見出し画像

左サイドで圧巻の存在感を放ち続けた長谷川竜也と、舵取り役の大島僚太が後半に見せた大胆な位置取り。浦和守備陣を完全攻略して生み出した先制点を読み解く。(リーグ第14節・浦和レッズ戦:1-1)

 等々力競技場での浦和レッズ戦は1-1のドロー。

 54分にレアンドロ・ダミアンのゴールで先制。
長谷川のスピードを減速したカットインに呼応して、内側を縦に抜け出した登里享平の動きで浦和の5バックを完全攻略した、見事なゴールでした。

 そしてリードを奪ってからも、ゲームは川崎フロンターレがコントロール出来ていたと思います。後半に関していえば、こちらの追加点を奪う決定機は3度ほどありましたし、浦和に決定機な場面はほとんど作られていません。90分が過ぎ、あとはタイムアップを迎えるだけでした。しかしラストプレーのコーナーキックで、スクランブルになって失点。

 最後の最後で水を漏らしてしまい、なんとも悔やまれる勝ち点1となりました。

 等々力での取材を終えて帰宅したのは深夜。
すでに日付は変わっていました。なかなか眠れず、早朝4時にはチャンピオンズリーグ決勝のトットナム対リヴァプールがあるので、そのまま起きて過ごすことに。

 試合は決勝戦らしい(?)凡戦でリヴァプールが優勝したのですが、チャンピオンリーグ決勝といえば、今でも語り継がれているゲームがあります。

 それは、2004-05シーズンのACミラン対リヴァプールですね。
アンチェロッティ監督に率いられたACミランは、開始直後にマルディーニの得点などで前半だけでなんと3点のリードを奪って圧倒。誰もがミランの優勝を確信した試合でした。

 しかし後半、リヴァプールが怒涛の猛反撃。3点差を追いつき、PK戦の末に競り勝って優勝を果たすという「イスタンブールの奇跡」を起こします。

 一方、信じられない敗北を目の当たりにしたACミランのアンチェロッティ監督は、この悲劇から学んだこととして、こう語っています。

「サッカーの世界では、ピッチ上での戦いが終わるまで確かなことは何一つない、ということだ」

 これを教訓にしたミランはその2年後、同じ舞台でリヴァプールを下して、欧州王者になっています。

この試合の川崎フロンターレは、何も優勝のかかった試合で負けたわけではありません。リーグ戦はまだ続いていくのですから、この引き分けも経験として生かすことができるわけです。

試合後、攻守両面で圧巻のパフォーマンスを見せた長谷川竜也は、悔しさを噛み締めながらも、前向きな言葉を並べていました。

「悔しい気持ちはありますが、あれを我慢できればもっと強いチームになれる。1-0でも勝ち切れるし、3-0でも4-0でも勝てるチームになっていかないといけないと思います。今日出た課題もしっかりとチームとして突き詰めていきたい」(長谷川竜也)

 では、ここからが本題です・笑。試合を詳しく掘り下げていきます。ラインナップはこちらです。

1.「あとは2トップだったので、ボランチとディフェンスの間に誰かが立ってくれると思っていたところはあります。後半はそこを変えて、自分も入っていくし、アキさん(家長昭博)も入っていくという感じになりました」(大島僚太)。トップ下・脇坂泰斗の不在で生み出せなかった、中央での攻撃のリズム。サイド重視になった前半の攻め筋を検証する。

2.「あそこで必要以上にスピードを上げてしまうと、相手との距離が近くなってしまって、他の選手が見えなくなってしまうんです」(長谷川竜也)。局面突破の仕掛けではなく、周囲を生かすドリブルと判断力を身につけ始めたタツヤ。左サイドで放ち続けた圧巻の存在感と、浦和の5バックを攻略して生み出した先制点を読み解く。

3.「斜めへのボールだったり、そういうところは意識しながらやれてたので」(車屋紳太郎)。車屋紳太郎の右SB起用にあった2トップを生かす攻撃の狙い。そして逃げ切りの難しさを生んだ交代策。

4.何をやってくるかわからないところがあったので、自分たちとしても受けではないが、どうやってくるかなと構えた部分もありました」(大島僚太)。舵取り役の大島僚太が語ったゲームの入り方と進め方。そして得点シーンに象徴される、後半の大胆なポジショニングの理由とは?

5.「簡単にコーナーを与えてしまうというのは、何が起こるかわからない。そういうリスクを避けるためにも、一人一人ができることはあったと感じている」(谷口彰悟)。ラストプレーで溢れ落ちた勝ち点3と、どう向き合うべきか。

以上、5つのポイントで冒頭部分も含めて全部で約12000文字の大ボリュームです。日本代表の日程があるため、Jリーグは中断となります。なので、いつもより多めに回しております(染之助・染太郎的表現)。読み応えがありますから、ぜひ読んでみてくださいね。

なお、プレビューはこちらです。出方の読めない浦和にどう準備しているのかを書いております➡️試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第14節・浦和レッズ戦)

では、レビュースタート!

続きをみるには

残り 10,519字

¥ 300

ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。