見出し画像

最小限のコミュニティ

先週から、2回目のロックダウン中のフランス。とは言え今回は、レストランなど一部のサービスは停止しているものの、様々な許可条件を理由に人々は普通に外に出ているし、春に比べるとかなりゆるゆるで、ロックダウンの意味とは・・?という微妙な状況。

私は前回のロックダウンの後、パリ東側の郊外に引っ越した。フランスの夏は夜10時ごろまで明るい。9月頃までは毎晩テラスで晩御飯を食べ、コンポストでできた堆肥で野菜を育てたり、七輪でトウモロコシを焼いたり、街に繰り出さなくても、小さな範囲で新しい楽しみを見つけて過ごすことができるようになった。色々ご縁があり、猫のゼナさんも我が家の一員に加わった。

画像1

フランスに来てこの秋で丸4年になる。高校卒業と同時に実家を出たので、親元で暮らしていた時間と、独立して暮らすようになった時間がほぼ同じになった。これまで10回以上引っ越して、京都、大阪、東京、フランスと生活の場所は移り変わり、その時々で自分が良いと思う住空間をこしらえ、良いと思う習慣や工夫を取り入れたり、削ったりしてきた。だけど今年、庭で小さな畑を耕すようになって、ようやく初めて"住まう"ことの実感値を持ち始めたような気がしている。

野菜作りだけでなく、庭仕事は始めだすときりがない。今住んでいるアパートには共有の庭と占有の庭があって、共有の方は月に1回庭師さんが来てくれるけれども、基本芝刈りしかしてくれないので伸びてくる花木の剪定や季節ごとの花の植え替えは自分たちでせなばならないし、時にはカタツムリやナメクジの大量発生とも戦わなくてはならない(土ネズミの捕獲業務はゼナの担当)。市が無償で設置してくれる100リットルの木枠コンポストには、同じアパートの数世帯が各家庭から出る生ごみを入れている。ご近所という非常に小さなコミュニティで、お互いのペットの面倒を見あったり、野菜の苗を分け合ったり、助け合いの関係があるのは、コロナやテロや差別事件が蔓延るこのご時世に大変心強い。

画像2

ちなみに私の住む郊外は、パリ中心地から数えて十数キロ程のところで、鎌倉から東京に通勤する(片道50km)友達からすると、さほど大した距離でないらしい。東京に比べてどんなにパリが小さいかがわかる。

仕事の合間や週末に時間を見繕って小さな畑の手入れをしていると、季節が過ぎると急に虫や鳥に食べられやすくなったり、トマトは黒い斑点ができるように(病気?)になったり、毎回新しい発見がある。旬の季節以外に年中売られている野菜がいかに人工的に、お金をかけて育てられているのかと気づかされる。冬に向けては、人参やビーツ、マーシュ、ラディノワールを種から植えた。順調に育つとは限らず、葉っぱがかたつむりに食べられたり寒さで育ちが遅かったり。だけど自分たちで育てた野菜を収穫し、食し、皮やヘタはコンポストで堆肥になって、また畑の栄養となる循環の体現は幸福度を高めてくれる。買うまでもないようなちょっとした量のバジルやパセリがサラダに加えられるのは、嬉しいし美味しい。

引き続きイレギュラーな事態が続くけれど、小さな変化の中に楽しみを見つけながら日々を乗り越えていきたい。


画像3



この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?