『悪童日記』original title : LE GRAND CAHIER,English title: The Notebook

  『悪童日記』、世界を変えるような傑作だと聞いていましたが、今回の映画で初めて見、聞きしにまさるすごい作品だと思いました。なんでこんな話がこの世に生まれてきちゃったのか……。一度知った人をつかんで離しませんね。

 ハンガリーはハンガリー動乱(1956年、ハンガリーの民主化運動にソ連軍が侵攻、鎮圧した事件)で民主化の芽が早く詰まれたため、その後の民主化が遅れた国(ブダペストって、ドナウの真珠と呼ばれるだけあって本当にきれいな街です)。そのハンガリーを当時夫と乳飲み子とともに逃げたアゴタ・クリストフが、1990年なかばになってフランス語で書いた物語が40 ヶ国語に翻訳される世界的ベストセラーとなる。

 文学ってこういうものなんだと圧倒される。ノンフィクションでは描けない、だからこそ真実をえぐる世界。人の弱さと残酷さ。主人公が双子だという設定も奇妙であり(『コインロッカーベイビーズ』ってこれですね、コインロッカーベイビーズのほうが先に出たんですね)、だからこそ味わい深い。自分は自分の中の自分を愛するという、すんごいわかりやすい視覚化。

 一心同体だったふたりが最後にする選択では、自分の身も引き裂かれるような、でも清々しいような、こちらにもたらす心の動きの激しさに、ただただ敬服。

 この映画の成否って主人公の双子のキャスティングなんですが、これがもう奇跡。ハンガリー中の学校に電話して双子を紹介してもらい、その中から面接したとか。半年後見つかったジューマント兄弟が、『太陽がいっぱい』のアラン・ドロンを15年若くしたような、憂いと暴力性を秘めた超美形、それもふたりいる。彼ら自身、ハンガリーの超貧村に生まれ、しかも家庭の問題で、家族と離れて暮らしているという。(続編への出演を熱望しているそうで、楽しみです)

 なんだか美少年って顔だけ見てこっちは無責任にぼーっとなればいいだけですけど、こんなバックグラウンドを持ってるのかな、って、やるせなくなった。トップモデル業界にも東欧とかロシアから来た人たちが男女問わずたくさんいますが、こんなハングリーなところから美しい姿形だけをたのみにやってくるのでしょうかね。だったら、日本で謎のアラフィフ美女に「グッドルッキングなガイ」としてお仕えするぐらい、なんでもないだろうな、とかね。

公式サイト http://akudou-movie.com/

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