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スラムダンクの新装再編版を語る〜第8巻:「彼はすでにゲームを支配している」。流川楓とマイケル・ジョーダンの話。


新装再編版「スラムダンク」を語る。今回は第8巻のレビューです。

 タイトルは「湘北VS.海南大付属1」

#99  王者への挑戦 から #115の湘北のエースまでの17本収録

中身としては、海南大付属の試合開始から前半終了までです。

 表紙の考察からいきましょう。

湘北高校の部室での一コマですね。

 メガネくん、ゴリ、流川、花道、ミッチー、リョータ、ヤスの順番で並んでいて、練習前のひと時といった感じです。ゴリがなにやら花道に小言を言っているような光景なのですが、ちょっと遅刻気味で来て、慌てて着替えているんですかね(想像です)。

 今回の8巻は海南戦の試合描写しかないですから、この本編中の一コマではないですね。花道の髪型から察するに、翔陽戦を終えてから、海南戦を控えた時期の、練習前の部室といったところでしょうか。 

 表紙のメインはメガネくんこと木暮公延っぽいですね。今までメインでは表紙で登場していませんから。

 相変わらず、個性的なTシャツを着ています。
木暮くんといえば、オバQとか猫とかバナナとかワンポイントでイラストされたTシャツを着ていて、密かに話題になっていました。三井のバスケ部襲撃事件のときも、ウサギがプリントされたTシャツを着ていましたからね。ただ物語途中からは無地のTシャツを着るようになっていきました。このTシャツは本編には出てきていないTシャツです。

帯カバーのコメントは「簡単にひねられるような奴らじゃないよ 湘北の連中は」

 翔陽の藤真が口にした言葉です。この後、藤真は「見たくはない・・・海南の勝利も・・・敗北も・・・」と漏らして体育館の前で来て帰ってしまうのですが、後日の海南対陵南はしっかり見ています・笑。

陵南対武里、海南対陵南、湘北対陵南は全部見ているので、ただ単に仙道彰のプレーを見るのがお目当てだったのでしょう。


 王者・海南との前半戦です。
ただこの前半戦は、王者・海南の凄さはあまり描かれていなんですよね。ルーキー・清田信長のダンクが炸裂したぐらいで(ちなみに作中で清田が決めた得点シーンは、いつもダンクシーンだったりします)、キャプテン・牧紳一、3ポイントシューター・神宗一郎はあまり活躍はせず(神は10分ぐらいで交代してずっとベンチ)。

海南の高頭監督が投入した宮益義範の前に、初心者・桜木花道の弱点がこれでもかというぐらいさらけ出してしまったり、負傷交代した赤木不在のインサイド狙いを徹底するなど、海南の常勝メンタリティーは垣間見れますが、どちらかというと、前半は湘北の奮闘ぶりが目立つ展開です。

 中でも圧巻だったのが、流川楓ですね。

赤木が負傷でコートを去った前半、マッチアップした清田信長を圧倒し続け、驚異的な活躍で猛追。

 それを週刊バスケットボールの相田弥生から「プレイが自己中心的」という欠点を指摘されますが、王者・海南大付属をたった一人でねじ伏せてしまった展開に、前半終了後の相田弥生は「彼はすでにゲームを支配している!!」と最大限の賞賛に訂正するほどでした。

 作者の井上先生にとって流川楓というキャラクターが特別なのは、デビューときの作品でも明らかです。デビュー作の「楓パープル」の主人公は北高校2年の流川楓で、他の読み切り「華SHONEN」でも主人公が、集英高校の流川楓だったりします。

 これは何かというと、2008年に発売されたスポルティーバという雑誌で「スラムダンクとマイケルジョーダンの時代」という特集です。そこのインタビューで、井上先生は「一番自然に描けたのは流川」だと話しています。「自分のコアみたいな、頑なさとか信念みたいなものとかそういう部分」で似ているのだと。

 そして流川楓のモデルになっているのは、バスケットボールの神様マイケル・ジョーダンであるのもファンには知られているところです。

例えば再編版1巻で1年生対2・3年チームのゲームがあるのですが、そのときの流川は23番のゲームシャツをわざわざ着用している。23番といえばマイケルジョーダンの番号として有名です。そして試合で左肘のそばにリストバンドも巻くのもジョーダンのスタイル。井上先生が流川をジョーダンと重ねさせようとしているんがうかがいしれます。

 なによりこの海南戦での「彼はすでにゲームを支配している!!」という流川評が、まさにマイケル・ジョーダンそのものなんですね。

ジョーダンもかつては、そのプレースタイルを自己中心的とマスコミに叩かれたものの、チームを勝たせるようになると、そういう批判は一掃されて、「ゲームを支配している」と評されるようになりました。海南戦前半の流川のプレーぶりと、周囲の反応は、マイケル・ジョーダンのエピソードを意識させるものとして描いていますね。

「彼はすでにゲームを支配している!!」・・・最大限の評価です。

 ちなみにこの前半の描写では、流川のレアシーンがあります。

それは何かというと、いつもの試合以上に集中しているはずの流川が、富が丘中の後輩からの声援には「おお あいつら・・」と反応しているんです!!

これはスラムダンクを読み返してみると、このかなり異例なことだと気づきます。親衛隊がどれだけ規模が大きくなっても、試合中の声援にはつねに無反応ですからね。その流川が富が丘中の後輩の声援にはリアクションを取っているんです。

 作中で流川楓の中学時代は、ほとんど語られてません。晴子がいる四中との練習試合で4本のダンクを決めて51点を取ったことや、決勝戦で寝坊で遅刻したことや、あと1年生で入ってきたときから、かなりうまかったことを彩子さんから明かされているぐらいでしょうか(劇場版のストーリーは参考外で)。

 なので詳しいことはわかりませんが、あのリアクションをみるに、流川にとって富が丘中時代は充実していたんでしょうね。レアシーンだったと思います。

では、今回はこのへんで。



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