伊敷 豊 (オンリーワンマーケティング代表 沖縄国際大産業総合研究所特別研究員)

ブランド心理専門家、マーケティングコンサルタント、沖縄国際大学総合研究所特別研究員 著…

伊敷 豊 (オンリーワンマーケティング代表 沖縄国際大産業総合研究所特別研究員)

ブランド心理専門家、マーケティングコンサルタント、沖縄国際大学総合研究所特別研究員 著書『新さんまさん論』『鈴木敏文がやっているお客様心理の読み方』『サムスンに学ぶな!』『沖縄オンリーワン企業』『沖縄に学ぶ成功の法則』等。

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宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載9(最終)】

7.「宮崎は一つ」生産者、JA、県が組織的にブランド構築 沖縄も宮崎もマンゴー栽培はJA、県が最初から指導して導入されたものではなく生産農家がマンゴー栽培を導入している。 ただ、沖縄と宮崎の大きな違いは、宮崎県の場合は早い段階で生産者だけなくJA、県も加わり統合、組織的にブランド構築を推進したことある。マンゴー産地として宮崎は後発だがブランド構築への取組、ブランド戦略は沖縄より進んでいる。ブランド戦略の先進地といえる。 成都市生産農家8戸でハウスマンゴー部会が結成されマ

    • 宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載8】

      6.加温栽培による早期出荷でギフト市場取込む 宮崎県はマンゴー加温栽培では全国一の生産量。沖縄県は亜熱帯なので、気温が高くビニールハウスでの栽培でも雨風を防ぐことが目的でハウス内を加温する栽培方法はしていない。 宮崎産マンゴーの特徴は、加温栽培による早期出荷にある。加温栽培をしない沖縄産マンゴーの出荷は7月~8月。沖縄県内各地のファーマーズではその時期になると大量に出荷されマンゴー一色になる。宮崎産マンゴーも7月~8月に出荷すれば沖縄産マンゴーとの競争になり、マンゴー取扱

      • 宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載7】

        5.東国原知事トップセールスで「太陽のタマゴ」全国区に テレビタレント「そのまんま東」こと東国原英夫氏が2007年(平成19年)1月に宮崎県知事選挙に出馬し当選。当時日本一有名なタレント知事が誕生したことで宮崎産マンゴーがクローズアップされ、生産農家や関係者が予想もできない事態へ急展開した。 当時、宮崎産マンゴーは東京都中央卸売市場での取引は増えていたものの、宮崎産マンゴーの認知度は沖縄産マンゴーより低かった。知名度が高くメジャーだったのは、生産量日本一で価格が安く、市場

        • 宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載6】

          4.「太陽のタマゴ」ネーミング商標登録 「太陽のタマゴ」の商標登録日は、1999年(平成11年)7月23日。商標登録出願日は、1998年(平成10年)4月15日。商標権利者は「宮崎県経済農業協同組合連合会」となっている。 宮崎産マンゴー栽培開始は1985年、初出荷は1988年。1998年に出願しており、宮崎県では栽培開始からわずか十年余りで県産マンゴーのブランド化を図ろうとしていることがよく分る。 沖縄産マンゴーのブランド名「美らマンゴー」の商標登録日は2012(平成24年

        宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載9(最終)】

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        • 失敗してもええんやでぇ
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          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載5】

          3.糖度15度以上、一玉350g以上の独自基準3)「太陽のタマゴ」効果で宮崎産マンゴーも品質が高いと評価 厳しいブランド認証基準による高級ブランド化は副次的効果を生む。ブランド認証からはじかれた宮崎産マンゴーにとっても「太陽のタマゴ」ブランド認証はメリットが大きい。 宮崎産マンゴーの内、「太陽のタマゴ」ブランド認証を得られるのは限られている。つまり供給が少ない。「太陽のタマゴ」の認知度が上がれば上がるほど需要は拡大する。 「太陽のタマゴ」は希少性が高くなり常に品薄状態に

          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載4】

          3.糖度15度以上、一玉350g以上の独自基準2)高級ブランドで重要な「価格」 特に高級ブランドで重要なのは「価格」だ。 価格は、商品に付与されるもので原価、コスト、利益を積み上げて決定されるのが価格だと考えている人が多い。 価格には「価格心理効果」がある。誤解を恐れずに言えば「価格」が人の心理に影響を与えるインパクトは「品質」「こだわり」より大きい。なぜなら「価格」は非常に分かりやすいからだ。 高級品に関して価格が如何に重要な要素であるのか事例を紹介したい。米国のあ

          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載3】

          3.糖度15度以上、一玉350g以上の独自基準 1)ブランド基準が生んだ「希少性」「価格高騰」「品質評価上昇」完熟マンゴー収穫ネットもブランドの一つの要素だが、宮崎産マンゴーのブランドを決定づけたのは、非常に高い「太陽のタマゴ」ブランド認証基準を1998年に決めたことにある。 【太陽のタマゴ・ブランド認証基準】 ◎自然に落果するまで樹上で完熟させた、特に食味、外観の優れた果実 ◎経済連が定める県統一基準を満たす果実   ・品位「青秀」以上   ・階級「2L」以上   ・糖

          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載3】

          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載2】

          2.完熟マンゴーをキャッチするネット収穫方式開発 樹上で8~9割熟したものを剪定収穫する沖縄産マンゴーとは違う宮崎産マンゴーの独自性が「樹上で完熟するマンゴー」というアイデアだった。 ただ「樹上で完熟するマンゴー」の最大の欠点は自然落果しマンゴーの果皮に傷がつくこと。落果し果皮に傷が付けば贈答用果物としての商品価値が下がる。 JA西都の技術員・楯彰一氏は樹上から自然落果する完熟マンゴーをキャッチする方法としてクリなどを入れる果物用ネットの活用を思いつく。アイデアは良かっ

          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載2】

          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載1】

          マンゴーと言えば「太陽のタマゴ」宮崎産マンゴーと想起してしまう。もちろん沖縄産マンゴーも美味しいという人もいるが、ブランドイメージが高いのは「宮崎産」に落ち着く。 実は約30年前、宮崎産マンゴーは売れなかった。東京中央卸売市場で相手にしてもらえなかった。それがトップブランドになった。 マンゴー生産量日本一は沖縄で約2000トン(宮崎は沖縄の約半分)。沖縄は国産マンゴー発祥の地で明治初期に栽培が確認されている。 東京中央卸売市場における宮崎産マンゴーと沖縄産マンゴー1㎏の

          宮崎産マンゴーがトップブランドになった理由【連載1】

          ラスベガス脱カジノ、カジノは斜陽産業

          カジノ誘致本格化。 米不動産開発大手のラッシュ・ストリート(イリノイ州)は北海道苫小牧市に事業所を開設。苫小牧がIR候補地として承認され次第、正式に申請する。 カジノやホテル、商業施設などが入居する複合施設を建設し、最大で年間26億ドル(約3000億円)の売上高を見込む。 カジノを誘致すれば外国人観光客が増え、経済浮揚の起爆剤として期待できるのか? 元マッキンゼー日本支社長・大前研一氏は「SAPIO 7・8月号」で「カジノ問題の本質は依存症対策ではなくカジノは斜陽産業

          出版不況の元凶は「配本制度」

          文化通信社専務取締役の星野渉氏は「日本の書店がどんどん潰れていく本当の理由」(東洋経済)として3つあげている。 ①雑誌市場縮小 ②20~25%程度と低い粗利益率 ③配本制度 元凶は、書店へ「配本制度」だろう。 出版社、取次、書店にとって「楽ちん」な制度でもあった。 出版社は、ある程度発行部数が読める。 取次は、書店を配下におくことで流通を支配できる。 書店は、在庫リスクがなく何も考えないでも取次が配本してくれる。 「配本制度」は、極端に言えば「楽ちんで考えない」

          ゴーンの私物化ゆるしたマクロン大統領

          カルロス・ゴーン氏逮捕、拘束など東京地検特捜部に対し批判もあるが、もっと大局を見るべきだ。 ゴーン氏が、日産を独裁化、私物化したことには間違いない。 莫大な報酬を得るための様々な隠蔽工作は、メディアで連日報道されているので言及しないが…。 ゴーン氏を一言で例えると「自分ファーストのコストカッター経営者」ということに尽きる。 「自分ファーストのコストカッター経営者」を野放しにしたのは、マクロン大統領だ。 ロイターの「ルノー日産連合の危機、元凶はマクロン大統領の介入主義

          失敗してもええんやでぇ【連載1】

          テレビバラエティ番組に大阪堺市の中小企業の「大失敗賞」が放映されていた。 太陽パーツ「大失敗賞」。 調べてみるとビジネス誌に取り上げられているじゃないですか。 すばらしい賞に感銘したのは、失敗を表彰していることです。 失敗した社員を表彰するとは、なんと画期的! 失敗は企業にとって悪。 そりゃそうですよね。失敗を恐れている企業がたくさんあります。 ただ、企業が何か新規事業をする場合や新商品を開発する時は、リスクを負います。優秀な社員が担当しても成功する確率は高くてもやはり失

          ゴーン逮捕は日産経営陣の反旗か

          カルロス・ゴーン日産会長、グレッグ・ケリー代表取締役が逮捕された。 容疑は、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)。自宅の購入代金数十億円などを同社側に全額負担させ、報酬として計上していない疑いがあるという。 今回のゴーン氏逮捕は、私的流用、不正を明らかにするためではあるが、 おそらくルノー隷属化を急ぐゴーン氏に対し、日産経営陣が反旗を翻したのだろう。 ●「ゴーン氏は辞めるべきだ」と、2013年11月7日の私のブログにも書いた。 http://onlyone

          MVNO=格安→MVNO=ニッチサービス

          政府も総務省も携帯利用料金の引き下げに一生懸命だ。総務省が力を入れているのが中古スマートフォン(スマホ)の普及促進。 中古スマホ普及促進→仮想移動体通信事業者(MVNO)格安通信サービス拡大→携帯利用料金の低減 携帯電話市場でのMVNOシェアは10%。MVNOは今後も伸びると思われる。 MVNOシェア拡大し、携帯利用料金が下がるのは確かに利用者にとっても有難いが、どうも政府も総務省も利用者不在の議論が先行しているのではないだろうか? さて、中古スマホはどれくらい普及す

          翁長知事、日本人のアイデンティティ問い続けた

          3万5000人が集結した「戦後70年止めよう辺野古新基地建設!沖縄県民大会」(2015年5月)で翁長雄志沖縄県知事はあいさつの最後を次の言葉で締めくくった。 「うちなーちゅ、うしぇーてぇーないびらんどー」 (沖縄の人をないがしろにしてはいけませんよ)『戦う民意』 本土の人からすると翁長知事があいさつで述べた琉球方言は、外国語のような印象かもしれない。が、琉球方言はれっきとした日本語の方言なのだ。 言語学者として世界的に著名な服部史郎博士(一九〇八~一九九五年)は、『日本