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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ&異世界/天地暁闇

「ここは」
 洪家拳の達人、黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)はアメリカ人の乗った暴れ馬に轢かれ気が付くと森の中にいた。
 馬に轢かれたと言うのにも関わらず身体の痛みはなく、むしろすこぶる調子がいいといった様子だ。黄飛鴻ははてと首をかしげる。どうにも暴れ馬に轢かれた後のことがとんと思い出せない。
 すると、どこか遠くの方で少女の叫び声となにやら野獣のような声が聞こえる。どうも剣吞な様子だとそちらの方に駆け付けてみると、妖めいた緑の小男集団に色素が薄く耳の長い少女が今まさに襲われようとしているではないか。
 黄飛鴻は一瞬躊躇した。果たして妖に自身の武術が通じるのかと。だが肌の違う小男に少女が蹂躙される様は列強諸国に蹂躙される中国人の姿と重なり、何より自身の正義心がこの場を見過ごせぬと叫んでいた。
「ええい、許せん!」
 黄飛鴻は辮髪を揺らしながら跳躍し、小男の頭蓋を連続飛び蹴りでかち割る。影にも映らぬ早業、無影脚だ。

【主題歌:男兒當自強に続く】

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