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草津冤罪事件の無責任な糾弾者を、ジャニーズ問題に一切関わらせてはいけない深刻な理由―「被害者性の焼畑農業」を二度と繰り返させないために―

はじめに ジャニーズ問題を焼け野原にしないために

「被害者性」を盾にして事実が軽視される、危惧すべき論調

先日、ジャニーズ事務所が、ある声明をだしました。

報道機関の皆様におかれましては、告発される方々のご主張内容についても十分な検証をして報道をして頂きますようお願い申し上げます。

株式会社Smile-Up. 故ジャニー喜多川による性加害に関する一部報道と弊社からのお願いについて

この声明文全体を読めば、単に、個々の証言については検証の上で報道してほしいという主旨であり、ジャニー喜多川が行った性的虐待や告発報道を否定するものではないことは明白です。

しかし、主に報道関係者たちから、「加害者側が報道に対して検証を求めること自体がセカンドレイプであり、かつ被害者を萎縮させるものである」と批判されているのです。

しかし本来、報道内容に対して最低限の検証を行うことは、メディアにとって最低限クリアすべき倫理のはずです。

ジャニーズ問題をめぐって、被害者性を盾にして、事実を軽視する論調が目立ちつつあることに、私は大変な危惧を感じています。この先に、どのような悲劇が待っているのか、私たちはごく最近目の当たりにしたはずだからです。

草津温泉の冤罪事件のことです。

「性被害を訴えた女性町議を、町ぐるみで抑圧した」というストーリーを、メディアや活動家・政治家たちが流布し、「セカンドレイプの町、草津」という類いの凄まじいバッシングが起きました。後に、「被害者」の証言自体が虚偽だと確定しましたが、ほぼ誰一人として謝罪すらせず、未だにシラを切り続けています。

なぜ冤罪事件が起きたのか。結論を先取りしていえば、「被害者」本人の証言すら確認・検証しなかった、メディアや活動家たちの不誠実さが、この悲劇の最大の原因です。

その無責任な糾弾者たちが、今また、何の反省も見せないまま、ジャニーズ問題という深刻な児童虐待問題に介入しつつある。そして、悪の組織を潰すために「被害者」を利用し、その結果、被害者の救済やケアが置き去りになりつつある。

この恐るべき流れを食い止めるためには、草津温泉の問題について、今こそ検証することが必要だと考え、このnoteを無料公開いたします。

私のジャニーズ問題に対する立場

あらかじめ、ジャニーズ問題に対する立場を表明しておきます。

  • このnoteはジャニー喜多川による児童虐待は存在しないという主張をするものでは決してありません。

  • 私はジャニーズのファンではありません。(どちらかと言えばアンチです)。

  • 法人としてのジャニーズ事務所は、すべての被害者に対して、ジャニー喜多川による児童虐待について道義的な責任があると考えています。

  • 現在、ジャニーズ事務所に所属している人たちの多くは、直接的であれ間接的であれ被害者の可能性が高く、おそらくは極めて深刻な被虐待サバイバー集団で「も」あると考えております。彼らの被害者性が完全に無視され、一方的に加害者側として断罪されている現状を、人権の観点から大変に憂いています。

  • 児童虐待のような深くトラウマにかかわる問題については、悪を断罪し事実を暴くことよりも、個人の人権救済とプライバシー保護を第一にすべきだと考えています。

  • 被害者が自らの被害を告白するかどうかは、その人の自由意志に委ねられるべきであり、公開の場で自白を迫るのはセカンドレイプにあたると考えています。

なお、以上の立場は、「メディアが被害者の告発を報道するときは、事前に内容を検証すべきである」という主張と、まったく矛盾するものではありません。

被害者に寄り添うこと(ケアの観点)と、報道や裁判において証言・証拠が相互検証されるべきこと(事実の観点)は、それぞれ別のレイヤーの話であり、適切に使い分けられるべきです。

そして、事実の観点が必要な局面で、ある被害者に寄り添うつもりで事実を蔑ろにすれば、別の人が不必要に傷つき、新たな被害者が作られるのです。その典型例こそ、草津の冤罪事件に他なりません。

なお、ジャニーズ事務所に所属する個人の被害者性に焦点を当てた、こちらのnoteもあわせて読んでいただければと存じます。

草津町冤罪事件の概要

草津町長冤罪事件のおさらい

草津温泉の町を巻き込んだ冤罪事件について、ごく簡単に振り返っておきます。

  • 2019年11月、新井祥子草津町議が、「町長室で黒岩信忠町長と性行為をした」などとする電子書籍を配信した。

  • 同12月、議会で書籍内容に言及したとして除名処分を受けた。

  • 2020年8月、不服申し立てを受け、県は除名処分を取り消した。

  • 同11月、町選管は住民投票を実施。

  • 同12月、新井祥子町議に対する解職請求(リコール)の賛否を問う住民投票を行い、失職した。投票率は53.66%、「失職に賛成」が2542票で、「反対」208票だった。

「性被害を訴えた女性町議」を弾圧する「セカンドレイプの町、草津」

新井祥子に対する住民投票あたりから、草津町と草津町長に対する極めて大規模なバッシングが、報道やフェミニストを名乗る人たちから巻き起こりました。

たとえば、上野千鶴子は次のように黒岩町長を批判しました。

極めつけは草津町の新井議員が町長のセクハラを公表したことで与党議員が立ち上がり、リコール運動を実施、新井祥子議員は失職した。やるべきことが間違っているであろう。最初に第三者を交えた調査委員会を立ち上げ、事実の究明を行い、事実なら加害者とを処分することだ、それなのに被害者を議会から追い出すとは本末転倒だ

「地方議会人」令和三年五月号

全国フェミニスト議員連盟は、黒岩町長に次のような抗議文を送りました。

群馬県草津町議会は、「女性ひとり議会」です。新井祥子議員が町長による性被害を告発したことへの草津町議会の対応は「性被害を告発したこと自体を否定する」人権侵害だと私たちは考えます

フラワーデモ主催者の北原みのりは、ナチスになぞらえて草津町を批判しました。

メディアもまた、「性被害を訴えた女性町議を弾圧した草津町」という論調で報道しました。たとえば、朝日新聞は次のように書いています。

群馬県草津町で、町長からの性被害を告発した新井祥子町議(51)=無所属=に対する解職の賛否を問うリコール住民投票が6日あった。(中略)
 リコールは、新井氏が昨年11月に「2015年1月に町長室で黒岩信忠町長から性被害に遭った」と電子書籍で告白したことが発端だった。

朝日新聞 性被害訴えた草津町議が失職 住民投票、賛成が上回る

挙げるとキリがないのですが、「町長からの性被害を訴えた女性町議に対して、草津町がセカンドレイプをしている」という話が、「事実」として流通してしまったのです。

虚偽告発が立証されたが、誰も謝罪をしなかった

2021年12月、新井祥子元町議は、黒岩町長を強制わいせつ罪で刑事告発しますが、嫌疑不十分で不起訴となりました。

2022年11月、事態は急転回します。前橋地検が、新井氏を名誉毀損と虚偽告訴で在宅起訴したのです。

起訴状によると、新井元町議は、フリーライターの飯塚玲児容疑者(名誉毀損罪で31日付で在宅起訴)と共謀し、2019年11月頃、インターネット上に「黒岩信忠町長と肉体関係をもちました」などと記された電子書籍を掲示し、新井元町議はさらに昨年12月、黒岩氏に刑事処分を受けさせる目的で、「わいせつ行為をされた」などのうその内容を書いた告訴状を同地検に提出したとされる。

読売新聞 「わいせつ行為された」とうその告訴状、元草津町議を在宅起訴…町長「全て作り話だと証明したい」

虚偽告訴罪は、よほどの強い証拠がなければ、適用されることはありません。決め手になったのは、新井氏のパソコンから押収した録音データでした。検察がデータを復元したところ、その音声から性暴力被害が実際には存在しなかったことが証明されたのです。

この事態を受けて、黒岩町長に対する「性暴力加害者」、草津町に対する「セカンドレイプの町」というレッテルが、完全に冤罪であることが明らかになりました。

しかし、当時、草津町と町長をバッシングしていたメディアや人間たちの99.9%は、一切の謝罪をしませんでした。多くの報道関係者・社会活動家・や政治家が、この件で何度となく問い詰められていますが、言い訳に終始するか、ひたすら沈黙を守り続けています。

この件で言及している人の一人が、北原みのりですが、彼女は「私も事実を知りたいです」と第三者のように振る舞っています。

また、「新井祥子元草津町議を支援する会」副会長の増田都子は、新井祥子に裏切られたとFacebookにブチ切れ投稿をしています。

Facebook 増田郁子

有罪判決が出ることが確定的な刑事被告人の女が、在宅起訴をいいことに自治体選挙に立候補なんて、やめた方がいいと思いますよ…また、マスゴミが飛びついて、草津町の悪評が再現されるのではないでしょうか?
あなたが行くべき場所は草津町議会ではなく、刑務所です!!!!!

事実を整える

黒岩町長の政治生命を冤罪で終わらせ、草津町の名誉と名声を著しく毀損したのは、新井祥子の方でした。ならば彼女を盾にして、町と議会と町長を丸ごとバッシングしていた「支持者たち」は、草津町と町長に対して二次加害を行っていたことになります。

しかし、自らの加害行為に対して道義的な責任を感じている人は、ほとんど存在していないようです。

「被害者」の告発内容すら知らない糾弾者たち

彼らは騙されたのではない。一次情報の確認を怠っただけである

なぜ新井祥子を支援し、連帯を表明してきた方々(以下「糾弾者たち」と呼びます)は、自分の加害行為に対して責任を感じないのでしょうか。

どうやら、彼女たち「私たちは新井祥子に騙された!私たちこそ被害者だ!」と思っているようです。

しかし、私から言わせればそうではありません。糾弾者たちは騙されたのではなく、そもそも最低限の一次情報の確認を怠っただけなのです。

知ってましたか?新井祥子が告発したのは「性被害」ではなかったことを

私は住民投票で新井祥子が失職した日、次のようにツイートしました。

私がこの時あたっていた一次情報とは、新井祥子の全面協力のもとで書かれた電子書籍『草津温泉 漆黒の闇5』です。2019年11月に配信されたこの本が、新井による最初の告発だったのです。

この本はKindle Unlimitedに加入している人なら、無料で読めるものでした。しかし2022年に、大変残念ながら出版停止となってしまったので、今となっては内容を確認することができません。そのため、私の記憶に頼って紹介せざるをえないところがあります。

この電子書籍の主題は、草津温泉の湯長制をめぐる、町長派と反町長派の闘争でした。新井祥子は、この派閥争いの中で、反町長派のハニートラップ要員として利用されます(これは新井祥子本人の証言に基づくものですが、驚くべき事に、糾弾者たちでこうした背景について語っている人は、ほとんど見かけたことがありません)。

そして、反町長派のG議員の指令で、新井は黒岩町長に接近します。ところが、接近するうちに、黒岩町長のことが好きになってしまった、と彼女は証言しています。

ある日、町長室で黒岩町長と話していたところ、町長から関係を迫られます。新井氏は、「町長室で、2人きりになったときに、私の気持ちが通じた時は本当に嬉しかったです。」と直筆サイン入りで証言しているのです。

さて、ここで皆さんの意見をお伺いしたいのです。

この告発内容は、仮に事実だったとして、「性被害」なのでしょうか?

私としては、常識的に考えれば、合意の上での性交渉だと思います。仮に、後に失恋したとしても、その時に同意した事実には変わりありません。

「性被害を告発した女性議員」という言葉を使っているメディア関係者や社会活動家・支援者たちは、そもそも新井祥子の告発内容を知らなかったのでです。

「被害者」本人の証言に当たっていれば、証言が虚偽であることは容易に見抜けた

後に、新井祥子は「合意の上での性交渉」から、強姦されたという内容へと証言内容をスライドさせました。それをもって「性被害を訴えた」と報道するのは、確かに事実としては間違いではないでしょう。

しかし、最初の告発内容を把握していれば、強姦されたという証言の信憑性は、相当に疑わしいという判断にならざるを得ません。

ともあれ、「合意の上で町長室で性交渉を行ったという告発」は、完全に虚偽でした。新井祥子の支持者たちは、それをもって「自分たちは騙された」と憤っています。しかし、テキスト分析ができる人から見れば、彼女の証言が虚偽であることは、この電子書籍を読めば明らかだったのです。

説明します。

この本では、新井祥子と黒岩町長の会話が、一言一句、完璧に再現されていました。普通の人間が記憶に頼っていれば、ここまでの正確な会話の再現はほぼ不可能だという水準の詳細さで、それが何ページにもわたって繰り広げられていたのです。

ところが、性行為の箇所だけは、たったの2-3行で済まされていたのです。

個人の印象ですが、PS5でファイナルファンタジーをプレイしていたのに、いきなり場面が変わって、昔のゲームセンターにあったインベーダーゲームが始まったような、ともかく極めて不自然な感覚だったのです。

性行為の詳細について語ることに抵抗がある人もいるでしょう。しかし、さすがにここまでの解像度の低さはありえないと感じました。

ちょっと考えてみてください。

どんな性暴力被害についての告発でも、最低限のディテールというものがあります。ところが、新井氏の証言からは、そうしたディテールが欠片すら存在せず、単に「性行為が行われた」という内容の言葉だけがあったのです。

当時、私は次のようにツイートしています。

そこで、私は当時、次のように推論しました。

会話のあまりの詳細さから、新井祥子は録音データを隠し持っているはず。だとするならば、その録音には、直後の性行為が記録されている可能性が高い。
なぜ彼女は性行為についての録音データを、仲間内や裁判などでも提出しないのか。それは性行為そのものが虚偽であるからだ。
そして、録音データが出てきたら、すべてがひっくりがえるだろう。

この推論は、結果として極めて正確だったことが、今では明らかになっています。

被害者の証言内容すら確認しないメディアや支援者は、擁護のしようがない

ここでいったんまとめます。

メディアや糾弾者たちが『草津温泉 漆黒の闇』をきちんと精査していれば、次の結論に容易に至れたはずです。

  • 告発内容が「性被害」ではなく「合意の上での性行為」であることは明白だった。

  • 新井祥子は、後に「性被害に遭った」と告発内容をスライドさせたが、「合意の上での性行為」という最初の告発との整合性がなく、信憑性が低いと判断できた。

  • 性行為そのものが、信用に値するほどの具体性がなく、虚偽の可能性が高いと判断できた。

  • そもそも新井氏が町長に近づいたのは反町長派の指令であることから、偽の告発をする動機が十分に考えられた

それにもかかわらず、なぜ「性被害を告発した女性議員」という決まり文句が、メディアでもSNSでも流通してしまったのでしょうか。

それは、糾弾者たち(メディア含む)が、そもそも「被害者」の証言を確認しようとしなかったからだとしか思えません。

たとえば、先に紹介した朝日新聞の記事では、「リコールは、新井氏が昨年11月に『2015年1月に町長室で黒岩信忠町長から性被害に遭った』と電子書籍で告白したことが発端だった」と記されています。この記者が当該書籍を読んでいたら、このような書き方は絶対にできなかったはずです。

そもそも、「性被害を訴えた女性町議」という言葉に、糾弾者たちは違和感を覚えなかったのでしょうか?どのような性暴力事件でも、「こういう被害に遭った」という最低限のディテールがあるものです。

ところが、草津の事件については、性暴力被害ですらない「性被害」という曖昧な言葉だけが流通している異常な状況でした。そして、その具体的な内容が「性被害」というブラックボックスに押し込められたまま、「性被害を訴えた女性町議を、町ぐるみで叩いた」という紋切型の「差別の構図」だけが流通し、大規模なバッシングに繋がりました。

被害者の側に立って加害者側を糾弾する人たちが、そもそも被害者の証言内容を知らないということに、私は心底驚いています。

被害者を支援している人たちが、「加害者側の言い訳など聞く必要がない」と主張するならば、感情的にはまだ理解できなくはありません。

しかし「被害者」の告発内容を確認しないのは言語道断です。まったく擁護のしようがない大失態だとしか言いようがありません。

本当に糾弾者たちは、被害者や性暴力被害に関心があるのでしょうか?

糾弾者たちの加害者性と、冤罪加害者の被害者性について

「見て見ぬふり」の罪について

繰り返しになりますが、草津町の事件で、「被害者」の告発内容を確認しなかった人たちが、大規模な冤罪事件を起こしました。

その一方で、被害者とされる人の証言について疑念を持ちながら、何も言わなかった「人権活動家」もいるのかもしれません。

黒岩町長は、マスメディアや活動家、政治家・政党から性暴力の加害者として一方的に断罪され、新井祥子氏から刑事告訴されました。下手をすれば、彼は政治生命はもとより、もっと大きなものを失っていた可能性があったのです。この事件の評価がひっくりかえり、冤罪だと確定したのは、たまたま告発者本人の録音テープが残されていたからに他なりません。

だとすると、そういう人物たちは、他人の人権よりも自己保身を優先したことになります。そのような無責任な人たちに、人権(human rights)について語り、人権問題に介入する資格があるのでしょうか

新井祥子氏の二重の被害者性 ①フェミニストが擁護すべき被害者性

草津町の問題は、最低限の事実関係を調べれば冤罪だと容易にわかるのに、フェミニズム界隈は誰も仲間に対して歯止めをかけようとしませんでした。問題意識を感じなかったのか、それとも感じていても同調圧力に抵抗しなかったのか、私は知りません。

私にわかるのは、その結果として、日本のフェミニズム活動家の評判は、完全に地に墜ちたことだけです。

正直、自業自得だと思います。

しかし、この件で、フェミ界隈に対して私が個人的に一番腹が立っているのは、新井祥子の被害者性に対する無関心です。

新井祥子は、確かに黒岩町長に対しては偽の告発で誹謗中傷を巻き起こしたという意味で、明らかに加害者です。その一方で、彼女はまた、フェミニズムとの関係においては、二重の意味で被害者性があるのです。

まず第一に、草津町の男たちの権力闘争の中で、彼女が「性の道具」として使われていたというかなり確度が高い背景情報があります。黒岩町長との関係についての証言は信憑性がまったくありませんが、彼女がハニートラップ要員であったという証言については相当の具体性があり、控えめに言っても十分に検討に値するものです。

彼女の証言どおりならば、新井による町長との関係(あるいはその虚偽告白は)、そもそも他の議員が指示したものでした。つまり、彼女は黒岩町長に対しては加害者ですが、彼女の加害行為は、地域の権力闘争の中で彼女が「性的対象」として搾取された結果だったです。

この被害者性こそ、本来、フェミニストが擁護すべきものではないでしょうか。なのに、新井祥子に対して指示・連帯を表明してきたフェミニストたちは、誰一人として、最後まで彼女を擁護しきれなかった。被害者を目の前にして、支援した責任すら取らず、自己保身を優先して一目散に逃げたのです。

あなたがたが実践しているフェミニズムは、どれほど底が浅いフェミニズムなのかと、私は心の底から憤りを感じます

新井祥子氏の二重の被害者性 ②フェミニストによる被害者性

もう一つ考えないといけないことがあります。

新井氏がなぜ「合意の上での性交渉」から「性被害」へと告白内容をスライドさせたのかということです。

彼女が証言内容を変更した理由については、残念ながら私は、つぶさに知りません。ですが、だいたいのことは容易に推測がつきます。

「支援者」たちは「性被害」の話を聞きたかった、新井氏は草津町長を炎上させるためにウケが良い話にしたかった。

「被害者」と「支援者」の相互作用の中で、「性被害」がでっち上げられるに至ったのでしょう。

そもそも告発内容が虚偽だったことと、他人に流され易く利用されやすい彼女の性格もあって、多数から支持される話にした方が良いと、新井祥子は安易に考えたのだと思います。

その結果、彼女は彼女は後に引けなくなり、黒岩町長を刑事告発するにいたり、逆に虚偽告発で起訴されました。そして、彼女はおそらく、誰からも信用されなくなり、議員という職以上のものを失うにいたったのです。

もちろん、これは何より、本人の責任です。

しかし、支援者たちは、彼女の人生に対する責任はないのでしょうか。新井祥子の人生を破滅させたのは、相手の話をろくに聞こうとせず、「性暴力被害者を潰そうとする町」という自分勝手な脳内のストーリーを押しつけた支援者や連帯を表明した人たちでもあったはずです。

そうすることで支援者たちは、黒岩町長に冤罪をかぶせることで、新井祥子を性的に利用・搾取する男たちに、結果として加担したことになるわけです。フェミニストを自称する人たちが、自らの浅はかな思慮と不誠実さによって、性差別的な社会構造に完全に乗っかってしまったことになります。

にもかかわらず、一部の人は「私は被害者だ」「嘘をついたのは新井祥子だ」と責任転嫁し、他の大勢は沈黙を守り続けている。自らが何に加担したのかすら理解しようとすらしていないのです。

新井祥子に対して、「取り返しがつかないことをさせてしまった」と心から謝罪をする人がただの一人も存在しないことは、とても哀しく恥ずかしいことだと私は思います。

草津町問題のまとめ

ここでいったんおさらいします。糾弾者たちの振る舞いには、以下の致命的な問題がありました。

  1. 「被害者」本人の告発内容を知ろうとすらせず、「性被害を訴えた女性町議を、町ぐるみで抑圧した」というストーリーだと自分勝手に思い込んだ

  2. その思い込みの結果、集団バッシングを繰り広げ、草津町長を誹謗中傷で追い詰め、草津町には大規模な風評被害を与えた。

  3. 新井祥子を「性被害者」に仕立て上げ、後にひけなくなった彼女の人生を「虚偽告訴」で破滅させた

  4. 上記の加害行為に対して、ほぼ全員が形式的な謝罪すら拒否して逃げ続けている。

このように振り返れば、糾弾者たちの振る舞いには、何一つとして生産的なものはありませんし、結果としてたくさんの人が傷ついただけで、誰一人として救われた人はいません。

なぜこんな無責任なことが起きるのでしょうか。

糾弾者たちが本当に関心があるのは、性暴力被害でも被害者でもなく、単に「悪」だと決めつけたモノに火をつけることだからだとしか、私には思えないのです。

火をつける対象は、人であったり、地域であったり、属性であったり、キャラクターやイラストであったりします。

そして、そうした行動が無責任な破壊行為ではなく、何か意義がある社会運動であると心の底から信じ込んでいます。実際、草津町に対する糾弾運動には、社会活動家や学者、政党・政治家も大いに参戦したわけです。

糾弾者たちが「社会運動」を推進するためには、建前となる「被害者」が必要でした。いわば糾弾者たちは、「火種」としての「被害者」には関心があっても、自分が支持し連帯している「被害者」個人に対して、本質的にはなんら関心を持っていなかったのです。

だから、「被害者」本人の証言を最低限すら知ろうともせず、自分たちが「被害者」の人生を破滅させたということにすら思い至ることができない。

そうやって、自分たちの運動に利用できる「被害者」を持ち上げ、一方的に搾取し、使い捨てただけなのです。

「被害者性の焼畑農業」をこれ以上繰り返させないために

繰り返される「被害者性の焼畑農業」

糾弾者たちの行動を見ると、こういうイメージが思い浮かびます。

─「この建物では性被害が行われている」という思い込みで確認することなく外から火を放ち、「被害者」をあの手この手で篭絡して中から火をつけさせる。中にいるすべての人が死傷し、「被害者」が全身火傷を負っても構うことがない。しかし、自分たちに火の粉が飛んでくると一目散に逃げ、次の現場に向かう─

糾弾者たちは、いつも「火種」となる問題を探し、率先して火をつけて回る被害者を一方的に利用しつづけているだけにしか、私にはどうしても見えないのです。

ここ数年の例の界隈の動きを見るかぎり、自分たちが持ち上げる被害者を常に探している印象を強く受けます。「被害者」を見つけては、本人の負担や苦痛もお構いなしに「悪と戦う英雄」として徹底して持ち上げ、そして都合が悪くなると使い捨てる。

具体名はあえて挙げませんが、いくつもの実例を容易に思い浮かべることができると思います。

こうした運動のあり方を、私は「被害者性の焼畑農業」という言葉で呼んでいます。

ジャニーズ問題を焼け野原にしないために

私がいま大変に危惧しているのは、「正義」のために被害者を濫用して憚らない人たちが、また無責任にジャニーズ問題に介入しようとしてきていることです。

Penlight ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」という匿名の団体があります。そこで出されている声明には、私個人として賛成できるものもありますし、概ね賛成できるけれど一部に違和感を覚えるものもあります。

しかし、以下の声明については、まったく賛成できません。その理由は、このnote全体が説明になっているはずです。

貴社のホームページに10月9日付で掲載された声明「故ジャニー喜多川による性加害に関する一部報道と弊社からのお願いについて」の内容は、いま声をあげている被害者の方々へのセカンドレイプや誹謗中傷を加速させるものであり、強く抗議するとともに即時撤回を求めます。

https://penlight0412.wixsite.com/penlight/general-8

もう一つ、大変に懸念していることがあります。

以下に、Penlightの賛同人リストを示します。

青木正美(医師)
安積遊歩
石田郁子
大島史子(韓国/朝鮮語翻訳者、漫画家)
太田啓子(弁護士)
小川たまか(ライター)
長田杏奈(ライター)
北原みのり(作家)
金富子(ジェンダー史研究者)
坂井恵理(漫画家)
辛淑玉
塚原久美
仁藤夢乃(一般社団法人Colabo代表)
菱山南帆子(市民運動家)
古橋綾(大学教員)
松谷信司(「キリスト新聞」編集長)
三井マリコ
宮子あずさ(看護師・コラムニスト)
本山央子
李信恵(フリーライター)

Change.org

他に、賛同団体として、全国のフラワーデモの名前が連ねられています。

賛同者全員・全組織の言動を精査した訳ではないことは予め断っておきますが、控えめに言って、草津町の冤罪事件で二次加害を行い、その後は謝罪もせずに逃げ回っている糾弾者たちが、相当の割合で混じっています。

繰り返しになりますが、被害者の証言すら知ろうとせず、被害者を一方的に利用して都合が悪くなったら知らぬ存ぜぬを貫き通し、自らの加害に対して責任を取らない、恥ずべき人たちです。

同じ悲劇を繰り返さない保証は、どこにもありません。

少なくとも草津の問題について自分の責任を明らかにし、公開の場で謝罪をしない限りは、ジャニーズ問題のような深刻な人権問題に介入する資格は一切ないと私は思います。

また、これは別途きちんと書かないといけないと思いますが、正義を断罪するために被害者を利用してはばからない、いわば「被害者性の焼畑農業」の常習犯のような報道関係者が、ジャニーズ問題で正義のヒロインとして大々的に持て囃されていることに、私は大変な危惧を抱いています。

この流れのままでは、ジャニーズを潰すために「被害者」を搾取することが、あまりにも容易に想像がつくからです。

ジャニーズ問題、絶対に避けなければならない悲劇のシナリオ

最後に、私が危惧しているシナリオを簡単に説明しておきます。このままでは極めて高い確率で次のような悲劇が発生します。

旧ジャニーズ事務所(あるいは株式会社Smile-Up.)は、法を超えた救済措置を行うことを明言しています。これは大変に歓迎すべき事ですが、一方で、不当な利得を得たい人たちにとっては、確実にかっこうのターゲットになります。

言っておきますが、これは「性暴力は実在せず、被害者は金目当てだ」と言っている訳ではありません。単に、社会的確率の問題として、不当な利得を得たい人が社会に一定割合で存在する以上、本当の被害者に混じって、被害者を騙る人が多かれ少なかれ現れるだろうという話です。

そしてジャニーズ側としては、虚偽申請者たちを、可能なかぎりふるいにかける必要があります。被害申請さえすれば無条件にお金がもらえることが分かれば、不当利得を得たいより多くの人からターゲットになり、あっという間にリソースが食い尽くされるからです。そうなれば、本当に救済されるべき人が救済されなくなる訳です。

もちろん、性暴力被害は多くは密室で行われるため、事実関係の厳密な証明は極めて困難です。しかし在籍確認など、最低限の事実検証は行われる必要があるでしょう。そして、ジャニーズ側はそのようにして、資料や他の証言と整合性がない申請者の申請を却下します。

ではそうしてフィルタにかけられ、救済申請を却下された「被害者」たちは、次にどのような行動に出るのでしょうか。考えるまでもありません。

メディアにリークします。

「私は本当にジャニー喜多川(あるいは他のタレント)から性被害を受けたのに、ジャニーズから事実を否認され、セカンドレイプを受けた」と虚偽告発を行うことで、別の形で利得を得ようとするのです。

「ジャニーズは加害者側であり、絶対に潰さなければならない」という無責任な正義感に駆られている報道関係者にとって、こうした「被害者」の出現は願ったり叶ったりです。

草津の件で、「被害者」の証言内容の確認すらしなかったメディアです。今回も最低限の検証すら行うことなく、「今のジャニーズからセカンドレイプをされた被害者」として持ち上げる可能性が極めて高いものと思われます。

そして「未だに反省していないジャニーズ」を潰すために、メディアは大々的なジャニーズ糾弾キャンペーンを張ることになるでしょう。そしてこの対応に、ジャニーズ側が追われ、被害者の救済とケアに払われるべき経済的・人的・時間的リソースが、完全に食いつぶされてしまうのです。

草津の冤罪事件を起こした糾弾者たちを、なぜジャニーズ問題に一切関わらせてはいけないのか

ジャニーズ側の声明文を読む限り、彼らもまた、同様の悲劇のシナリオを危惧して、プレスリリースに至ったものと私には思われます。

こんなデタラメなシナリオは絶対に起きえないと断言できるメディア関係者・活動家がいるでしょうか?もし存在するとすれば、草津の冤罪事件について、真剣に反省していない人だとしか私には思えません。

そして、この悲劇のシナリオは、すでに動きはじめつつあります。

これからほぼ確実に起きるだろうジャニーズとメディアの闘争で、最終的にどちらが勝利するのか、現段階では私にはそこまでわかりません。ただ1つ言えることは、この戦いは完全に不毛であり、誰一人として救われないということです。

そして、もう一つ、わかりきっていることがあります。「被害者」の口車に乗っかってジャニーズを糾弾する人たちは、仮にジャニーズが完全に潰され、救済スキームが破綻し、誰も救われなくなっても、また「被害者」の告発が虚偽だったと後に発覚しても、誰一人として責任も取らず謝罪もしないということです。

こうして、草津で起きた「被害者性の焼畑農業」の悲劇が、巨大なスケールで再現されます。残念ながら、このままでは、確実にそうなるのです。

だからこそ、草津の件でいまだに謝罪すらしない糾弾者たちを、ジャニーズ問題に一切関わらせてはいけないのです。徹底してまず謝罪を求め続け、責任を追及しつづけることが大切なのです。

最後に

大変長い文章を、最後まで読んでいただきありがとうございました。

意義があると思ってくださった方がいれば、フォロー・拡散などよろしくお願いします。

また、最後に、これまでに書いたジャニーズ関連・フェミニズム関連の論考のリンクを張っておきます。

私はこれまで、現代日本のフェミニズム(特に上野千鶴子ら社会構築主義の流れ)を徹底的に批判してきました。

ただ、私のフェミニズム批判は、すべて人権とフェミニズムに基づくものであることは、読めば理解していただけるものだと思います。



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