カラス2

石王英臣と高島平のカラス

これは、僕が実際に体験した出来事です。

僕は平成9年に就職して、初めての一人暮らしをする事にしました。
就職した会社が東京都の高島平にあったので、不動産屋で物件を探し、職場から徒歩5分というロフトつきワンルームのアパートを借りました。

高島平のアパートでの一人暮らしは2年と少しだったのですが、その中でハッキリと覚えている金縛りの体験があります。

時間は昼間。夜勤明けで寝ていた時の事です。

気がつくと、僕は金縛りにあっていました。
金縛りの体験は高校生の頃から何度かあったので、その時も

あ、金縛りだ。

とぼんやりした頭で考えていました。

不思議と、その時の金縛りに恐怖はありませんでした。

金縛りで体は動かないのですが、目は開きます。
僕はなんとなく、天井を眺めました。

すると、そこにカラスが見えたのです。

当時のワンルームはロフトが高い位置にあるアパートで、部屋の天井には天窓がありました。その天窓から、カラスが僕を覗いているのです。

僕は

ああ。天窓が開いてるな。雨が降ったら困るな。

ぐらいにしか思いませんでした。

そして、夜勤明けの睡魔に負けて、そのまま眠ってしまいました。

しかし、目が覚めてから確認したのですが、天井の天窓は閉まっていました。
というより、天窓はロフトから手を伸ばしても届かない位置にあり、多分僕はその天窓を一人暮らしの間に開けたことは無いと思います。

少し奇妙だなと思いましたが、僕は特に恐怖を感じなかったので、その事はすぐに忘れてしまいました。

忘れていた金縛りの体験を思い出したのは、友人がきっかけでした。

当時からの友人に竹内健二さんという人がいます。
僕より1つ年上で、学生時代のアルバイト先で知り合ったオタク仲間です。

その竹内さんと話をしていた時の事です。

石王君の部屋で金縛りにあっちゃってさ、天井からカラスに見おろされたよ。

竹内さんは、そう言ったのです。

それは、僕の仕事中に竹内さんを部屋に泊まらせた時の事だそうです。

竹内さんの話はこうです。

僕が昼間の勤務の日、竹内さんは僕の家に泊まりに来てのんびり眠っていました。

当時、僕はよく友人を自分の部屋に泊めて仕事に行くことがありました。初めての一人暮らしで自分の城を手に入れた優越感がそうさせていたのかもしれません。とにかく、当時の僕の部屋にはよく友人が泊まりに来ていました。

竹内さんが金縛りにあったのは、そんなある日の僕の部屋でした。

僕の部屋で金縛りにあった竹内さんは、天井の天窓からカラスが自分を見おろしているのを見たと言うのです。

この話を聞いた時、僕は凄いなと思いました。

僕は、自分が金縛りにあってカラスを見た事を誰にも話していませんでした。
なのに、竹内さんは僕の部屋で全く同じ体験をしていたのです。

こんな偶然は無いので、僕は竹内さんが金縛りとカラスの話をしてくれたのをよく覚えています。

僕と竹内さんが高島平のアパートで金縛りを体験してカラスを目撃したのは、偶然だったのでしょうか?


そして現在。僕はこの話をネットで公開するにあたって、竹内さんの名前を実名で公開させて欲しいと思い、電話で確認を取りました。

竹内さんはその時の事を覚えていて、実名での公開にも快く応じてくれました。

しかし、1つだけ、竹内さんは気になる事を言いました。

あの時見たのってさ、カラスじゃなくて人の顔だったかもしれない。

人の顔?その話は初めて聞きました。

竹内さんも15年以上前の出来事なので記憶が曖昧だと言っていましたが、あの時に見たのはカラスじゃなくて人の顔だったかも・・・と言うのです。

果たして、竹内さんが記憶違いをしているのでしょうか?

それとも・・・。

結局、竹内さんが見たものがカラスだったのか人の顔だったのかは分かりません。

それでも、僕と竹内さんは同じ部屋で金縛りにあって、何かを見たのです。

あの時見たものはなんだったのか?

今となっては確認する事も出来ませんが・・・。

2017年6月30日 石王英臣 協力:竹内健二さん

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