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今季J1最多となる200ボールタッチを記録するも、試合運びには「正直言うと、消化不良」と話した中村憲剛。その真意とは?/ ワンポイントレビュー:リーグ2nd第7節・ヴァンフォーレ甲府戦:4-0

 等々力競技場でのヴァンフォーレ甲府戦は、4-0で勝利。

 先制点を取るまでにやや時間がかかっただけで、終わってみれば、力の差をそのままスコアに反映できたと思います。下位にいる甲府を、まるで寄せ付けませんでした。力の差を考えたら、むしろ5-0、6-0にしないといけない試合だったかもしれません。

 チームは年間首位をキープ。「リーグ戦16試合負けなし」、「大久保嘉人のJ1通算170ゴール」、「小林悠の7試合連続ゴール」と明るい見出しが並んでおります。

 どの記録も素晴らしいんですけど、当然ながらすべて「積み重ね」だということです。16試合負けなしは1試合では出来ませんし、J1通算170ゴールも、7試合連続ゴールもこれまで積み重ねてきた結果だということです。

 この「積み重ね」という経験値はとても価値があると思っています。
例えば、今のフロンターレは「目の前の相手に集中すること」が選手達の合言葉にもなっています。

 他の会場の試合結果や相手の動向は気にせず、目の前の相手にまずは自分たちがとにかく集中する。そしていいゲームをして勝っても、すぐに忘れて、切り替えて次の試合にフォーカスする。今のチームにはそういう流れができていると感じます。その結果、負けなしが続いているわけです。

 しかし一度だけ、目の前の相手以外のことを意識してしまった試合がありました。それが1stステージの残り2節の、最下位・アビスパ福岡とのアウェイゲームです。優勝を意識してしまい、前半から浮き足立って2失点。必死の猛攻も、引き分けに終わってしまい、結果的に1stステージ優勝を逃す要因となりました。

 この甲府戦の前に、谷口彰悟は15試合負けなしについて「意識していない」と話していました。実はそれは、あのアビスパ福岡戦での反省があってこそ、だとも明かしています。

「あの(福岡戦の)ゲームを経験したことで、やっぱり自分たちに集中しないといけないんだと思いました。どんなにまわりが騒がしくなっても、サッカーする相手は毎試合毎試合決まっている。その決まっている、見えている相手に対して準備しないといけない。あの試合で、それをチームの全員が再確認したと思います。だから、間違いなく糧になっていますね。そして、みんなが集中してやれているし、良い流れだと思います」

 他のチームに目を向けると、1stステージを優勝して絶賛されていた鹿島は、現在3連敗です。そう考えると、あの福岡戦での引き分けでチームのネジが締め直されたとすれば、あれが良い糧になっているとも言えるはずです。実際、この甲府戦でも「下位に取りこぼす」ことなく、きっちりと勝ち切りました。油断することなく、このまま勝ち続けて欲しいと思います。

 では、ここからはピッチ上のあれこれを。甲府戦の勝因と気になったポイントを語っていきます。ラインナップはこちらです。

1.地上が「渋滞」しているなら、空中を使う。セットプレーの武器になりつつある橋本晃司の2戦連続アシストと、空間を使った中村憲剛の絶妙な浮き球パス。

2.徹底されていた車屋シフトに苦戦した前半。「そこは、これからも相手はやってくるだろうと思っている」(車屋紳太郎)。今後の打開策を語る。

3.今季J1最多となる200ボールタッチを記録するも、試合運びには「正直言うと、消化不良」と話した中村憲剛。その真意とは?

4.宇宙兄弟ならぬ「生え抜き兄弟」。リーグ戦デビューを飾った板倉滉、三好康児と等々力のピッチを噛みしめる。

 以上、4つのポイントです。ポイントは絞りましたが、ボリュームは冒頭の部分も含めて全部で約7000文字です。よろしくどうぞ。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ2nd第7節・ヴァンフォーレ甲府戦)

ではスタート。


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