言葉を融かすもの。(3/3)

日本のゴシップニュースでは「定型句」のようなものがたくさんある。たとえば「熱愛」「破局」がその典型だ。
ほんのりした思いとか、ほのぼのした関係とか、濃密なつながりとか、腐れ縁とかそんなちがいはどうでもいい。なんでもいいからとにかく「熱愛」である。別れも同じで、納得づくの別れでも、欲得尽くでも、心変わりでも、自然消滅でも、外野に引き裂かれたのでも、マスコミが自分たちの取材活動によってぶちこわしたのでも、とにかく分け隔てなく「破局」なのである。大雑把な「熱愛」と「破局」という枠組みに全ての恋愛をぶちこんで、公にする。そのゴシップを、多くの人がクリックして、読む。

もちろんニュースは、わかりやすくなければならない。何が起こったのか、ぱっと直観的にわかるように伝えなければならない。ゆえに、微妙な言い回しや耳慣れない言葉は、使えないのだ。人目を引く強い言葉、わかりやすい言葉。ゆえに「熱愛」と「破局」しかないのだろう。

ただ、私たちは生身の人間として、「熱愛」にも「破局」にも当てはまらない愛のかたちが星の数ほどあることをしっている。わかりやすい言葉では決して捉えられない感情を、だれもが生きている。

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マルジナリア・2

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