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8【白化粧灰釉湯のみ】

なんどもなんどもモノは見たことがあったのだけれど、初めて手元にやってきた尾形アツシさんの灰釉湯のみ。

鉄分の多い土に白化粧、灰釉が黄色とも萌黄とも言えない色合いを出している。
口元には石爆ぜ。

尾形さんの器には、一目見てそれとわかるような強烈な個性がない。
実直な工程で生まれるうつわは自分自身が意識を蔑ろにしていると素通りしてしまうタイプのそれだ。
けれど、一旦惹きつけられると強い。
フォルムの細やかな部分、白化粧の具合、焼成、どこをとっても気を抜かれていないことがわかる。
大らかなのに、精緻。

凡庸であってはいけない、けれど個性が極端な邪魔をしてはいけない。
現代の生活に即したうつわの作り手は戦国時代にいるんじゃないかと思う。
けれど尾形さんの器にはそうした思念の邪魔がない。
これはきっと、作り手としての経験や技術に裏打ちされたものだと思う。

購入したギャラリーでは「徐々に貫入に色がついてきますよ」と言われた。
持ち帰って一旦、米の研ぎ汁で煮た。
それからお茶を何杯か飲んだけれど、予言通り色がついてきた。

別に”育てる楽しみ”なんて言うつもりはないけれど、
貫入に色が入った姿もサマになっていると思う。
懐の大きいうつわだ。

ただ、大好きな珈琲を飲む勇気はまだない。

2019.2@ギャラリーYDS

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