試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第20節・大分トリニータ戦)

 7月27日は等々力競技場で大分トリニータ戦です。

先週はチェルシーFC戦が開催されたため、川崎フロンターレはJ1リーグのカードを未消化でした。この先週分を消化する一戦となります。

 相手は昇格組の大分トリニータです。
このチームとの試合のポイントを語ろうとすると、大分が繰り出す「擬似カウンター」とも呼ばれるスタイルなしには語れないところがあります。

 せっかくなので、このスタイルの基本的な枠組みを説明すると・・・・GK高木駿が最終ラインに加わってビルドアップしていき、自陣でゆっくりとボールを動かしながら相手が深い位置まで寄せてくるのをギリギリまで食いつかせます。

 そこで相手チームが深追いしてきて前傾姿勢になる瞬間を狙って、相手が寄せてきたことで空いている場所にボールを入れて攻撃のポイントを作る。そこから攻撃のスイッチを入れて一気にフィニッシュワークまで持っていく。あるいは、これを繰り返すことで、ゴール前で数的優位の状況が作っていくこともあります。ものすごくざっくりと言うと、そうした狙いをもとに設計されているスタイルです。

 そこで肝となっているのは、ビルドアップに優れたGK高木駿ですね。
川崎フロンターレにも所属経験のある彼が、リベロのような役目でボール回しに加わっていることで、他のチームと比べると、後ろで数的優位を作り出しやすくなっています。ショートパスやロングパスを蹴れるGKは珍しくありませんが、高木はミドルレンジのパスも正確なのが厄介です。

 前からボールを奪いに行きたいチームは、いつもよりも人数をかけて奪いに行く前傾姿勢を余儀なくされるわけですが、大分からすると、相手がうまく前がかりに食いついてくれれば、その背後のスペースを狙って自陣からのカウンターを発動させやすくなります。普通のカウンターの原理とは違い、ボール奪取ではなく、ボール保持から繰り出していることから「擬似カウンター」と名付けられて定着しています。

 例えるならば、大分の後ろのボール回しというのは、いわば「餌のついた釣り針」のようなもので、GK高木駿が加わっている最後尾のボールが「餌」なんですね。なぜ餌なのかというと、それを「パクッと」食べてしまえばゴールなわけですから、こんな美味しい餌はありません。ただし、危険な釣り針がついていますよというわけです。

 この「釣り針についている餌」についてどう考えるか。
大分トリニータと対戦するチームは、そこを明確にしてゲームに臨む必要があります。

・・・・思った以上に前振りが随分と長くなりましたが、それを踏まえた上で、試合の見どころを語っております。今回のラインナップはこちらです。

1.「鳥栖のときに、自分たちからのアクションに迷った。FC東京戦でそれを改善して、チェルシーでまた改善せざるを得なくなった(苦笑)。そういうのを繰り返したという意味では良い期間だったと思います」(鬼木達監督)。変えるか。変えないのか。指揮官がピッチに込めるメッセージはいかに。

2.「GKは狙い目だけど、(高木)駿は足元もうまい。下手なセンターバックよりもうまいんじゃないですか」(小林悠)、「独特なチームですからね。自分たちから行かないという選択肢もある」(中村憲剛)。我慢比べか、それともあえて餌に食いつくか。大分の「釣り針作戦」にどう対峙するのか。

3.「前にも行きたいですが、後ろのリスク管理も見ておかないといけない。微妙なバランス、ポジショニングが大事になりますね」(下田北斗)、「一番は(チーム全体を)コンパクトにやること。コンパクトにすればそれだけ距離感は良くなる」(谷口彰悟)。チームとして「いつ、どこで奪いに行くのか」というプレスの目を合わせ続けていくために必要なこととは?

4.「前からいく守備というのは、うちのセンターバックとディフェンスラインのスピードがあってできていることだと思っている」(小林悠)。擬似カウンターで試される最終ラインの耐久力と、小林悠が語る後ろへの信頼感。

5.「(相手が)どんな攻撃をしてきても点を取られなきゃいいし、どんな守備してても、例えばセットプレーの1発でも(決めれば)いい。だから、そんなに深く考えないかな」(阿部浩之)。策士・片野坂監督が準備してくるであろう仕掛けにも、冷静さと自信をのぞかせる阿部浩之。そこに垣間見れた彼のサッカー観とは?

以上、5つのポイントで冒頭部分も含めて全部で12000文字ほどです。ボリュームたっぷりです。予習となるような戦術的な見所もあれこれ書きましたが、特にポイント5の阿部浩之のサッカー観のところを読んでもらえると嬉しかったりします。

なお、レビューはこちらです。➡️終盤にあった決勝弾の布石と、それを演出した2人の観察眼。そして満員の日産スタジアムに響き渡った勝利の凱歌。(Jリーグワールドチャレンジ2019・チェルシーFC戦:1-0)

リーグ戦の直近のレビューはこちらです。➡️高い強度による連動したプレッシングと鬼気迫るボール狩り。そして握り続けたボール。攻守に圧倒し、大切なものを取り戻した多摩川クラシコの完勝劇。(リーグ第19節・FC東京戦:3-0)

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いしかわごう

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いしかわごう

サッカーと将棋をコンテンツ化するフリーランスです。Number Webなどに寄稿。著書は「将棋でサッカーが面白くなる本」、「川崎フロンターレあるある1&2」など。「サッカー脳を育む」、「サッカー上達のためのマインドとメソッド」など中村憲剛の著書の構成も担当。
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