「アイデンティティ」のゆくえ。(1/3)

「あなたは、誰ですか?」

前の稿は、この問いに怒りまくるところから始めた。
それで5回分けの長編になってしまったわけだが、この問いは考えれば考えるほど、意味深長である。

ポーランドの国民形成の時代に、子どもたちは、アイデンティティの問題に次のように答える訓練を受けていました。あなたは誰ですか? ポーランドの子どもです。あなた方のシンボルは何ですか? 白鷲です……という具合に。優れた現代文化の社会学者、モニカ・コステラは、今日の回答は多少違うものになるだろうと指摘しています。つまり、あなたは誰ですか? ユーモアのセンスのある40代のハンサムな男性です。あなたのシンボルは何ですか? ふたご座です。
(『アイデンティティ』ジグムント・バウマン 日本経済評論社 強調は石井。)

私は占い屋なので、本の中で星占い的な記述が出てくるとつい、反応してしまう。
もっとも、占い自体について書かれた本や歴史・文化関係の本でもなければ、占いに触れる部分はたいてい、ジョークや嘲笑、揶揄、非科学的思考を分かりやすく非難するための極端な比喩などでしかない。
ここでもある意味、バカにされているわけなのだが、当方はなにしろ、まじめな(!)占い屋である。
笑って(笑われて?)すますわけにはいかないのである。

この本のタイトル「アイデンティティ」。
これはズバリ「あなたは、誰ですか?」への答えとなる概念のひとつだ。

「あなたは、誰ですか?」と聞かれたとき、どう応えればいいだろう。

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マルジナリア・2

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読書や勉強のメモ他、いろいろなコラムを書いていきます。占いに関係あるものも、ないものも。ラットホイールの占い執筆で慌ただしい毎日、つい勉強…