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杉田庄一ノート100 「海軍少年飛行兵」(朝日新聞社)…その1 グラビア写真

ヤフーオークションで見つけて、すぐ落札。昭和19年の発行である。「愛知県塩津海洋道場之印」が押してある。「海洋道場」は地方海軍人事部が関与して全国各地で海洋訓練を実施した常設機関。おそらく日本海軍が、少年飛行兵を大量に募集するために作成し、全国の関連施設や教育機関に配布したものであろう。当時の本としては驚くほどたくさんの写真が掲載されている。写真ページは別に製版しなければならなかった時代である。相当、高額な本になったはずだ。

内容は、海軍少年飛行兵を目指す少年へのガイドブック的な内容になっている。
全282ページで、グラビア写真と中綴じ写真が充実しており、入隊までの準備が細かく書かれていたり、附録として海軍少年飛行兵実戦記が載っていたり、大変充実して読み応えのあるものである。模擬試験問題まで載っている。

まずは写真を転載してみる。すでに著作権はなくなっているはず。

機上に微笑む海の若鷲


上 希望に胸ふくらませて晴れの入隊
下 入隊第一夜 釣り床に通うは故郷の夢か憧憬の空飛ぶ夢か


上 御製奉唱の聖なる朝のひととき
下 歩調をそろえて軍歌の練習


上 整備講堂で講義を聴く
下 日頃練磨の腕を示す試し斬り


陸戦訓練 次第に娑婆気も抜けて軍人らしくなる


上 鉄棒に躰を練る
下 心身の力をこめて徒手体操


予科練魂を鍛える漕艇訓練


薫風を切って帆走訓練


上 その広さ正に世界一 千百畳敷きの大剣道場で武技を練る
下 気合いも鋭く銃剣術の稽古


上 技よりも意気と力 天下無敵の予科連ラグビー
下 四股を踏んで 相撲の激しい稽古も海軍独特の伝統だ


航海や航空中航法の基礎として大切な天則を学ぶ


適性飛行を前に教官から操縦要領を教わる


飛行兵としての基礎ができると予科練に別れを告げて
飛行練習生徒なり兄鷲から飛行術を教わる


機上における射撃訓練


艦務実習 嚠喨(りゅうりょう)たるラッパの音とともに軍艦旗はあがる


訓練の合間に草花の手入れ


上 さあ酒保が開かれた 汁粉もうどんも温かい煙をたてて待っている
下 潜水艦並みの追加食一日四千カロリーは訓練の猛烈さを偲ばせる


立派な兵舎前で午後の家業はじめを待機する


一日のもう訓練を終えて楽しい夕の憩い


外出の楽しみはクラブの団欒だ
おばさんの心づくしの薩摩芋に舌鼓を打つ
上 畳の感触もなつかしいクラブの一日
下 いづれ劣らぬ力自慢 忽ち腕相撲が展開される


上 楽しい日曜外出 手に手にお弁当持って外出の注意を聴く
下 堂々隊伍ををくんで正門を出ず
日曜の外出にもまず神社に詣って心を練る


予科練生の生活が分かる写真が満載である。杉田が予科練を過ごした時は、この2年前だ。ほぼ同じような生活を送ったのであろう。

昭和19年にこの本を読んで志願した予科練生は、ほとんどが飛行機にのることなく特攻兵器の搭乗員として訓練を行うことになったはずだ。

そして、モデルとなったのが昭和18年の予科練生であるとすると、その多くが特攻で出撃していることになる。



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