あの頃醤油は甘かった

お醤油が、しょっぱいです。

東京に来てから3年ほど経った頃、久しぶりに回転寿司に行った時のことでした。

私が入ったのははま寿司。
はま寿司ってお寿司にかける醤油が何種類かありますよね。
オーソドックスなのは特製だし醤油みたいですが、それをかけた時私は思いました。
「甘みが足りない」。

初めての醤油ビュッフェ状態の私は
他の種類も試してみました。
その中で一番しっくり来たのは、
九州甘口醤油です。

これぞ私の思い描く醤油。これが醤油。異論は認めん。よろしいならば戦争だ。
一緒に寿司を食べている人に訴えたところ、
「え?違うよ」。
「この醤油は甘すぎる」。

衝撃でした。
醤油は甘くないものがスタンダードなのか…!
私が今まで醤油だと思ってたものは何だったの?邪道だったの?

そこから、私は自分の食生活(主に実家暮らしの頃の)を考えるようになりました。

自炊をするようになってから分かったことですが、私の味付けの基本は「甘い」ことらしい。
料理を始めるまで、「砂糖ってぶっちゃけどこに使うの?」と思ってた。
しかしいざ料理をしてみると
「え、まず!しょっぱ!何か足りない!」
と1人で大騒ぎ。
初めて卵焼きを焼いた時。
卵の他に私は醤油しか入れませんでした。
結果「まず!」。
私は当時、醤油さえ入れれば甘さは保証されるものだと思い込んでいたのです。
母が砂糖をドバドバ加えて、卵を焼いていたことすら知らなかったのです。
自炊始めの私に足りないものは、他でもなく
「甘み」でした。

あと衝撃を受けたのは、上京してからコンビニでおでんを初めて買って食べた時。
大根を食べた瞬間
「??????」
いや不味くない、美味しいんだけど、
なんか違う…?感が拭えない。

その謎が解き明かされたのは
恋人(千葉出身)が、うちの母が作ったおでんを食べた時の一言でした。

「まり子ンちのおでん、甘いね!」

え、うちのおでん、甘いの?

「うん!甘い!そしてすげー美味い!」

恋人はその後、おでんをバクバク食べ無事に完食。母も味を褒められ満更でもなさそうに
「え〜?簡単なのよぉ〜?おでんなんてそんな貧乏くさいものを〜」
とニヤニヤ。
(うちの母って…)

そうか、うちの味付けは甘めだったのか…
外の人から言われないと気づかないですね。

こないだは、恋人と一緒にハンバーグにかけるソースを作っていたのですが、
お肉を焼いた後の肉汁に、普通は
ソースとケチャップのみで味を整えるそうで。
「砂糖入れんなよ?」と私を脅してくる彼奴。
これはもうフリだと思い(ガチ)
こっそりフライパンの中のソースに砂糖をかけました。
結果私は満足する味に。
彼はどうだったでしょうか。怖くて聞けません。

自炊をするようになってから、料理の本などを読んで挑戦するメニューも増えましたが
レシピに書いてなくても砂糖を入れてしまう時もあります。
たいてい美味しく出来上がります。

今でこそ台所に立つことに抵抗が無くなってきていますが、
一人暮らしを始めて5年が経つまで、私はほとんど料理をしてませんでした。

うちでは、台所は母のテリトリーでした。
私は料理の手伝いなどほとんどしたことがなく、また母も私には料理はさせませんでした。

小学生の頃、一度だけ「料理お手伝いする」と母に申し出たことがあります。
その時の母の答えは「危ないからダメ」。

その日以来、私は母に手伝いをさせてくれと言ったことはありません。
何となく、この人は私に料理をさせてくれないのだなと
子どもながらに思ったのでした。
今思えば、中学生ぐらいになってから
1回ぐらい申し出ればよかったなと思います。

半年ほど前帰省した際に、母と料理の話になりました。
私が
「お母さん仕事しながらちゃんと料理作って、家事もやって、すごいなーって思ったんだよ。私ももうちょっと手伝いすれば良かったね。ご飯作ったりさ」
と言うと、母(中学校教諭)は
「中学生とかの年代で料理してる子って、お母さんの見る限りだと、片親の子とかが多いと思う。もちろんそうじゃない子もいるけどね。でもお母さんは、あなたとお兄ちゃんが食べてくれれば良かったの。ちゃんと食べて成長してくれれば」
と返しました。

母は私と兄を、あの甘い醤油と砂糖で育ててきたのかなーと思います。
母にとっては、いつまでも私たちは子どもなのでしょうか。
味にそれが表れている気がします。

小さい頃から慣れ親しんできた味が、
いつの間にか私の味覚を作り上げてきたんだなと感じる今日この頃です。

今日も砂糖をドバドバと。

(↑先日母が送ってきた醤油。多いっちゅーねん)


(このnoteは考えをまとめる為の文字起こしです)

#エッセイ #日記 #思うこと #醤油


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