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なぜ家長昭博は1対2でも強引な突破を仕掛けたのか。谷口彰悟の予測と家長昭博の決断と、そして小林悠の強い気持ち。3つが結実して生まれた決勝弾を読み解く。(リーグ第33節・浦和レッズ戦:1-0)

 埼玉スタジアム2002での浦和レッズ戦は1-0で勝利。

 このスタジアムで浦和という相手に勝つことは毎回大変ですが、予想していた以上に厳しい内容になりました。それでも泥臭く勝ち点3をもぎとり、逆転優勝への望みをつなぎました。本当に苦しい試合を勝ちきれる我慢強さが備わってきたと言えます。

 ただ苦戦の原因はなんでしょうか。いろいろな要因がありますが、この日の浦和レッズが、思いの外、フロンターレ対策を徹底してきたことに面をくらった側面はあったと思います。

 まず中盤の心臓である大島僚太とエドゥアルド・ネットには、矢島慎也と長澤和輝がマンマーク気味に張り付きながらタイトに寄せてきました。ACL決勝のタフな試合を経験しているだけあって、浦和の球際も激しかったですね。特に長澤和輝はファウルも辞さないコンタクトでしたし、少しでもフロンターレの中盤のリズムを乱そうとしてきます。トップ下の中村憲剛にはアンカー・遠藤航がついてきます。サイドに展開した時には浦和の両ウィングもしっかりとマーキングしてくるので、うまく展開できません。

 中盤のこの主導権争いはゲームをめぐるポイントになっていて、前半終了までに大島僚太とエドゥアルド・ネットのダブルボランチ、そして矢島慎也と長澤和輝のインサイドハーフコンビという、中盤で激しくマッチアップしていた4人が全員イエローカードをもらっていたほどです。松尾一主審のジャッジの是非はともかく、言い換えれば、それほど真ん中はバチバチと「デュエル」をしていた前半だったとも言えます。

 中央でタイトに来られても、サイドで起点が作れば問題ないのですが、この日の浦和はサイドもマンマークで張り付いてきました。

 具体的には、エウシーニョには高木俊幸が、車屋紳太郎には武藤雄樹のウィングバックが、攻撃参加したサイドバックに対して味方にマークを受け渡さずに、最後までついてきました。

 これだけマンマークをして張りついてきた相手も久しぶりでしょう。極端とも言える浦和のマンマーク戦法に手を焼いたことで、前半はなかなかボールが敵陣の深いエリアまで運ぶことができませんでした。

 では、どうすればよかったか。

 そして後半は具体的にどう改善したのか。


今回のレビューは、そういった視点を中心に書いております。ラインアップはこちらです。

1.「あのワンボランチのところは意識してやっていました」(家長昭博)。攻略ポイントだった遠藤航の両脇にできるエリアをめぐる攻防戦を分析。

2.「数的不利だったが、そういう場面でも仕掛けないといけない。こういう試合展開だとそれが自分の役割だと思っていた」(家長昭博)。なぜ家長は1対2でも強引な突破を仕掛けたのか。谷口の予測と家長の決断と、そして小林の強い気持ち。3つが結実して生まれた決勝弾を読み解く。

3.「相手の守備組織にハマるような攻め方をしてしまった。だから後半の最初の方は、執拗に後ろでウロウロした」(中村憲剛)。後半の中村憲剛が、最終ラインでゲームメークをし始めた理由とは?徹底されていた浦和のマンマーク戦法を逆手に取った、味方に息継ぎをさせるベテランの妙技。

4.谷口彰悟と奈良竜樹のザゲイロコンビが作り出した2つの決定機と、冷静に阻止した1つの決定機。そして72分に受けたカウンターで両者が激昂した、本当の理由とは?5.「ウチらしくはないですけど、しぶとく勝ち点3を取らないといけない状況だった」(谷口彰悟)」、「いろんなことを考えたら、泥臭くても結果をもぎ取ることが最優先。危ないシーンもあったが、みんなでなんとか掴み取れた」(奈良竜樹)。2試合連続無失点の最終ライン。浦和の総攻撃に冷静かつ泥臭い対応でしのげた要因は?

 全部で約9000文字です。もちろん決勝弾の場面も詳しく掘り下げていて、家長昭博に「なぜ1対2でも強引な突破を仕掛ける判断をしたのか」など詳しく聞いております。あとは、そもそも、なんであんなに試合内容が悪かったのか?とモヤモヤしている方にも読んでもらえると幸いです。

なおプレビューはこちらです。→試合をディープに観戦するためのワンポイントプレビュー(リーグ第33節・浦和レッズ戦)

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