足りなかったのは「経験」なのか?今シーズン初めての2点ビハインドに、鬼気迫る表情でプレーした小林悠と、攻守に強烈な意思を発し続けていた大島僚太の存在感。ワンポイントレビュー:(リーグ1st第16節アビスパ福岡戦:2-2)。


 レベルファイブスタジアムでのアビスパ福岡戦は、2-2の引き分け。

 0-2から追いついたとはいえ、勝たなくてはいけない試合での引き分け。2位の鹿島アントラーズがアウェイでヴィッセル神戸に2-1で逆転勝ちしたため、川崎フロンターレは1stステージ最終節に、首位の座を明け渡す結果に。

悔やまれるのは、序盤の2失点でしょう。試合後のミックスゾーンで、井川祐輔の語ってくれた言葉が印象的でした。

「これが優勝したことのないチームの試合の入り方なのかもしれない。こういうところで負けた苦い経験を、試合前にもっと伝えていれば・・・そういう後悔も、経験者として自分の中にあります」

 試合後は井川祐輔のこの言葉が、頭の中でグルグルと回っていました。2006年にフロンターレにやってきた彼は、中村憲剛に次ぐ古株です。クラブ在籍11年目。2006年、2008年、2009年のリーグ準優勝も経験しています。ディフェンダーというポジションゆえ、井川祐輔は中村憲剛とも違う「経験値」があります。だからこそ、試合の入り方に思うこともあったのでしょう。

 そして大事な試合で15分で2失点を喫してしまった守備陣を見ていて、ちょっと思い出した話があります。

 それは、2013年のチームとの違いです。

 2013年のチームといえば、風間監督として最高順位である年間3位で終え、ACL出場権を掴んでいます。

 このときのシステムは〔4-2-3-1〕でした。最終ラインの中央にはジェシと井川祐輔という経験あるセンターバックが構え、中盤の底には防波堤・稲本潤一、豊富な運動量で中盤をカバーするダイナモ・山本真希のダブルボランチ。そしてトップ下の中村憲剛、ワントップに大久保嘉人は現在と同じセンターラインです。ボールを握るサッカーをしつつも、相手の攻撃を我慢する時間帯でも、ジェシと井川祐輔、稲本潤一というベテランの守備職人が睨みを利かせ、耐久力を感じられるチームでした。

 2016年のチームは、第9節のアウェイガンバ大阪戦から〔4-2-3-1〕システムを採用しています。チームの顔ぶれは変わっていますけど、トップ下の中村憲剛とワントップに大久保嘉人の縦関係、そして守備陣の粘り強さと、中盤を構成する選手の役割とバランスが、どこか2013年のチームと重なります。

 「2013年シーズンのチームと似ているのではないか」

 ガンバ戦の後に、愚問を承知で中村憲剛に聞いてみたことがあります。

 彼は質問の意図を汲み取った上で、2013年のチームと比べて「いや、若いよ」と言っていました。

「若い」と言って指しているのは、エドゥアルドと奈良竜樹(現在は谷口彰悟)のセンターバックコンビ、谷口彰悟(現在はエドゥアルド・ネット)と大島僚太のダブルボランチコンビの後方4人についてでした。その言葉は、単に年齢的な数字を指しているのではなく、「経験」という意味を含んでの指摘でした。

「まだゲームを読めないかな。メッセージを発する人がまだいない。どこかで、誰かが無理してメッセージを発するプレーをしないと。あそこの4人だと、まだ流れに流されてしまっている」

 例えば、あの2013年のチームだと、稲本潤一やジェシなど、彼らがプレーでチームメートにメッセージを発するということをしていたというわけです。表面的には説明しにくく、とてもレベルの高い話ですけど、ゲームの流れを読んだプレーや試合の運び方を状況に応じてできるのが、ベテランの老獪さだということなのでしょう。そういう意味で、いまの4人は「若い」というわけです。

 あのとき、中村憲剛に言われたときは「そういうものなんだな」と思って納得したのですが、この福岡戦での試合の入り方は、まさに「後ろが若いチーム」であるがゆえの現象が起きてしまったように感じました。

 ただ「若さ」や「経験」と一言で片付けるべき試合でもないと思っています。そんなこともあり、今回は現地取材だけではなく、後日取材を終えてからレビューを書いてみました。ピッチ上で起きていた出来事の因果関係に加えて、「経験値」も意識して取材しています。

ラインナップはこちらです。

1.想定外だったエドゥアルドの「競り負け」。今シーズン初めての2点ビハインドで、露呈してしまった若い守備陣の対応力。

2.追撃の1点は、鬼気迫る表情でプレーしていた小林悠の絶妙ループ。4試合無得点だった彼が、試合前に風間監督から言われたアドバイスとは?

3.「逆にこれをひっくり返したいと強く思いました。自分たちがどれだけできるかを試されていると思った」。強烈な意思を発し、2得点に絡んだ大島僚太。試合中に芽生えた、そのメンタリティーの変化に迫る。

4.得点源にしたかった攻撃のセットプレー。中村憲剛の離脱、ターゲット・エドゥアルドの途中交代の影響はあったのか?キッカー・大塚翔平に聞く。

5.ベテラン3人を送り込んだ風間監督の交代策を読み解く。「そういう状況にいることを、もっと楽しまないといけないと思ってます」。中村憲剛とも井川祐輔とも異なる、「違うもの」を見てきた田坂祐介の経験値。

以上、5つのポイントです。というか、ここまでの無料記事で約1500文字も書いてますけど、残りは約6500文字ぐらいです。

試合後のミックスゾーン取材だけではなく、二日後の麻生取材でもかなりの補足があるので、この試合を冷静に振り返って、読み解きたい方におススメです。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ1st第16節・アビスパ福岡戦)

では、スタート!

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