。

★12日連続お祭り企画実施中!★

1日目(3/20水)
[前夜祭]日本発Mirrativは世界をとるか

2日目(3/21木)
世界をとれる理由。ミラティブの最大のイノベーション

3日目(3/22金)
ミラティブが突破するライブ配信の3つの壁

4日目(3/23土)
コミュニケーション需要を総取りするMirrativの衝撃

5日目(3/24日)
YouTuberになる夢を諦めたのなら、Mirrativerになりなさい

6日目(3/25月)
Mirrativライブ配信とTikTok二次創作にはSoftBank郡戦略のエッセンスが詰まっている

7日目(3/26火)
ミラティブ現象により80億人総クリエーター化なるか

8日目(3/27水)
「価値の均衡理論」でミラティブを眺めてみる

9日目(3/28木)←今ここ
【徹底比較】 SHOWROOM vs Mirrativから考えるコミュニティ論

10日目(3/29金)
没入体験が失われる時代におけるライブ配信の重要性

11日目(3/30土)
ミラティブはSNSの歴史を変える

12日目(3/31日)
[後夜祭]春のミラティブ分析祭り[総括]

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