インタビュー分析を効率化する7つのメモ作成テクニック

はじめに

私たちがデプスインタビューを行うときは、インタビュアーとメモ係が必ずペアで参加します。インタビューのローデータとなる書き起こしは作成に膨大な時間を要するため、8割程度はメモ係がインタビュー中に作り上げるように心がけています。

後から参照しやすい良質な書き起こしは、インサイトの発見やインタビュー設計の見直しを素早く行える強力な武器になります。そこで今回は、良い書き起こしを作るために意識している、インタビュー中のメモ取りの工夫についてお話しします。

インタビュー前の工夫

(1) インタビュースクリプトや参考資料を読み込んでおく
インタビューを聞いていて一番手が止まりやすいのは、会話の中に知らない単語や文脈が出てきた瞬間です。「どういうことだろう?」と考えているうちに会話が過ぎていき、理解したときには完全に手が止まっていた…。ということがよくあります。特にBtoBや業務システムを対象にしたインタビューではよく起こる場面です。

これを避けるためには、事前の情報把握がとにかく大事です。インタビュー対象の領域で一般的な用語やステークホルダーの名前などは、事前にきちんと把握しておくと良いでしょう。

(2) 事前にメモ用の記号やフォーマットを決めておく
メモ係が複数人いる場合はもちろん、すべて自分1人でメモを取っていてもメモの取り方がバラけてしまうものです。(会話に集中していると、つい手癖でメモしてしまいがちです。) どんなときにどんな記号で表現するか、チーム内で記法を定めておくのをオススメします。

社会学、特に会話分析の領域における文字起こし(トランスクリプト)では、括弧を使った記法の一例として以下のようなものがあります。興味があれば会話分析に関する文献を読んでみてください。

・括弧 ( ) … 言われたことが聞き取れなかったことを示す。空白が多いほど時間が長い。
・括弧つき文字 (~~) … 括弧内の文章の聞き取りに確信が持てないことを示す。
・括弧つき数字 (4) … 数字の秒数だけ沈黙があることを示す。
・二重括弧 ((~~)) … メモ係による補足説明であることを示す。

インタビュー中のメモの書き方

上記のほかに、独自に工夫したり意識している書き方を紹介します。

(3) 発言者に通し番号を振る
タイプ量を減らすため、インタビュアーの発言の文頭のみ長音 ー を入れるなどの工夫で、発言者を1文字で判別できるようにすると良いでしょう。グループインタビューの場合は、自分から近い順に 1,2,3 A,B,C のような通し番号をふると分かりやすいです。

(4) ノンバーバル情報や間投詞をメモに残す
「えーと」とか「あのー」のような言葉以外も文字に起こすものを「素起こし」と言いますが、ほとんどの場合は冗長で使い物にならないため、これらを取り除いた「ケバ取り」の状態で文字に起こすのが一般的です。

しかし、ケバを取りすぎると文章から受ける印象が変わってしまう場合ため注意が必要です。○○なんですか?」と聞いたときの返答をメモするときに、「そうですね。」と「うーん、そうですね。」では、前者のほうが断定的で迷いがないように感じられます。

ノンバーバルな印象を完全に書き起こすのは難しいですが、メモを読んで「ここは断言せずに言いよどんでいた」と分かるだけでも分析の参考になります。

(5) 聞き取れなかった用語には仮名をつけて、同じ仮名を使い続ける
聞き覚えのないアルファベット3文字の略語や略称を一発で正しく聞き取るのはなかなか困難です。重要な話ならインタビュアーもその場で確認しますが、些細な話ならそのまま流すこともあります。

聞き取れなかったときは自分が理解したままの言葉で書いておき、確実に聞き取れるまではその単語を使い続けるようにしています。後で正しい用語に書き直すとき、一括で置換できるので便利です。

インタビュー後の処理

インタビュー中に分からなかったことをそのままにせず、忘れる前にメモを整形することも大切です。

(6) 表記ゆれにすばやく対処する
複数名のインタビューで同じ用語が出てきたとき、表記を統一していれば、関連するインタビュー内容をまとめて検索することができるため非常に便利です。

最近実施したユーザーインタビューでは、メモごとに用語の表記が散乱してしまい、分析に時間を取られてしまう経験がありました。そのため、次回は文章チェックツールのtextlintとprhを使って、自動で表記ゆれを修正できる環境を作ろうと考えています。ツールの詳細はtextlint作者の記事をご参照ください。

(7) 検索のための補足説明を追加する
インタビューを聞いていて、「この話は別の人が言ってた○○の話と同じだな」と思い出すことがよくあります。そんなときはメモの中に ((○○の話)) などと補足を入れておくと良いでしょう。 ○○ という用語をメモに残しておくことで、あとで同じ話をまとめて検索できるため、分析が楽になります。

本格的な質的調査の分析では、すべてのインタビューの発話に○○の話のような「コード」「カテゴリー」を割り当てて、インタビュー全体を俯瞰的に分析します。これはインタビュー結果を体系化するには便利ですが、コードを振る作業は書き起こし以上に時間がかかります。学術的な分析が必要でない限り、(7)のような簡易的な補足説明があれば十分だと考えています。

まとめ

インタビュー自体のテクニックについては色々なところで語られていますが、今回はあえてメモや書き起こしにフォーカスしてお伝えしてみました。細かい部分ですが、より深い分析を行うためには大事な作業ですので、実践の役に立てば幸いです。

インタビューが終わった後は、作成したメモをあらためて整理してサマリーを作り、分析作業に挑みます。サマリーの作り方や、分析作業を見据えたメモのまとめ方についてもいくつか意識していることがありますが、そちらはまたの機会にご紹介できればと思います。

最後に、私たちがインタビューに取り組むうえで参考にしている書籍のうち、記事で特に参考にした2冊を紹介します。興味があればぜひこちらもお読みください。

written by 澁谷
UX Researcher。UXリサーチやフロントエンド開発を担当しています。

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あいうおえ

コメント1件

こんばんわ。大変参考になりました。ありがとうございます。
ご紹介いただいた記事や書籍も読んでみます〜
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