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この敗戦をどう消化するのか。「残り5試合、自分たちがチャンピオンになるんだという強い気持ちを持って・・・・」。オフ明けに中村憲剛が語ったこと。/ リーグ2nd第12節・大宮アルディージャ戦:2-3)

熊谷スポーツ文化公園陸上競技場での大宮アルディージャ戦は2-3で敗戦。

 大宮の決勝弾が決まった瞬間、ゴール前にいたフロンターレの選手たちがいっせいにピッチに崩れ落ちました。みな体力を限界をすでに超えていたのでしょう。前半途中から10人での戦いでしたし、逆転するまでの80分でエネルギーを使い切ってしまっていても無理はありません。そのぐらい、ギリギリの状態だったのだと思います。

 にしても、悔しい負け方でした。
思い返すと、前半の3-0から後半にひっくり返された2012年のNACK5での天皇杯、試合終盤の残り数分で大逆転されてしまった2014年の等々力でのリーグ戦など・・・・大宮に敗戦するときというのは、なぜか劇的な逆転負けになりがちなんですよね。どれもシーズンワーストとも言える「信じられない負け方」になってしまいます。

 それだけに、「もし、こうしていれば・・・」という思いが、他の試合よりも強くなります。

 この試合でも、「大久保嘉人が退場していなかったら・・・」、「逆転した後の試合運びを、こうしていたら・・・・」と、サッカーに「たられば」や「もし」はないものの、それをいろいろと考えてしまいます。

 プロの将棋では、決着がついた後に「感想戦」というものを行います。
一局(1試合)を振り返って、どの手が良かったのか、あるいはどの手がまずかったのか。お互いに勝敗の分岐点となった局面に手を巻き戻しながら、意見を言い合って検討するのです。

 いわば、棋士による反省会をかねた検証のようなものですが、気になった局面だけを検討して切り上げることもあれば、延々と検討して一時間ぐらいやっていることもあります。どちらかといえば、負けた側が納得するまでやることが多く、それによって、どこが勝負のポイントだったのか、その局面でどう指していれば勝ち目があったのかなど、自分の敗因を把握して持ち帰り、次の対局に生かすわけです。

 その感想戦の中では、別の選択肢を指したことで、実際に進めていた局面(本局といいます)とは方向性がまったく違う将棋になっていた可能性が高いことも明らかになることがあります。ただそうなったらそうなったで、その先の局面を感想戦で、実際の対局のように深く検討することはありません。「それも一局になりますね」と認めて、切り上げてしまうのが常です。

 この大宮戦の試合後、中村憲剛は「大久保嘉人が退場していなかったら・・・」、「逆転した後の試合運びを、こうしていたら・・・・」といった「もし」を踏まえた上で、「それもサッカーですから」と話していました。あの後半残り10分の試合運びについても、「戦い方に関してはすべて結果論。何が正解かはわからない」と口にしています。サッカーでは、将棋と違って局面を巻き戻して検証することはできず、「それも一局」とはなりません。ただ「起きてはいけないけど、起きてしまったことは仕方がない。敗戦を殺すも生かすも自分たち次第」とも言っています。

 では、あの負けをどう生かすべきか。
今回のレビューは、生かすべきポイントを中心に書いてみました。将棋の感想戦のようなイメージを意識してみました。

長々と前書きを書いてしまいましたが、今回のラインナップはこちらです。

1.「未熟さが出てしまった」(田坂祐介)。大久保退場よりも悔やまれる、前半の終わらせ方を検証する。

2.試合終盤に仕留めるはずが、痛恨の逆転負け。今季の勝利の方程式は、なぜ使えなかったのか。

3.「すごいところに飛んだ。自分でもビックリしました」。まさにケンゴラッソ。そして開きがちだった両センターバックの距離を狙っていた中村憲剛の「観察眼」。

4.「他のチームだったら放り込んでくることが多い中、人数をかけて崩しに来た」(車屋紳太郎)。パワープレーではなく、サイドからの地上戦を徹底してきた大宮攻撃陣。耐え続けていた川崎F守備陣に起きていた誤算とは?

5.この敗戦をどう消化するのか。「残り5試合、自分たちがチャンピオンになるんだという強い気持ちを持って・・・・」。オフ明けに中村憲剛が語ったこと。

 ポイントは5つ。冒頭の部分も含めて、約7500文字です。「負けた試合は振り返りたくない」という方は読まなくてよいですが、「この負けをどう生かすべきか」を考えたい人には読んでもらいたい内容にしています。よろしくどうぞー。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ2nd第12節・大宮アルディージャ戦)

では、スタート!

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