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「擬人化」と「抽象空間」のマンガについて

ここ1ヶ月くらい描いている「原始人A」というマンガに加えて、先日から突然「ご覧のスポンサーの提供でお送りします」という変なマンガを描きはじめました。読んで頂くと分かると思うのですが、あまりのシュールさに一見意味がわからず、混乱されることと思います(笑)今回は、このマンガのねらいなどについて、ちょっと書き記しておきたいと思います。

「原始人A」を描いて色々なマンガ投稿サイトに投稿してみて、自分の創作物を世に広める面白さに気づいたのは前回書いた通りなのですが、せっかくなら他にも色々なマンガを描いてみたいなと思ったのが、そもそものキッカケです。「原始人A」は、(当たり前ですが)個人的にとても気に入っている作品で、まだまだ続けていくつもりなのですが、元来、自分は同時並行で色々やっている方が性に合っているらしく、実験的な意味も込めて、思い立ったと同時に新しいものを描きはじめてみた次第です。

マンガ投稿サイトの傾向を見てみると、多くが「恋愛もの」か「ファンタジーもの」で、当然そのジャンルを狙った方が人気は出るのですが、それはそれは上手い人がひしめき合っている中で、まだまだ自分には(実力的にも時間的にも)描けないなぁというのもあり、ゆくゆくは王道なものも描いてみたいと思ってはいるのですが(とは言えちょっと変なものになると思うのですが)、やはり自分の得意分野で攻めた方が、ネタも尽きないし、オリジナリティが出せるのではないかと思ったのです。

で、意外や意外、自分の得意な分野で考えたときに、近すぎて忘れていたのですが「広告」だったら、もう15年も「企画」を考える脳ミソと手仕事を鍛えてきたので、まぁ無理なく考えられるんじゃないかと、ふと思ったのです。マンガを考えるというよりは、CMの企画を考える感覚でやる方が、普段の思考のプロセスに近いから、考えやすいのではないかと考えたわけです。

そもそもCMのコンテというものは、ほぼマンガみたいなものです。コンテを普段から描いていたからこそ、簡略化した絵を描く画力や、企画としての構成力が、いつの間にか(少しですが)向上していたような気がします。だから素人なりに、いま何とかマンガを描けているような気もします。

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で、今回の「ご覧のスポンサーの提供でお送りします」は、CMのあるあるネタ「擬人化」と「抽象空間」という鉄板フレームを利用して「絶対にCMにはならないようなもののCMを勝手に考える」という体のマンガです(自分の中では)。

特に「擬人化」というのは、古今東西よく使われるネタで、自分も含め、広告業界のクリエーターは大好物な手法です(笑) 最も有名なところでは「Mr. Wind」という超名作があります。昔のカンヌによくあった「一見何だか分からないまま映像が続いていって、最後の最後にオチが分かって腹落ちする」という構造なのですが、主人公のキャスティングや演技、演出など、どれをとっても素晴らしいCMだと思います。他には「durexのCM」(すみません、正確なタイトルがわからないのですが)も有名ですね。

多くの場合「擬人化された何か」は、抽象度の高い服装で登場します。Tシャツにジーパンだったり、全身タイツだったり、着ぐるみだったり…。抽象化することで、明らかに実在の人間とは隔絶された存在になります。また、見る人にとって「この変なヤツは一体なんだろう?」と考えさせる効果もあると思います。

この「抽象化」というのも、CMでよく使われる手法のひとつです。CMを見るターゲットとなる人たちは老若男女いるわけで、何か状況を表現するときにあまり「具体化」しすぎると、自分ごと化しづらいんだと思います。特に、抽象化された空間を「抽象空間」と言ったりしますが、短い時間で色んな要素を伝えなければならないCMにおいては、便利な状況設定だったりします。抽象空間で表現することで、見る人に想像する余地を与えたり、何となくザックリとした印象になることで、訴求点を明確にしやすい、ということもあると思います。また、スタジオで撮影しやすいなんていう事情がある場合もあったりなかったり…。

そんなこんなで、今回はこの「擬人化」と「抽象空間」をマンガに取り入れて、一見「何だろう?」と考えさせて、オチとなる商品カットを見て、なるほどと思いつつ二度見したくなるような、そんなじわじわくるような変なフレームを作ってみました。

登場人物を抽象化することは、「キャラクター」が肝であるマンガとは相反することのように思えますが、それでも成立するのかどうかなど、今回は実験的にトライアルしてみたい所でもあります。

シリーズを重ねるごとに、見る側もルールを理解して「これ何を例えているんだろう?」と考えながら読んだり、「次はどんな手でくるのかな?」と期待させるようなものになれば、成功かなと思います。

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また、ここからはやや余談ですが、マンガの投稿をやってみて分かったこととして、マンガを描いて世の中の反応を得ることは、CMの企画を考える力が養われるような気がしています。経験上、特に若い人が会社に入ってからCMの企画力を鍛える手段というのは「①実戦」か「②研修」か「③公募」くらいしかなく、①の実戦は、まわりに先輩たちがいる中で自分の企画が通るようになるまではとにかくトライ&エラーしかなく、これがいちばん修行にはなるのですが、当然時間がかかるものでもあります。②の研修と③の公募は、練習としてはとても役立つものですが、なかなかシミュレーションの域を超えるものは少ないような気がします。

これらに対して、マンガを投稿することは、企画力・構成力・演出力・画力・コピー力など、CMの企画に必要な要素がすべて詰め込まれている上に、世の中の人に見てもらえることで、リアルなフィードバックを受けることができるので、「勇気」や「度胸」も必要になります。世の中の反応を受けて、描く側も人間なので「どうやったら面白くなるか」を本気で考える羽目になります。さらなる利点としては、もし万が一うまくヒットしたら、自分がコンテンツメーカーとして成功できる可能性もゼロではないのです。なので、これからは若手でCMを作りたい人にはぜひ勧めてみようと思いますし、自分としても、CMプランナーやコピーライターと組んでマンガを描いてみたりしても面白いかもな、と思っています。

また、マンガばっかり描いているようにみえるかもしれませんが(笑)、ちゃんと仕事もやっていますし、ここで得た知見を仕事などにもうまく活かせないかと、日々画策中です。

いずれにしても、マンガの持つ伝播力・コミュニケーション力は、広告とはまた違った醍醐味があることだけは確かなようです。

というわけで、これからも色々描いてみたいと思います。引き続き、よろしくお願いします。




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