サグは二度死ぬ

「2pacを殺して欲しい?」
 俺は耳を疑った。目の前の男は何を言っている?
 2pacはHIPHOP界の頂点に立ち、25の若さで殺された伝説のラッパーだ。そう、殺された。だが目の前の男は俺に2pacを殺せと言う。
「なんだ、やつは生きてるってことか? 都市伝説じゃなく」
 男は肩をすくめる。
「さあな」
「……」
「だが最近になってシュグ・ナイトの息子が生きていると証言した」
「ラリってるだけだ」
「だがもし生きているとしたら見過ごせない」
 あんたは何者なんだ? という言葉をぐっと飲み込む。それはご法度だ。
「君に依頼するのは調査と暗殺だ」
 ここだけの話、人を殺すほど楽な仕事はない。人は簡単に死ぬからだ。だが死んだはずの人間を殺すとなれば骨が折れる。それにこの仕事は私情を抜きにはできない。俺は2pacの大ファンなんだ。
 机の上に置かれた小切手をめくる。
 俺はプロだから顔には出さないが、思わずのけぞってしまうほどの金額だった。

【続く】

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