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#24日目 : 皿と血

2016年3月、東京・目黒の金柑画廊で行なわれた造形作家TAKAGI KAORUのライブに参加した。ギャラリー内に展示されているKAORUさんの作品の中から好きな器を選んで、用意された色とりどりの食材を使って器に絵を描いてみる。展示されている値付けられているたくさんの器の中から、割らないようにドキドキしつつ好きなひと皿を選んだ。KAORUさんはカラフルな野菜を刻んだり、生クリームを泡立て、ギャラリーオーナーの京子さんは何やらココットでグツグツ煮物をし始めた。


小さい頃から「食べ物で遊んではいけません!」と言われてきたけど、この日ばかりは食べ物を絵の具にして器の上に絵を描いてみた。すると、最終的には見たことないマチエールを重ねた立体作品のようなものが出来上がった。完成した自分の作品と、用意されたお肉の一皿をみんなで食べた。途中、夢中になって色と形だけで食材を選んで砂糖も香辛料もごちゃ混ぜになってたから、食べられるのかコレ・・と思ったけど、案外美味しかったです。

その時KAORUさんが「みんなが食べ終わった後の私の器の写真を撮って、今度本を出すねん」と言っていた。その本が今年、出版された。タイトルは「皿と血」。表紙に陶片のおまけがついた(ひとつ一つ違うそう)、美しい装丁の一冊です。詳細はこちら↓

絶頂。
私が制作していく過程で迎える絶頂は何度かあるが、
最後の最後にやってくる最大の絶頂とは
人が私の作品で食事を終えた後の状態を見た時である。
食べ終えた皿がそこにあるという事は、確実に誰かしらが
エネルギー摂取をしたということであり、エネルギーを摂取した人間の
次への行動はエネルギー放出である。
そして、そのことに私の作品である皿が道具として関わった。
一般には「汚れた」と言うのであろうその皿を見ると
確実に約束された人間の未来への希望の証を見たように思うのである。

KAORUさんという人は、この文から感じられるように、竹割ったように真っ直ぐな、そして土にものすごいエネルギーを込めて造形を生み出す人である。「作品は嘘をつけない」とはいつか彼女が言っていた言葉であり、私が初めて油絵を描き始めた10代の頃から、恩師にしつこく言われ続けてきた言葉でもある。一事が万事、その人の考え方なり生き方なりは否が応でも色や形やテクスチャーとなって表現に反映されるし、だから面白い。この本のKAORUさんの言葉や写真に触れて、彼女が普段どんなメッセージを土に込め、そして焼き上がったオブジェがライブを通して生きた人間との化学反応をすること自体に意味が付与される。その過程を肌に感じることができた。いつだって、この人は私たちが想像できる世界を超えるものを見せてくれる。


 横浜・日吉の静かな住宅地の中にKAORUさんの器 Wo ski Ribenren のプレスルームとして、器で食事ができる「ひととき」という素敵な空間があります。

ひとときでの食事はどれも美味しく、思いがけない景色に出会える、どこでもドアがあったら行きたい場所のひとつです。ぜひ一度行ってみてください。

Joyeux Noël et bonnes fêtes de fin d'année à tous !    


 

  

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