ユダヤ人とは何者なのか(2)
始めに
元来のユダヤ人はアラブ人と同様黄色人種系、つまりアジア系の人間だということは前回述べた通りですが、それなら現在イスラエルという国に住んでいる人も含め白人種に見える人達は何処から来た何者なのでしょうか。
それは紀元7~9世紀のコーカサス地方におけるある民族の歴史の中に見出すことが出来ます。
ハザール王国の誕生
謎の遊牧民と言われるトルコ系白人種達が現在のカスピ海と黒海の間に位置する地方に周辺の列強国から独立して7世紀中頃にハザール王国という国家を作ります。
人口が100万人ほどの当時にしては大国だったようです。最盛期には西はウクライナ西部まで含む広大な領土だったと言われています。
当時ローマ帝国の国教として制定されていたキリスト教は帝国内の領土に広く浸透していたのですが、このハザール王国は無宗教国家だったといわれています。
悪魔崇拝の邪悪な宗教を拝んでいた、という話もあるのですが、ハザール王国の歴史に関する詳しい史料がなく、ほんとのところはよく分からないままです。
さて、この頃ハザール王国は南を東ローマ帝国(首都はコンスタンチノープル;現在のトルコのイスタンブール)と東の方は紀元6世紀頃に誕生したイスラム教を国是とするウマイヤ王朝に代わったアッバース王朝と国境を接していましたが、両者から宗教的圧迫を受けていたとされています。
宗教的圧迫とはキリスト教徒になれ、いやいや、イスラム教は良いぞ、イスラム教を拝みなさい、という両勢力からのお誘いのことですが、どちら側についてももう片方を敵に回してしまう、とハザール王国は非常に悩むことになります。
少数の人たち(おそらくアッバース王朝に近い東側に住んでいた住民でしょうね)はすでにイスラム教を信じるようになった、という話もあるのですが、国全体としては少数派だったと見られています。
ユダヤ教への改宗~ディアスポラ
当時の国王オバディアはこのジレンマに悩みに悩んだ挙句、驚くべき決断を下し、ユダヤ教を国教とする旨の宣言を行います。
そしてハザール王国は国をあげてユダヤ教に改宗することとなります。9世紀初頭のことです。
ユダヤ教を選択した理由としてユダヤ教はキリスト教とイスラム教の源となった宗教だから、キリスト教国からもイスラム教国からも敵視されることはないだろうといった政治的な配慮の上での決断だった、と言われています。
第二次大戦中天才的な外交手腕でソ連とわたりあい、ポーランド、ハンガリー、チェコやルーマニアなどのようなソ連の衛星国家とならず中立国として独立した国家体制を維持したフィンランドを彷彿とさせるものがあります。
しかしながら平和は長く続かず、10世紀後半にキエフ大公国(当時はキエフ・ルーシと呼ばれた国)との闘いで国は衰退し始め12世紀頃にはモンゴルがロシア始め欧州各地に侵略し始めるとハザール人はモンゴル襲来を恐れ西へ西へと移動することになります。
その結果彼らは南ロシアや現在の東欧諸国やドイツなどに住み着くことになるのですが、住み着いた先々でイエス・キリストを殺した民の子孫として嫌われ迫害されることになります。
彼らは民族的には何ら古代のユダヤ人の血を引いている訳でも彼らの先祖がキリストを殺したわけでもないのに、このような皮肉な運命を辿りナチスドイツの時代に政治的に利用されてホロコーストという一大悲劇に見舞われることになっていきます。
彼らのことをセファルディー系ユダヤ人と対比してアシュケナジー系ユダヤ人と呼んでいますが、アシュケナジーとはヘブライ語で「ドイツ」という意味です。
第13の氏族
アーサー・ケストラーというハンガリー出身のアシュケナジー系ユダヤ人ジャーナリストは9世紀以降白人種系のユダヤ人が世界で急激に増えたことを奇異に思い、歴史などを調べた結果、そのルーツは7~10世紀に栄えたハザール人であることをつきとめてそれを「第13の氏族」という本の中で書き記しています。
この本はイスラエルでは発刊禁止となりましたが、全世界に大変なインパクトを与えたようです。
何故イスラエルで発刊禁止となったか?
それはパレスチナでのイスラエルの建国やアシュケナジー系ユダヤ人が正真正銘のユダヤ人である、ということについての正当性が否定されることになるからでしょう。
実際パレスチナ自治政府のトップであるアッバス大統領はパレスチナ民族評議会で、「ヨーロッパのユダヤ人は、古代イスラエル人の子孫ではなく、トルコ系ハザール人であり、イスラエルの地とは無縁だ」という発言をしています。
タイトルにもなっている13士族とは古代ユダヤの12士族に加え、このハザール人末裔が13番目の士族だと、彼は主張しているのですが、結構無理がありますね。
ケストラーはイスラエル本国での反発などを恐れて13士族などと言い出したのではないか、と言われていますが、奇妙なことに晩年うつ病になり妻とともに自殺しています。
ほんとに自殺なのかどうなのか私は少し疑っていて、ひょっとしたら口封じのための他殺なのかな、と思ったりもするのですが、どうなのでしょうか。
ホロコーストという悲劇を経験したからなのか、また、「第13の士族」で明らかになったことへの反発なのか、アシュケナジー系ユダヤ人はますます自分たちのほうこそ由緒正しいユダヤ人だと思って(思い込みたがっている、というのか)いるようです。
こういった人たちの中には「ユダヤ教を信じている人がユダヤ人だ」と強弁する人もいるようですが、宗教と民族を一緒くたにして論じるのはおかしな話で、まあ、苦しい言い訳でしょうね。
GHQによるユダヤ研究本の抹殺の訳
ところで前回日本でユダヤに関する研究が結構進んでおりGHQによってそのような研究本が焚書の憂き目にあったことを書きましたが、私の勝手な想像としては;
①当時すでにアメリカにアシュケナジー系ユダヤ人が多数移民しており、政財界に対してかなりの影響力を持つようになっていたため、彼ら、及び彼らの国の存立の正当性を否定するような研究を隠ぺいした。
②旧約聖書のイザヤ書には救世主は東方の島々から現れる、といったことが
示唆されているほか、旧約聖書に非常に近いと言われる死海文書には「救世主は聖書を知らない東の国から現れる」との予言がある。
日本人がユダヤの研究を通じこういったことに触れることになれば、戦前盛んに喧伝された「神国日本」の思想が蘇りかねないことを恐れたGHQが研究本を全て破壊したのどちらか、あるいは両方の背景だったのでしょうか。本当のところは実際には良く分かりませんが。
イスラエル建国~現在
さて、英国はアラブ人に対し第一次大戦中ドイツと組んでいたオスマントルコとの闘いで英国と共闘すれば将来アラブ人国家を樹立してあげる、と約束します。
このあたりの話は映画「アラビアのロレンス」で描かれている通りです。
その後第2次大戦以前から膨大な富を蓄えていたユダヤ系財閥のロスチャイルドを始めとするユダヤ資本の援助欲しさに英国はアシュケナジー系ユダヤ人に対してパレスチナ地方に彼らの国イスラエルを建国させてあげると約束するという2枚舌外交をし、これがパレスチナ地方での血なまぐさい争いの原因となっています。
あまり知られていない逸話として英国はイスラエルをアフリカのウガンダ(現在はケニア領)に建国してはどうか、と打診したりしています。2枚舌外交に関しての良心の呵責があったのでしょうか。
もし、これが現実のものとなっていたら、アフリカの人たちが悲惨な目に遭ったであろうことは容易に想像がつきますが、結局この案は棄却されています。
イスラエルウガンダの地へ建国
こうして1948年に正式にイスラエル建国後周辺のアラブ諸国と4度にわたる中東戦争が起き、現在はまた別の紛争でもめているイスラエルですが、テレビなどに出演するユダヤ人は悉くアシュケナジー系の人間でセファルデイー系の人間は全く見かけません。
何故でしょうか? 科学、金融、政界、文学の分野などでユダヤ系(ほぼ全員アシュケナジー系)といわれる人の数が途轍もなく多いことからお分かりのように、時を経るにつれアシュケナジー系ユダヤ人がセファルディー系ユダヤ人を質的にも、量的(人口)にも圧倒してしまい、セファルディー系ユダヤ人の存在感がほぼ失われている、という状態だからです。
なので、世界の圧倒的大多数の人がユダヤ人というと白人種の民族、といった勘違いをするようになっている訳です。
今現在イスラエルという国は政治、経済、文化、科学などの社会の表面は悉くアシュケナジー系ユダヤ人によって占められ、セファルディー系ユダヤ人は差別され、下級・2流市民として社会の底辺層をなしている、といった2重構造の社会となっています。
ただ、公平に言うとイスラエル国会には少数ながらセファルデイー系ユダヤ人も中東戦争でイスラエルがヨルダンから奪った領土ヨルダン川西岸に住んでいてその後イスラエル国籍を有するに至ったアラブ人の議員もいます。
私はイスラエルには観光でも旅行したことがあるのですが、エルサレムやテルアビブなどの下町、例えばお土産や骨とう品を売っている場所などに行くと小さい帽子を被ったセファルディー系ユダヤ人をよく見かけましたが、華やかで賑やかなアップタウンではほどんど見かけませんでした。
彼らに降りかかった呪いはそれだけにとどまらず、イスラエル建国によってもともと親類同然であったアラブ人への敵対感情をセファルディー系ユダヤ人が抱くようになったことも彼らに対する別の災いなのでしょうね。
また私事で恐縮ですが、仕事の関係でサウジアラビアを訪れて代理店との会合を持ったことがあります。サウジもイスラエルのことを快く思っていないアラブの国の一つです。
そのオーナーが世間話として「イスラエルはひどい国だ。許せない」などという話を振ってきたので「まあ、そうなんだけど、あの国にはあなた方と民族的に近い同胞のような人達もいるんじゃないの?」と返すと「以前はそうだたったけど、今はもう違う。彼らも敵だ」という返事が返ってきました。双方憎みあうようになっているようです。
セファルデイー系ユダヤ人は今でも中近東のあちらこちらに住んでいて周囲のアラブ人とは平和裏に仲良く暮らしているので、彼が「敵だ」と指弾しているのはイスラエルに住んでいるセファルディー系ユダヤ人のことなのですが、なんとも悲しい限りです。
以上でユダヤ人に関する話はおしまいです。
ところで前回の話に出てきた「失われたイスラエルの10士族」についてある者たちは東(アジア)ではなく、北の果てへ向かった、という記述が旧約聖書外典にあるのですが、次回はこれに関連するトピックとして「地球空洞説」というテーマで投稿する予定です。
最後まで読んでもらいありがとうございました。皆さんのコメントお待ちしております😊
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?