大島僚太の機転と、スルーを感じていた三好康児のアシストと、小林悠の冷静な一撃。風間フロンターレのラストゴールに感じた未来。(天皇杯決勝・鹿島アントラーズ戦:1-2)


 吹田スタジアムでの鹿島アントラーズとの天皇杯決勝は、延長戦の末に1-2で敗戦。

 4年半に渡って川崎フロンターレを率いてきた風間監督のラストマッチが終わりました。そしてタイトル獲得とはなりませんでした。

 印象的だったのは、試合後の表彰式です。
天皇杯を掲げてみんな喜ぶパフォーマンスをする鹿島の選手たちと、それを壇上の横でさまざまな表情で見守るフロンターレの選手たちの姿・・・・まさに勝者と敗者のコントラストでした。

 ふと思い出したのが、2014年のブラジルワールドカップ決勝・ドイツ代表対アルゼンチン代表戦後の光景です。途中交代で入ったゲッツェが決勝点を挙げ、延長戦の末にドイツが勝利して優勝に輝きました。

 あの試合後の表彰式が始まるまでの間、ピッチ上には歓喜の輪を作ってはしゃぐドイツの選手達と、その場で腕を組みながら佇んでいるアルゼンチンの選手達の姿がありました。

 このとき、じっと悔しさを噛み締めているアルゼンチンの選手達の光景に、テレビ解説をしていた岡田武史さんがこんな風に切り出したんです。

「アルゼンチンの選手がじっとドイツを見てますよね。これ、見なきゃいけないんですよ。そして、スタンドにいるアルゼンチンの子どもたちがじっと見て、いつかは・・・とこの悔しさを次に繋げていくんです。これ、目を逸らしてはいけないんですよ」

 あの表彰式の場には、三好康児や板倉滉など準優勝という悔しさを初めて味わった若手もいました。彼らはあの場で目を逸らさずに悔しさを受け止めてくれていたようにも見えました。

 じゃあ、そこからどうすれば良いのか。
それを学ぶことができるのも「敗者の特権」だと岡田監督は言います。

「負けたときこそ、学ぶべきものがありますよ。アルゼンチンは、これをどう考えるのか。メッシに頼ってほぼ2大会ですか・・・決勝までは来れたけど、結果は出せなかった。次ももう一回メッシにかけるのか。それとも、方向転換をするのか。アルゼンチンも考えどころじゃないでしょうか」

 メッシがいてもアルゼンチンはW杯の頂に届きませんでした。それを受けた今のアルゼンチン代表がどう舵を切ったのか・・・は、本題ではないので省きますが、少し振り返ってみると、2005年にJ1に復帰した川崎フロンターレも関塚隆&高畠勉体制に、それまで築いてきたチームのサイクル終焉と一度向き合っています。この時代も攻撃的なチームでしたが、中身は7人で守って3人で攻める形のカウンターサッカーでした。

「右肩上がりでは強くならない。レンガを高く積み上げれば、必ずどこかで崩れる。横に積まなければいけない時がある」とは、南アフリカワールドカップから帰国した際の岡田武史監督の言葉です。

 2011年の相馬直樹監督時代と風間八宏監督が就任してからのしばらくは、このサッカーとは方向の違う攻撃的サッカーを作り上げるための、それこそレンガを横に積み上げていた時期だったと認識しています。大久保嘉人が3年連続得点王に輝き、中村憲剛がJリーグMVPを受賞しましたが、すべてそういう土台と積み上げがあったからだと思っています。

 プロは結果ですから、タイトルに届かなかったことで、「足りなかったもの」が強調されるのは仕方がないところです。ただその一方で、「積み上げてきたもの」もたくさんあった風間監督の4年半だったんじゃないでしょうか。
 
 表彰式の様子を眺めながら、記者席でそんなことをぼんやり考えていました。

では、決勝戦のレビューです。今回のラインナップはこちら。

1.ボールを持っていたのか、それとも持たされていたのか。「途中からは『やらせろ!やらせろ!』という声があがっていた。(ボールを)取れると思わなかったのか、あきらめて引いてやる感じに相手がなっていたと思います」(大島僚太)。リズムを握っていたようで、鹿島にしてやられた前半。

2.徹底した地上戦と、アイディアに溢れる崩しの同点弾。「ハーフタイムに、(相手を)背負っていても当てられるようなら(味方に)当てようという話が出ていた。あのシーンは少しわりとみんなのんびりしていたと思います」(大島僚太)。「ユウさんが良い位置でリョウタくんからボールを引き出してくれて、ああいうイメージでくると感じてました」(三好康児)。堅守・鹿島ゴールをこじあけた、大島僚太の機転とスルーを感じていた三好康児のアシストと、そして小林悠の冷静な一撃。

3.「感覚的には入ったと思ったんですが・・・・もう少しカーブをかけて打てばよかった」(小林悠)。後半に巡ってきた、同じ角度での3度に渡るビッグチャンス。「あれが決まっていれば・・・」と語り継がれるであろう、明暗を分けた決定機を検証する。

4.「チームが苦しいときにゴールを決めるストライカーになれ」。ジュニーニョから小林悠への教え。そして、もしジュニーニョだったら、曽ヶ端準のニアサイドを狙っていたのではないか、という話。

5.試合後の中村憲剛と田坂祐介が語った「ちょっとしたことだけど、すごく大きな差」。120分の死闘に垣間見た、「セカンドチャンス」に対する意識の違い。

6.「俺たちはいまからこうやっていくんだよ、というのを選手はわかってくれた。あの1点はどんな1勝よりも大きかったと思っている」(風間監督)。風間フロンターレ、最初の一歩からの4年半を振り返る雑記。

 以上、6つのポイントです。今回のレビューは冒頭部分も含めて、全部で約12000文字のボリュームとなりました。「1200文字」じゃないですよ?約12000文字です・笑。

風間フロンターレのラストマッチだったので、最後のポイントには、風間フロンターレの4年半にもわたる取材の雑記も書いておきました。ファーストマッチのサンフレッチェ広島戦や解任危機にあった2013年のシーズン序盤の話などは、振り返っていると懐かしかったです。今だから書ける話も書いておりますよ。

 
 どうぞ、よろしくお願いします。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(天皇杯決勝:鹿島アントラーズ戦)

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