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自分たちで持ってきた「流れ」を手放さずに掴み取る。今年の勝利の方程式が、そこにある理由。(リーグ第28節・セレッソ大阪戦:5-1)

 等々力競技場でのセレッソ大阪戦は5-1で勝利。

2位と4位の直接対決。さらにアウェイでは0-2で完敗した相手だっただけに、予想だにしていなかった大差のスコアでの勝利となりました。

 試合開始2時間前。
発表された両チームのスタメン表を眺めていると、セレッソのスタメンにソウザの名前がありません。ソウザはベンチスタートで、スタメンに名を連ねていたのは秋山大地です。

 これは意外でした。
というのも、この試合におけるポイントのひとつが、中村憲剛が「ハンター」と評したソウザと山口蛍のダブルボランチに対して、大島僚太のいない中盤がどうやって剥がしながらバイタルエリアを攻略していくのか、だったからです。

 このボランチの選考について、セレッソのユン・ジョンファン監督は、試合後の会見でこう明かしています。

「今週の一週間の練習で大地(秋山大地)のコンディションが悪くなく、もちろんソウザがすごく悪かったわけではないです。ただ、何かどこか集中できていない姿が見えていた。そこで後半から投入したほうがいいと判断しました」(ユン監督)

 後ろでボールを保持するフロンターレに対して、セレッソの前線の2枚である杉本健勇と山村和也は、前からプレッシングをかけてくるのではなく、中央を閉めるだけでそれほど圧力をかけてきません。ときおり積極的に奪いにきますが、そこにダブルボランチが連動しているわけではないので、フロンターレは後ろだけであっさりと剥がせますし、森谷賢太郎とエドゥアルド・ネットも、中盤で簡単に前を向いてボールを持てます。

 中でもアクセントをつけていたのは、森谷賢太郎です。

杉本健勇と山村和也が「門の役割」をしている風なだけで、それほどボール奪取にハードワークしてこないと見るや、あえて二人の間で受けてドリブルでボールを運んだりします。人はいるものの、守れているようで守れていない門を突破し始めていました。

 そのプレーで思い出したことがあります。それは、試合前に中村憲剛が語っていた森谷のドリブル技術についてです。

「ケンタロウはドリブルもパスも両方やれるタイプ。ドリブルも人を抜くとかじゃなくて、誰もいないところを駆け抜けているイメージがある。運べるときはしっかりと運べるので、リョウタとも違うタイプ。ゲームメークをしっかりしてくれればと思う」

 大島僚太が閉じられている門を強引にすり抜けていくタイプならば、森谷賢太郎は閉じているようで閉じ切れていない瞬間を見逃さずに突破できるタイプだと言えるかもしれません。ここらへんは彼自身の持ち味を出してくれたのだと思います。

 前線二枚を簡単に突破できていたことで、次の局面はセレッソの守備ブロックである〔4-4〕のブロック崩しです。しかしボールを持って押し込んだ展開を続ければ、ブロック崩しはお手の物です。序盤から右サイド攻撃を中心にして流動的になりながら、中村憲剛中心にゴールに迫っていきます。中村憲剛が振り返ります。

「間に顔を出しながらやっていたし、球離れも早かった。(相手の)守備が集結する前にポンポンポンポンと動かせていた。やっていても感触はよかった」

 前節ヴィッセル神戸戦では、ピッチ状態の影響を受けて、ストレスを感じながらのサッカーでした。しかしこの日のフロンターレの選手たちは、まるでその鬱憤を晴らすかのように「サッカー」を楽しんでいましたね。

・・・とまぁ、長々と書いてしまいましたが、ここからがレビューの本題です・笑。なぜスコアでこんなに大差がついたのでしょうか。

今回のラインナップはこちらになります。

1.「あれで流れを作れたかなと思います」(谷口彰悟)、「決めて、自分たちに流れを強引に持ってこれた」(中村憲剛)。自分たちで持ってきた「流れ」を手放さずに掴み取る。今年の勝利の方程式が、そこにある理由。

2.「そこにタニ」ならぬ「上からショウゴ」で、今季6ゴール目。「相手はゾーンだったので、ああいう場面はいけるんじゃないかとケンゴさんとも話していました」(谷口彰悟)。キッカーを変えても決まる、今年のセットプレー。

3.試合後の長谷川竜也に聞きたかったけど聞くわけにもいかなかった、二つの好プレーとは?

4.「そういった人の気持ちもしっかり汲み取って、自分はやろうと思っていた」(長谷川竜也)、「試合前も頑張って欲しいと言ってくれた。そういう思いも汲んでやった」(森谷賢太郎)。タツヤとモリヤ、それぞれの思いを汲んだ両者がピッチで表現したものとは?

5.理想的過ぎる展開だったがゆえに奈良竜樹が感じていた、後半の試合運びの難しさ。そして語った、チームとして前進し続けるための覚悟。「じゃあ、誰がいるのか・・・試合ではそこに目を向けないといけない。いない選手のことを試合中に考えても前に進めない」。

以上5つのポイントで、冒頭部分も含めると全部で約8500文字ぐらいのボリュームになっております。5得点はどれもスーパーゴールでしたが、試合の展開やチーム全体のありかたなど、いろんなエッセンスが詰まっていたようにも思えます。ぜひ読んでみてください。

なお、プレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第28節・セレッソ大阪戦)

では、スタート!

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