見出し画像

「去年に戻ったとは思わない。また別の、今年バージョンのフロンターレを見せつつあるかな」(中村憲剛)。リーグ連勝で感じた去年のチームからの成長。そして、そのエッセンスを注入している二つの存在とは?(リーグ第11節・ジュビロ磐田戦:2-0)

 ヤマハスタジアムでのジュビロ磐田戦は2-0で勝利(※写真は去年に撮影したものです)。

 リーグ戦は初の連勝。ACLも含めると3試合連続無失点で3連勝と、ここにきて去年のように勝ち慣れてきた感覚も戻ってきました。

 この試合を見ていて攻守両面で際立っていたのが、阿部浩之の存在です。

自身にとってはリーグ戦2試合連続ゴールとなる先制点もそうですが、個人的に舌を巻いたのが、84分の場面でした。

1-0のリードで迎えた試合終盤、センターサークル付近で味方が奪ったボールを受けた阿部浩之は、そこから中央からゴールに向かうのではなく、あえてぽっかりと空いている左サイドにボールを運んでいったんですよね。

フロンターレのサッカーを見慣れている感覚ならば、高い位置でボールを奪えば、そのままゴールを目指してカウンターです。しかし、阿部はそこであえてテンポをスローダウンさせるわけです。
なぜか。

追加点を狙うのではなく、そこで時間を作って時計の針を進めて勝つためです。何気ない試合運びですが、こういうメッセージをピッチで明確に発せられる選手はフロンターレにはあまりいませんでした。

こうした阿部浩之のプレーについて大島僚太に聞くと、こんな感想を述べてくれました。

「そうですね。フロンターレは3-0にするというところで、阿部ちゃんは1-0でいいと思ってやっている。そういうのは一緒にやっていて感じますね」

 実際のところ、試合終盤の時間帯に阿部が意識していた試合運びとは何だったのか。具体的に言えば、「追加点を狙いにいくのか」、「1-0で守り切るのか」、そこの二択なわけですが、彼は明確に後者の判断だったと言い切っています。

「1-0でいいです。勝てば良いので。3点取れそうなゲームで、3点取りにいくのは良いと思いますけど、磐田戦のように、みんなが重くなって前に出ていけないというときに、1-0でいいやと割り切れる。時間も含めて、自分の仕事を変えたり、判断を変えるのも大事になるので」(阿部浩之)

 つまり、戦況を見極めて、追加点という色気を出さずに勝ち切るほうに舵を切る。ガンバ時代に達成した3冠という経験から裏打ちされた部分もあると思いますが、そこの嗅覚が身についているのかもしれません。そういう隙のない、したたかな試合運びを、プレーで発せられる選手の加入というのは大きかったのではないかと思います。

そんなことも踏まえつつ、チームの現状も盛り込んだ磐田戦のレビューにしてみました。ラインナップはこちら。

1.「いつもとは違うプレイヤーが入っていかないと、相手が崩れないと思ってああいうプレーをしてみました」(エドゥアルド・ネット)。コンパクトな陣形を維持していた磐田守備陣だったからこそ、ネットが見せた効果的な打開策とは?(※5月17日:コメント追記)

2.「去年に戻ったとは思わない。また別の、今年バージョンのフロンターレを見せつつあるかな」(中村憲剛)。リーグ連勝で感じた、去年のチームからの成長。そして、そのエッセンスを注入している二つの存在とは?

3.「ガンバでは普通だったので」。勝つ試合運びをチームにもたらしつつある、阿部浩之の存在。

4.「ゲームに関しては、いつもしっかり俯瞰して、あまり(試合に)入り込まないようにしています。そうしたほうが、全体の流れを見れるのかな」(鬼木監督)。指揮官が心がけているスタンスと、その采配を読み解く。

以上、ポイントは4つですが、約7000文字ほどあります。読み応えは十分だと思います。よろしくどうぞ。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第11節・ジュビロ磐田戦)

では、スタート!

ここから先は

7,263字
この記事のみ ¥ 300

ご覧いただきありがとうございます。いただいたサポートは、継続的な取材活動や、自己投資の費用に使わせてもらいます。