ISHIYA私観「平成ハードコア史」〜#16 我殺/LSD Drums 鈴木立

 2019年の今年、平成という時代に終止符が打たれた。

 1989年から始まった平成だが、昭和からパンクシーンにどっぷりと浸かった俺は、昭和も終わりを迎える頃にDEATH SIDEというバンドでライブ活動やレコード発売が活発になって行った。

 自身の活動を踏まえた上で考えてみると、平成という時代が人生のメインとなる活動時期だったと感じ、私観ではあるがその歴史を書き留めておこうと思い筆を取った。

 これから連載をしていこうと思っているこのコラムでは、全くと言っていい「極私観」に基づくものであり、俯瞰の要素からはかけ離れているだろう。

 しかし、平成のアンダーグラウンド・ハードコア・パンクシーンを体験し続けてきた俺の記憶に興味のある方であれば、興味深い話があるはずだ。

 今まで世に出ていないこともたくさん出てくるはずだと思うし、こんな世界が世の中にはあるんだと、少しでも興味を持ってもらえれば、俺が人生を賭けてやってきたことも報われる。

 売文を生業としているのでこのコラムに関しては有料とさせてもらうが、興味がある人は是非このコラムを購読してほしい。

 今後このコラムを読んで、様々なバンドに親しみが湧く人間もいるだろう。しかし、自分が体験したことでもないことで、馴れ馴れしくバンドに知ったかぶりをして話しかけても自己責任なので気をつけることを忠告しておく。

 昭和のハードコア・パンクの先輩たちがそうであったように、一旦中に入れば信じられないほどの優しさを見せてくれる日本のハードコア・パンクの人間たちだが、その壁は厚く高い場合があることを認識してほしい。
 そうでなくては、このコラムを続けることができなくなるかもしれない。


「#16  我殺/LSD Drums 鈴木立」

 当時パンクファッションなんてものをしている人間は、原宿や渋谷などに行かないと会うことができなかったのだが、俺が高校に入ってからパンクファッションをして地元の街をふらふらあるいていると、ガキのころからやらされていたボーイスカウトで、顔だけは知っている先輩がいきなり声をかけてきた。

「お前パンク好きなの?」

「はい。ハードコアですけどね」

 どうせ地元の音楽好きがいつものように、ピストルズあたりを知ってるから声をかけてきたんだろうと思って答えた。

「どんなバンド好きなの?」

「わかんないと思いますよ」

「いいから言ってみな」

 ニヤニヤしながらさらに追求してくる。

「DISCHARGEとかCHAOS U.KとかEXPLOITEDとかCRASSとかGISMとかCOMESとか」

 絶対に知らないだろうと思い、多少馬鹿にしたような態度で日本のバンドも口に出してみた。するとその先輩は驚愕することを喋り始めた。

「GISMとかCOMESも知ってんのか。一緒にGIGに出てるLSDって知ってるか?俺そこでドラムやってるんだけど観たことねぇか?」

 これが2019年5月7日に他界してしまった我殺、LSDのドラムの鈴木立君だった。

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30年以上に渡るバンド活動とモヒカンの髪型も今年で35年目。音楽での表現以外に、日本や海外、様々な場所での演奏経験や、10代から社会をドロップアウトした視点の文章を雑誌やWEBで執筆中。興味があれば是非サポートを!