見出し画像

写真の新しい楽しみ方を考える

写真を撮るのは楽しい。

これは、まぎれもない事実だ。気の向くままにシャッターを切り、振り返ってみて「いいな」と思うものが撮れたときには、何ともいえないカタルシスがある。

しかし「撮れた写真をどうするか」というのは、写真を撮る人にとって永遠の課題なのではないだろうか。

公募に出すほどでもなければプリントして飾るほどでもない、と思うような、でも自分としてはお気に入りの写真が、大容量でクラウドなりHDDなりにドンドン貯まっていく。

今日びデータの容量なんて気にすることもないけれど、何だかもったいないな、とは思う。最近のカメラは本当によく撮れるし、誰に知られることもない名作が、世界中のPCの中に眠っているかもしれない。

このnoteでも散々書いてきた通り、私も昨年10月頃から写真熱が再燃し、SIGMA fpを購入してからというもの、何千回もシャッターを切ってきた。(※この期間にとってきた写真は、概ねFlickrの方にアップしている)

何となくFlickrに貯まった写真を眺めながら、これらの写真を何か新しい表現方法に昇華させることはできないかと考えた。そこで思いついたのが「マンガ」だ。

実はマンガも2年前に少し描いていた(コレとかコレとか)のだが、色々なマンガを読むのも好きで、中でもマンガによくある「一見、無意味だったり脈絡がなかったりしそうに見えるけど、気持ちのいい風景のコマ」のようなものが好きだ。

それは少しの「間」の表現だったり、場面転換のためだったり、必ず意味があるのだが、そういうコマがあることで、マンガに映像的な魅力を付加しているように感じられる。

そんなことから、写真をマンガのコマ割りのように再構成することで、何かストーリーを感じられるものになるのではないかと考えた。言ってみればただのコラージュなのだが、できるだけ「マンガっぽい構成」を意識することで、見る人の想像力を掻き立てるようなものになるような予感がしていた。

こういうものは、案ずるよりも生むが易し。思いついたらすぐ実行。過去に撮った写真を洗い出し、マンガっぽい構成にしたら面白そうな写真を組んでみた。で、最初に作ってみたのがこちら。

画像1

実際にやってみると、映像の編集をしているような感覚で、実に面白い。マンガを描いているときにも思ったのだが、コマ割りを考えることは、映像のカット割りを考えることと非常によく似ていて、ヨリ・ヒキやアングルなど、映像の演出にかなり近いものがある。

画像2

そして、やはりというか、マンガのコマ割りの要領で縦のアキと横のアキを変えたり、敢えて縦長のコマを入れたりするなど、よりマンガっぽく構成することで、不思議とそれらしい流れが見えてくることが分かった。

これは、特に日本人だからこその感覚かもしれないが、「いわゆるおなじみのコマ割りっぽい構成」を見ただけで「あ。マンガだ」と思ってしまうほどに「刷り込み」がなされているせいではないかと思われる。

日本のマンガは基本文字が縦書きで構成されており、右上から左下に向かって読むという暗黙のルールがある。しかし今回の試みでは、マンガっぽいものであると同時に「あくまでも写真表現でありたい」という思いから、文字を一切入れていない。それにも関わらず、何となく無意識に右上から左下に向かって、視線が誘導されてしまう。これこそ「刷り込み」が強固であることの証左でないだろうか。

逆に英語圏の横書きのマンガでは、左上から右下に向かって読むのが普通だ。そちらの方に慣れている人が見たら、読む順番は逆になってしまうかもしれない。ただ今回の場合は、そもそもストーリーにほとんど依存していないので、多少順番が入れ替わるだけで、逆から見てもそれほど違和感がないかもしれない。

画像3

やってみてわかったのは、できるだけ同じシチュエーションで撮ったものだけで再構成する方がいいということ。これは当たり前のことのようにも思えるし、撮った自分にしか分からないことなのかもしれないが、何となく表現に滲み出てしまうもののような気もする。

画像4

それにしても面白いなと思うのは、最初からこういうストーリーにしようと思って撮ったわけではない写真を後づけで並べるだけでも、それっぽい流れに見えてきてしまうところだ。

人間というのは不思議なもので、写真を単体で見るときと、複数枚を並べて見るときとでは、見える感覚が違ってくるものらしい。それが分かっただけでも、今回の実験的な試みは成功な気がしている。

画像5

よく「映画のワンシーンのような」という表現があるが、写真を撮りたくなる瞬間というのは、まさに「映画のワンシーンを切り取ったようなイメージ」をしていることが多い。それはすなわち「マンガの1コマを切り取ったようなイメージ」であるとも言える。

そうであるとするならば、この試みは「自分でも無意識の内に切り取ったコマを集めて編集し、もう一度マンガとして再構築する行為」なのかもしれない。

画像6

画像7

画像8

今回は、これらを「Photooon」と名付け、Webサイトを作って公開してみた。ただ画像で見るよりも、じっくりと見たくなるようなUXにしたかった為だ。このような試みはこれが初めてではないのかもしれないが、自分としてはいくつか発見があった。

そのうちの一つは、写真という「既存のプラットフォームをある別のフレームワークに当てはめることで、面白くなる」ということだ。これは自著に記した内容で言うところの「面白さの法則」の発見でもある。

そしてこれは、先日公開した「一行文庫」にも同じことが言える。

「一行文庫」の場合は、「本」という既存のプラットフォームを「一行」というフレームワークに当てはめて再構築することで、「新しい読書体験」を生み出すことができたのではないかと思っている。

また、その中で「通常の文庫本が一行になった」と感じさせるデザインにすることで、ある種の「パロディ的な効果」があったことも功を奏している。

今回の「Photooon」では、「写真」というプラットフォームを「マンガ」という既知のフレームワークに当てはめることで、写真単体で見ていたときとは別の感覚を誘発しているような気がする。

…とまぁ実際にはそんな小理屈はどうでもよくて、肝心なのは意外とシンプルな所にまだまだ発明や発見の可能性があるのではないか、ということだ。そして、そこに必要なのはやはり「アイデア」と「デザイン」なのだろうと思う。

固定観念にとらわれず、こんな写真の楽しみ方があってもいいのではないだろうか。

--


この記事が参加している募集

カメラのたのしみ方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?