見出し画像

「みんながどこかで必ず勝てると信じてやっている」(車屋紳太郎)。積み上げてきたサッカーの自信と、チーム全体にみなぎる信頼感。勝負所で競り勝ち、多摩川クラシコを制する(リーグ2nd第5節・FC東京戦:1-0)


 
 等々力競技場でのFC東京戦は1-0で勝利。
今シーズンは多摩川クラシコ2連勝となりました。

 小林悠の決勝ゴールは、またも左サイドから生まれました。ゴール前のFKのこぼれ球から、左サイドの車屋紳太郎が中央へクロス。戻りながら飛び込んだ小林悠がヘディングでゴールネットを揺らしました。

「今週の練習でずっとシン(車屋紳太郎)に、ああいうボールを蹴って欲しいと言っていました」

 小林悠は車屋のクロスの質についてそう振り返っていましたが、注文通りのクロスだったわけです。一方、クロスを出した側の車屋紳太郎のプレーをよく見ると、全くと言っていいほど中の状況を確認しないで蹴っています。

 試合後のミックスゾーンで、「あのクロス、中を見てないで上げてますよね。感覚ですか?」と車屋紳太郎に聞くと、「感覚っす。感覚であげた感じです」と笑ってましたが、よくよく聞くと、こう明かしてくれました。

前半からあまり中とクロスが合わなかった。1本、理想通りに蹴れたクロスはあったんですけど、DFに弾かれてしまった。絶対に1本は通したいと思っていて、最後にそれが出てよかったです。相手は大きいし、高さで勝つのは難しい。そのためには、走りこんでくるボールしかなかった。置くような感じで蹴りました」

 今やフロンターレの攻撃は、中央を守っておけば守れるわけではありません。良質のクロッサーがいることで、サイドからも得点に結びつけるようになりました。

 試合を振り返ると、FC東京は守備から入ってきました。
しっかりと4-4のブロックを組んで守り、東と河野の両サイドハーフが守備での上下動をかなり精力的にやっており、中央もしっかりと固める。ボランチは米本拓司の負傷交代により、エリアを空けない高橋秀人が入ったことで、真ん中から攻略するのがさらに難しくなりました。最後尾には森重真人を中心に日本代表クラスが締めるので、そこをこじあけるのは簡単ではありません。

 フロンターレは前線の4枚が流動的になってうまく相手のブロックを揺さぶり、何度か決定機を作っていたと思います。試合全体を通じて、「ボールを握って攻めるフロンターレと構えるFC東京」の構図だったと思います。

 こういう試合展開になると、自ずとゲームの勝負所も明確になります。
フロンターレとしては「じれずに攻め続けて、相手の守備陣をこじ開けること」であり、FC東京としては「攻め疲れした隙を、ワンチャンスで仕留めること」になります。

 そういう意味では、勝敗は紙一重だったかもしれません。
66分にはムリキの抜け出しから大決定機が生まれていますし、これをチョン・ソンリョンがセーブしていなければ、このチャンスをモノにしたFC東京がそのまま勝っていた可能性もあります。

 しかし、いまのフロンターレはそういう勝負所で競り勝つことができています。

 なぜでしょうか。

今回のレビューでは、そのへんを中心に掘り下げてみました。その変化と理由は、ミックスゾーンで取材していても、選手から感じられるようになっています。

では、今回のラインナップです。

1.「みんながどこかで必ず勝てると信じてやっている」(車屋紳太郎)。今年のチームを支えている「信頼感と自信」の正体とは?

2.「ずっと守っていればゴールが生まれると思っている。今は負けていないし、自信を持って準備ができている」。チョン・ソンリョンが語る1対1の極意と準備の重要性。そして、大久保嘉人が語っていた「やりにくいキーパー」の特徴とは?

3.「ケンゴに怪我があったので、自分がなんとかチームのためにという気持ちでやりました」。万全ではない中村憲剛を支えたエドゥアルド・ネットの献身性。

4.大久保嘉人と並んでチーム最多のシュート4本を記録した橋本晃司。彼がこれだけチャンスに絡み始めたのには、理由がある。

5.「チームが苦しいときにゴールを決めるストライカーになれ」。5試合連続ゴールの小林悠を変えた出来事とアドバイス。そして師匠と仰ぐジュニーニョという存在。

以上の4ポイントで全部約6500文字です。チームが終盤で競り勝てる理由がよくわかると思います。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ2nd第5節・FC東京戦)

よろしくどうぞ。

ここから先は

6,041字
この記事のみ ¥ 300

ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。