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鉄道業界を決算資料から読み解く #20代マーケピザ

決算資料から「今日の鉄道業界」を分析します!

*こちらの記事は#20代マーケピザ 養成所オンラインの9月課題ワークのアウトプットです。

①なぜ鉄道業界を分析するのか

Web制作会社でクライアントワークをしている中でB2C、B2B問わず様々な企業とお仕事をさせて頂く機会があります。(通信、食品、小売、etc...)
そんな中自分の視野を広げる意味でこれまでの業務で関わりがない業界かつ自分の生活に身近な業界を分析したいと通勤の電車内で考えていたところ、「そういえば鉄道会社ってどうやって儲けているのだろう」とふと疑問に感じたので今回のワークのテーマとして選びました!

▼鉄道会社は経営母体によって4つに分けることができる

鉄道会社は経営母体によって、4つのグループに分けることができます。

①日本国有鉄道を起源とする「JRグループ」
②民間企業によって運営される「私鉄」
③地方公営企業や地方自治体が運営する「公営鉄道」
④国や地方自治体と民間が共同運営する「第3セクター鉄道」

参考:リクナビ https://job.rikunabi.com/contents/industry/1026/

多くの人に馴染みがあるのは「JRグループ」と「私鉄」になってくると思います。「公営鉄道」に分類される企業としては東京メトロ(東京地下鉄株式会社:株の53.42%を財務大臣、残りの46.58%を東京都が保有)や都営地下鉄が挙げられ「第3セクター鉄道」にはりんかい線(東京臨海高速鉄道株式会社:東京都、JR東日本、品川区、みずほ銀行他40団体 が主要株主)などが挙げられます。

第3セクター鉄道は地方で採算が取れなくなった鉄道会社がとる形態としてよく見られますが現状はかなり厳しいようです。

今回の分析対象としては株式市場に上場し決算資料を公表している「JRグループ」と「私鉄」にしぼりたいと思います。

▼鉄道業界の勢力図

単純な売上高でランキングにすると下記のようになります。
FireShot Capture 005 - 鉄道業界のランキング、動向などを研究-業界動向サーチ - gyokai-search.com

出典:業界動向SEARCH.COM https://gyokai-search.com/3-train.htm

JRグループが圧倒的に強く、市場の40%以上のシェアを獲得しています。
旧国鉄時代から築いてきた鉄道網を受け継いでいることは市場シェア獲得に大きなアドバンテージを持っていると言えそうです。下記は上位5社の総営業距離を比較した表になりますが、JRグループと私鉄では圧倒的な差があります。

FireShot Capture 007 - 無題のスプレッドシート - Google スプレッドシート - docs.google.com

私鉄で最長総営業距離を誇る近鉄ホールディングスでさえ1位のJR東日本の7%弱に過ぎません。売上高が総営業距離に比例するのであればJR東日本は近鉄の15倍強の売上高を記録するはずですが、もちろんそこまで簡単な計算で売上高がはじき出されることはないので決算書をもとに分析していこうと思います。

分析する企業はJRグループを代表してJR東日本、私鉄上位の近鉄ホールディングス東急電鉄とします。


②企業分析: JR東日本

▼ビジネスモデル・決算概要

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「運輸事業」「流通・サービス事業」「不動産・ホテル事業」「その他」に分けられます。この構図を後ほど取り上げる2社にも共通しており、大手私鉄にも当てはまります。YoYは101.8%と爆発的な伸びはなく、どのビジネスも営業収益、営業利益ともに昨対比で微増となっています。鉄道会社だけあってやはり運輸事業は営業収益の7割弱を占める基幹事業となっていました。

▼運輸事業

売上高が2兆円、利益が3400億円、16%強を誇るJR東日本の稼ぎ頭となる事業になっています。JR各線に加え、東北・山形・秋田・北陸・上越新幹線など長距離路線事業が分類されます。1四半期で2兆円の売上を記録するあたり、事業の規模の大きさを物語っていますね...。
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鉄道の利用料金は移動距離と比例するため、ビジネス構造を因数分解する上で「旅客輸送量」という数値がキーとなります。

旅客輸送量(1人キロ)=旅客数×輸送距離(km)

旅客輸送量をもとに売上高、一人あたりをざっくり方程式にすると

売上高=1人キロあたり運賃×旅客数×輸送距離
1回利用あたり売上=1人キロあたり運賃×輸送距離

となります。
旅客輸送量も決算資料に公表されているので1人キロ当たり運賃を割り出します。画像7

1人キロあたり運賃=1,856.700.000,000(¥)÷137,598,000,000(人キロ)
=13.4936.... ≒¥13.5
1人キロあたり運賃(定期)=506,300,000,000(¥)÷76,092,000,000(人キロ)
=6.6537... ≒¥6.7
1人キロあたり運賃(定期外)=1,350,300,000,000(¥)÷61,506,000,000(人キロ)=21.9539... ≒¥22

したがって乗客1人を1キロ輸送するのに13.5円の売上が生まれていることになります。割引のされる定期よりも定期外のほうが1人キロあたりの運賃が約3.3倍高いことがわかります。

総旅客数が公表されていないため利用者1人あたりの売上まで算出することはできませんが、運輸事業では①定期外利用の利用者数増加させる②定期外利用者の利用頻度or利用距離を増加させる③運賃を増加させることが売上を伸ばす近道であるこがわかりました。

▼流通・サービス事業

JR東日本が指す「流通サービス事業」はエキナカ事業(ecute、キオスクなど)、広告業(JR東日本企画)、住宅分業事業、スポーツ・レジャー事業、物販事業を指します。

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利益率は7.6%となっています。

▼不動産・ホテル事業

主に「アトレ」「ルミネ」などショッピング施設、ホテル事業です。

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利益率は23.7%と利益の出やすい事業のようです。

▼その他
主にシステムやSuica事業です。YoY120.5%とAクラス成長を実現しています。利益率は29.1%。

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IT・Suica事業においてもYoY111%とJR東日本の事業の中で数少ない成長フェーズにある事業になっています。


③企業分析: 近鉄ホールディングス

▼ビジネスモデル・決算概要

全体の数値を見るとYoYは101%とほぼ前年度と同じ売上高を記録しています。内訳を見るとJR東日本と一転して、運輸事業は全体の18%に過ぎず、ホテル・レジャー事業(39.1%)と流通事業(32.4%)が基幹事業となっています。

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▼運輸事業
運輸事業は利益率12.7%を記録しているもののYoYは99.4%と昨対比で売上が減少しています。

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輸送人員が決算資料に記載があるのでユーザ一人あたりの売上を算出します。

ユーザー一人あたり売上=営業収益÷輸送人員=¥272
ユーザー一人あたり売上(定期)=¥139
ユーザー一人あたり売上(定期外)=¥433

JR東日本と純粋な比較は難しいものの、定期と定期外の売上効率はおよそ3倍の開きがある点は共通しています。


▼流通・サービス事業

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百貨店事業は増益、ストア・飲食事業は減収減益となっています。
流通事業全体で利益率は1.7%と、小売ビジネスで高い利益を出すのが難しいことがわかります。

▼ホテル・レジャー事業

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旅行代理店事業(近畿日本ツーリスト)の他、水族館事業(海遊館)やホテル事業が主な事業となっています。営業収益は概ね増加しているものの減益となっている事業が目立ちます。

④企業分析:東急電鉄

▼ビジネスモデル・決算概要
全体のYoYは101.7%と他2社と同じような数値を記録しています。
売上の内訳を見ると運輸事業は全体の18.4%、生活サービス事業が60.4%(リテール事業41.3%、ICTメディア19.1%)、不動産事業が17.6%となっていました。東急といえば渋谷の再開発のイメージが強かったのでリテール事業がメインの収益源だったのが個人的には驚きです。

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▼運輸事業(交通事業)

YoYは101.1%と増加。輸送人員の増加に伴い収入も増加しているようです。利益率は13.6%と他社と同じ水準になっています。

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輸送人員の記載があったので一人当たりの売上を算出します。

ユーザー一人あたり売上=営業収益÷輸送人員=¥118
ユーザー一人あたり売上(定期)=¥89
ユーザー一人あたり売上(定期外)=¥163

近鉄と比べるとユーザー一売上がかなり少ないことがわかります。
近鉄の総営業距離数が東急の5倍以上であることなどが起因しているようです。

▼生活サービス事業

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稼ぎ頭のリテール事業のYoYは99.5%と若干の減、また利益率が1.2%と旨味のある事業でないことがわかります。

⑤まとめ 考察

分析してみて大手鉄道会社は本当に幅広い事業を展開していることを痛感しました。また広大な路線ネットワークを保有するJRグループではない大手私鉄に関しては鉄道以外の関連事業が主な収益源となっていました。(鉄道事業に関してはビジネス構造に大きな差異はありませんでした。)

今回分析した3社の主事業に関しては成長率の点では優れている事業は少なく、中長期的に見た場合新たな事業を起こす必要があると言えそうです。さらに主事業となっている小売や不動産事業に関しても外部要因による驚異を受けやすいものと見られ抜本的な改革が必要と思われます。

日本の交通インフラとして絶対的な地位を築いている鉄道業界でも、健全な経営を継続するためには5年後、10年後のトレンドを見据えて事業計画を練る必要があるのではないか、と分析を終えて感じています。

▼参考資料

▼課題詳細


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Taiga Ishikawa

都内Web制作ベンチャーに勤務するディレクター1年目。#UX #デザイン思考 #マーケティング #デジタルマーケティング #Web制作 #マーケティング #20代マーケピザ 養成所オンラインメンバー

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